第4話:錬金術師ギルド

「これでよしっと」


 草むらの中で、誰にも見られていないのを確認してレッツら錬成。

 ハーフパンツは裾にボリュームを付けてかぼちゃパンツみたいに。

 白いシャツは胸元を涼しくしてみました~!


 ふ……谷間なんてありませんよぉーだ!

 あぁ、少しぐらい弄ってもよかったかなぁ。ちょっぴり後悔。


 鞭は革製だったので、その革を薄っぺらく伸ばしたのをイメージしたら、結構長くなっちゃった。

 元々3メートルぐらいだったのが、5メートルぐらいに。

 でもこの長さで丁度いいんだよね。中学校のときは5メートルのリボン使ってたから。


 他にアイテムボックスの中に入っているのは──初心者用ポーションが二十本かぁ。

 大事に使わなきゃね。


 さて、これでやっと町に入れるね!


 改めて見ると、この壁凄いなぁ。

 

「ほえぇ、高ぁーい」


 小さなハーフリングだから、余計に高く見えちゃう。

 でも5メートルぐらいはあるよね!


 壁沿いに歩いていると、たくさんの人が出入りしている門を発見。

 その流れに混ざって、いざ町の中へ。


「ふわぁ……ファンタジーだぁ」


 アニメで見たことあるような、そんな景色が広がっていた。

 ビルなんて一つもない。当たり前だよね。

 そんなに高い建物はないんだなぁ──なんてよそ見をしながら歩いていると、


「きゃっ」

「ふぇっ」


 どんって人にぶつかっちゃって、慌てて「ごめんなさいっ」って謝ると、


それがしこそ申し訳ござらぬ。ログインしたばかりで、よそ見ばかりしていたでござるよ」

「ござる?」


 わたしと同じように尻もちをついているのは、黒い髪から同じく黒い猫耳がぴょこんと出ている女の子。

 獣人さんかなぁ。


「そ、某、忍者になりたくって」

「ほえぇ。え、でも忍者って職業にあったかなぁ?」

「シーフの上位職で出るという噂はあるのでござる。だから──あ、某、シーフギルドに行く用事があるので、これにて御免っ」


 タタタっと軽快な足取りで駆けて行ったござるさん。

 上位職かぁ。

 ……なんのことだろう?


 そういえば彼女、シーフギルドとか言ってたなぁ。

 私も錬金術師ギルドに行ってみようっと。






「はぁ、はぁ……こ、ここが錬金術師ギルドですね」


 案内板でもあればいいんだけど、それも無くって迷いまくっちゃったじゃないかぁ。

 挫けそうになったけど、プレイヤーの人に聞いたらマップの出し方教えてくれてなんとかここまで来れた。

 というかマップの存在もすっかり忘れてたよぉ。


 商業施設が集まっている通りだって聞いたけど……あっちとかそっちには人がいるのに、この──錬金術師ギルドの建物周辺だけ人がいない。

 と、とにかく入ろう。

 スキルの情報とか聞けるかもしれないし。

 お金で買えるスキルは情報サイトに載ってたから知ってるけど、それ以外のスキルのことは何も書かれてなかったの。


 自分で探して見つけるスキル制。

 珍しいスキルを見つけたら、誰にも教えないほうがいいってどこかに書いてあった。

 教えななければ自分だけの特別なスキルになるんだもんね。


 わたしも頑張ってスキル探しするぞーっ。


 扉を押して中に入ると、そこはなんとなーく薄暗い室内で。

 そして……誰もいない……。


「す、すみませーん。誰かいませんかー?」


 かー……かーっと、わたしの声が木霊する。

 するとカウンターの奥からバタバタと音がして、


「ようこそお出でくださいました。私は錬金術師ギルドの職員のメミーと申しまあぁぁーっ」


 どんがらがっしゃーんと、足元に何かあったようで盛大にこけた。

 だ、大丈夫かなぁ。


「イタタタタ。も、申し訳ありません。それで、あなたは錬金術師でしょうか?」

「あ、はい。わたし、今日始めたばかりなんです」


 カウンターに座ったケミーさんが、わたしにも座るよう促す。

 向き合うようにして座ると、ケミーさんが嬉しそうに笑った。


「なるほど。今日、錬金術師になられたのですね」

「えっと、今日からこのゲームを──「今日、錬金術師になられたのですね」


 うっ。ケミーさん、なんだか怖い。

 有無を言わさない雰囲気だ。


 あ、そうか。

 ケミーさんってNPCなんだ!

 ここはゲームの中だけど、NPCにとっては自分たちが住んでいる世界なんだわ。


「はいっ。今日就職しました!」

「おめでとうございます。それで、何か尋ねたいことでもございますか?」

「はい。スキルのことを知りたいのですが……。錬成以外のスキルについて」

「なるほど。お任せください!」


 ケミーさんが眼鏡をくいっと上げて、そしてレンズをキラリーンって光らせた。






「販売スキルはご存じなのですか……そうですか……」

「そ、そんな悲しそうな顔しないでっ。き、聞きます。売ってるスキルの話もお願いしますっ」

「お任せください!」


 あ、立ち直り早かった。


 ギルドで売っているスキルは四つ。そのうち二つは錬金術師でなくても買えるスキルなの。

『アイテム鑑定』は、情報を見ることが出来るだけでなく、生産出来るものなら必要な素材だって分かっちゃうんだから。

 お店屋さんを出すなら、このすきるも必要よね。


『採取』は、ポーションの材料になる薬草を見分けて摘むためのスキル。

 これも大事。


 どっちも1万ENなりー。

 ゲーム内の通貨単位がEN《エン》なのは、馴染みのある読み方で嬉しい。


「錬金術師と言えば『錬成』ですね!」

「それ持ってます」

「……錬金術師と言えば『研究』ですね!」

「錬成の成功率と、DEXとINTを上げてくれるんですよね?」

「……事前勉強ができていらっしゃるようで、説明のし甲斐がございません」

「ほえぇっ。ご、ごめんなさいっ。黙って聞きますっ。あ、DEXは分かるのですが、INTが上がるのはどうしてですか?」


 そう尋ねると、ケミーさんの眼鏡が光った。


「ふっふっふ。よく聞いてくださいました! 錬成を成功させるのはDEXが関係してまいります。しかし出来上がった物の性能は、INTが関係してくるのです」

「性能、ですか?」

「ポーションで例えると分かりやすいですね。通常、錬金術師が錬成するポーションは、薬師が製薬によって作るポーションと比べて、回復量は劣ってしまうのですよね」

「ほうほう……え?」

「しかし研究スキルとINTの数値によって、回復量を上げることが出来るのです!! まぁ薬師にも効果を向上させるスキルがあるんですけどねー」


 ポーションって……他の職業でも作れるのおぉぉ!?




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