序章 2

 蜜のような甘さの中に微かな生臭さが潜む、どこかで嗅いだ香りが嗅覚を刺激して、私は目を覚ます。羽毛が宙を舞うような軽さで開いた瞼、その下の開ききった瞳孔に過剰な光が入り、明るさに目が眩む。

 電気つけっぱなしで寝ちゃったんだっけ?

 考えたそばから、何かがおかしいことを理解する。いつの間にか足が正座し、上半身は腰から折り畳まれて接地した手の先に頭を載せるようにして額づいていた。時代劇等でよく見かける上様への拝跪のような姿勢。そのポーズのまま身体がガチガチに固まり動くことができない。

 額づいているのに、眩しい。額づいているのに眩しい?

 それは私が見せている光です。あなたは性格の多少スれたところがあるので、超自然的な力を行使することで現状を受け入れさせることにしました。

 鼓膜を経由せず頭蓋に直接声が反響している。女性の、落ち着いた声だった。キャラで言うならクール系か。

 頭を上げなさい。

 声と共に目の奥の過剰な光は失われ、視界が像を結ぶ。緋毛氈のカーペットに頭の影が落ちている。何だこれは。と思うと同時に硬直していた身体に自由が戻り、私は状況を確認すべく上体を上げた。

 まっすぐ伸びた幅二メートルほどのカーペットは、奥へと進んだ先の三段の段差に、皺を寄せることなくラミネート加工のようにぴたりと貼りつき、段上、再び平らになった床に、道を指し示すように敷かれている。床は白の大理石、正面の壁も同じ素材で出来ており、壁には等間隔にステンドグラスが並んで外光を取り込んでいる。ステンドグラスにはジーザスでなく巨大な白い百合のモチーフがかたどられ、濃紺のガラスの中に嘘のような白さで浮かび上がっていた。

 段上、白い大理石の床を断ち切るような緋毛氈のカーペットの中途に、金属の百合のモチーフで縁を装飾された玉座があった。そこに女性の外観をシルエットにした濃い影が座っている。玉座の両脇にはシンプルな白いワンピースを着た、よく似た顔の目の覚めるような美女が二人、無表情で立っていた。向かって左が右側頭部にサイドテールを結い、右が左側頭部にサイドテールを結っている。

「花咲百合子!」と向かって左に立つ女性が叫んだ。険のあるその声はもはや叱声と同じだった。

「あ、はい」覚醒仕立てとはいえ我ながら間の抜けた受け答えだった。

「貴様はつい先程、人間界において死を迎えた!」

 何言ってんだこいつ。と思った。

「言ってる意味が分からないという顔だな。ふん。知能がゾウリムシ以下の貴様にも分かるように教えてやろう。貴様は二月十六日午後十一時に就寝後、日を跨いで二月十七日午前一時四十四分、突然の心臓発作により死亡した」

「……夢、ではない?」頬をつねると確かな痛覚があった。でも、痛みを感じる夢だって有り得る、と思考した瞬間また眼球に光が溢れて思わず瞼を閉じる、閉じたのにもかかわらず目は眩しさに眩み、その苦しみに呻きながら手で瞼を覆うが視神経は白熱電球に焼かれるように強力な光を入力し続ける。

 パニックに陥る寸前で光は電気をオフにしたように突如消え去り、すぐに緋毛氈のカーペットと大理石の白、玉座に座る女性の形の影とその両脇に立つ美女が視界に戻る。超自然的な力でどうたらと先程頭蓋に反響した声が言っていた。相手は光を操れるということなのか。例えば、私の理解が筋道から逸れそうになった時に、軌道修正する方法として。

「現状を否認しようと試みても無駄だ」向かって右に立つ女性が言う。左の女と全く同じ声で、恫喝するような厳めしい口調だ。「先程述べた通り貴様は既に死んでいる。これは夢ではない。現実だ」

 何を言っているのかまるで意味が分からない。彼女らが言う言葉におそらく嘘はない、けれど、理解が絶望的に追い付かない。死んだら無に帰るか、閻魔様が生前の罪状を並べ立てて地獄の何番地に向かうか決める、といった漠然と世間で共有されている死後の世界のイメージは私の中にもあったが、いや、そういう固定化されたあの世像がある分、今現在ファンタジーの王宮のような場所で白ワンピースの美女二人に軍隊調の説教を受けているこの状態が如何なる状況なのか理解できない。でも、私が死んだのであれば、そして世の中が皆の想像通り運営されているとするならば……

「とすると、ここは死後の世界、ということでいいんですか」

 左右の女性が鼻をふんと鳴らし、左が喋る。「半分正解だが、半分は不正解だ」

「と、言いますと?」集中したいのに、漂い続けているかぐわしいながらどこかえぐみのある匂いに気が行って集中できない。確かに嗅いだことのある匂いなのだが何かが思い出せない。

「……貴様は」右が口を開く。「自分が死んだと聞いて、何も思わないのか?」

「それは……まだ実感が湧かないので、何とも言えないと言いますか、その、死んだら何がどうなるんですか?」

「それはこれから話す」左が言う。

「貴様は人間界を離れてしまった」と右が言う。「今までの暮らしにはもう戻れない。家族には会えない、会社にも通えない、サーロインステーキをミディアムレアで焼いて頬張るという至福にもありつけない。貴様が思い描いていた未来は断たれてしまった」

 左が問う。「それを知って、貴様は憤りを感じるか?」

 訳が分からないまま、設問について考える。どうだろう。最低な家族ではなかったが最高な家族でもなかったし、お見合い問題でごちゃごちゃ言われるのは業腹で放っておいて欲しい気はあったが交流を断絶してしまうほどの絶望的な相互不理解でもなかったし、つまり家族関係はいたって普通で、会えないのは寂しくて悲しいがどうしても手放したくないと執着するほどでもない。もしこれから死ぬのだとなれば執着するかもしれないが、と考え、今まさに死んだのか、と思い至るもどうしてももう一度会いたいみたいな切実さは湧いてこない。

 会社員生活、辛いことも多かったが、仕事の達成感はあった、それなりにあった、だが結局はそれなりの範疇を出ず、仕事における執着はないと気づく。私が急死したがために穴埋めで動かなければならない同僚にはやや気の毒な思いだったが、彼ら彼女らはやってのけるだろうし、さほど偉くもない一社員の喪失がその会社の存亡を左右することもないだろう。そう考えると、別段今終わってしまってもいい生活だったとも思う。

 じゃあサーロインステーキをミディアムレアで焼いて頬張るという至福への執着は。そもそもそこまでサーロインステーキが好きなわけでもないし、強いて言うならウェルダン寄りが好みだ。つまり、それは執着足り得ない。

「悲しい話だけど、今終わっても別にいいかなあ、という気はする、かなあ。いきなりの死を悲憤するほど自分に価値があるようには思えない、と言いますか」

「貴様一人が死んだところで世の中何も変わらない、といったところか?」右が少し意地悪く口元を歪める。

 まあ凡そそんな感じか。思案顔ながら頷いて見せる。

「なるほど。それが貴様の、それなりの生活、の帰結か」不服なのか左が眼光鋭く睨みつけてくる。「虚しいものだな」

 虚しい、と言われて、ぼんやりと回答していた私に、初めて怒りが、沸騰の予兆としての細かい泡のように意識の表面に上る。

「それは……派手さのない地味な、言ってしまえばそれなりの人生だったけど、私にだって!」

 だって何なのか。続く言葉が思いつかず、怒りの突沸は瞬間的で終わりコンロの火を落としたかのように勢いを失う。身が僅かに縮んだ心持ちで、前のめりになっていた上半身を正座の上に落ち着ける。この間に漂う甘い匂いが鼻腔に纏わりつく、まるで何かを訴えるように。

 悔いは、ないのですか。

 また頭蓋に直接音声が響いた。寄り添うでもなく突き放すでもなく、淡々とした問いだった。左でもなく右でもなく、となると、玉座の女性型の影が発しているとみて間違いないのか。それにしても匂いが、と、鼻を二度啜ったその瞬間に、通電した電球のように匂いの正体がぱっと閃く。

 百合だ。

 この強烈な甘さの中の少しの生臭さは、百合の花の香りだ。

「百合……」

 言葉にした瞬間、スイッチが押され線路が切り替わったように、だって、の続きが出てくる。言葉が出てくる。

「悔いなのか分からないけど、私、できるなら、マグダラ先生の新刊を読んでから死にたかった。マグダラ先生は私が高校生の頃から第一線で活躍してて、尊い百合を何冊も描いてきた漫画家さんなんです。昨今、制作のペースは落ちてきて一部の品のない奴らにマグダラは枯れたとか揶揄されてるけど、でもマグダラ先生は枯れてなんかいなくて、逆に百合の純度は高まってるというか、極まって来てて、物凄く感情を揺さぶられるんです。そのマグダラ先生の新刊が満を持して四月に発売する予定だったのに! 私は死んでしまって!」感情が激して抑制できない。「読みたかった! 絶対読みたかったのに! マグダラ先生の描く百合の繊細さと革新性について善子と語りたかったのに! 善子の結婚式に出席しなきゃいけなかったのに! 違う! 私は戦友の結婚式よりも百合が読みたくて! 良い百合を見たくて! これからも浴びるように百合を摂取したかった! なのに! なのに私は……」

 中途から嗚咽号泣になっていた。明白に悔いだった。未練だった。当たり前に続くと思っていた人生。鉄人と呼ばれる野球選手が日々更新していく連続出場試合数のように、私も毎日を欠けることなく生き、時代時代の百合を甘露のごとく味わい、好みの百合を反芻し、時に百合の新風に戸惑いながらもこれを受け入れ、誰にも肯定されずとも自らを幸福だと言い切れる百合ライフを送るはずだったのだ。なのに。なのに私は。死んでしまったのだ。これ以上新しい百合を摂取することはない。未来は断たれたのだから。

 唇がわななき、喉仏は痙攣したように上下し、丸まった背中は正しさを失って大きく震えていた。元栓が劣化した蛇口のように、目から涙がとめどなく零れ落ちた。分かりやすく絶望だった。

 百合の花の香りがする。葬式に用いられる花。ここは私の人生の終焉を告げる、そして百合との永遠の離別を告げる、皮肉のこもった葬式場だったのだ。なんて、残酷な。

 いいえ。違います。

 頭蓋に声が聞こえる。「何も違わない!」と私は叫んだ。「だって私、死んだんでしょ! 人生と百合との永訣以外の何ものでもないじゃない!」当たり散らすような叫びだった。

 そのための、私です。

「意味分かんないぃ!」

「泣くな! 聞け! 未熟なる百合信徒よ!」左が怒声する。

「ひいぃぃん」私は泣き声で返事した。

「肉体を離れた貴様の魂は、本来であれば無に帰するか、天国なり地獄なり、その他諸々のあの世へ向かうはずだった。だが!」

「だが!」と右が引き継ぐ。「我らが主、百合神様は、哀れな貴様の魂に目を付けられた。貴様は消滅すべきでも他の死後の世界へ行くべきでもない、と考えられた百合神様は、喜べ、貴様を百合神様の統べる世界へと迎え入れられることを決心された!」

 鼻を啜りながら私は聞いた。よく分からん、と思った。

「ふん。つるつるとした皺のない愚鈍な脳味噌がまだ焦点を結ばんらしいな」左が吐き捨てる。「本来ならば畜生道にでも堕するべき貴様の矮小な魂を、百合神様が救ってくださると言っているのだ」

「貴様の人生はそれなりの、言ってみれば猫の足跡のように取るに足らない人生だ。しかし、だ」右がやや芝居がかった調子で勿体をつける。「今さっき貴様が吐露したように、貴様の百合に対する熱情は真摯なものがある。また生前、貴様は百合を愛し、熱心に信仰し、布教し、その上、百合の危機には敢然と立ち向かった!」

 百合の危機? 何の話か分からない。私の百合愛の深さは言われるまでもないけれど、と思い啜った鼻にはやはり百合の香が。気分が落ち着いてくる。

 貴女は、百合本を実母に捨てられそうになった時、衝突を厭わずこれを守り通しましたね?

「ええ、まあ」女性型の影に向けて答える。「だって、捨てられたらムカつくじゃないですか」

「貴様! その言葉遣いは何だ! 百合神様に対して無礼であるぞ!」左右が同時に怒鳴る。が、私同様脳内電波を送られたのだろう、しかし、と言い淀みながらも追及を控える。

 その姿は感動的でした。

「あ、はあ」と答えると左右が睨むので慌てて語尾に「ありがたき幸せでございます」と付け加えたがふざけていると思われたのか左右の眼光が余計にきつくなった。

 そんな推定臣下の威嚇を気に掛けず、百合神様と思しき影は少しの情感を持って脳内に語りかけてくる。

 蜘蛛の糸、という話があるでしょう。

「はい、知ってます。知っています。芥川龍之介で読みました。蜘蛛を助けたら恩返しをしてくれたんだけど結局失敗するやつ、話ですね」

 それと同じです。百合を守った貴女へ、これは百合の恩返しです。

「と、言いますと?」

 先程彼女らが述べた通りです。これから貴女を他の死後の世界でなく私が統べる世界へ転生させます。貴女はそこで暮らすのです。ここは貴女の葬式場ではなく、貴女の魂を救うための百合神殿なのです。あの世とこの世の境界です。

 百合神殿。百合神様には悪いがなんて珍妙な名前だろう、鼻で笑うのを我慢する必要があった。そもそも百合神様を名乗る影は本物の百合神様なのだろうか、というか、そもそも百合神様って存在するのだろうか。疑念が高山の頂に纏わりつく雲のようにもくもくと湧いて嵩を増す。

 その思いに対する返答のように、溢れる光が目に蘇りかけ、眩しさに私が慌てると同時にすぐに光量が萎む。こうなれば理解もへったくれもない、間違いなく相手は神だ、超自然的力を操れる神だ、となると、偽装する必要もないのだから臣下の語る通り百合神様で間違いない。

 ようやく私の心に畏怖が芽生えた。百合の神様と面会しているのか。何と畏れ多い。それが最も礼儀正しいポーズと考えて大名に跪く農民のように正座で背を丸め、額づくほどに額を床に寄せ、重力を吸収するようなカーペットの柔らかさを感じながら勃然と気づく。目覚めた時と同じ姿勢だ。これが百合神様の見えざる威光なのだ。

 畏まる私に、陽だまりのように柔らかな声が届く。

 私の用意した蜘蛛の糸を、活かせるか否かは貴女次第です。物語のように再び奈落に落ちてしまう可能性もあるでしょう。しかし、貴女はこの機会をきっと活かしてくれると信じています。私は貴女に感じているのです。確かなる百合の波動を。

「あの」恐縮しつつ言葉を挟む。「機会を活かす、とはどういうことなのでしょう? 活かす、とは? その、百合神様の御力で転生した先でも、何かしらの試しに遭うのでしょうか?」

 暫しの沈黙があった。何か頓珍漢なことを口走ったのか、と焦り、冷や汗と共に百合神様を見たが影なのだから表情は窺い知れない、両脇を固める白ワンピたちは相変わらず険しい顔つきだ。

 何か弁解せねば、と焦るうちにまた声が頭蓋に響く。

 ネタバレされた百合漫画をどう思いますか。

 出し抜けの問いに困惑する。「えっと、大事なのはエモさだと思うので、如何に感情を揺さぶられるかだと思うので、真の百合好きには問題ないです。ただ、分かり切った正解に突き進む分、予定調和のカタルシスはあれど新鮮味は失われます」

 そう。ネタバレしてしまえば、物語られる物語が物語り済みの状態で物語られることとなり、物語の可能性という空想は失われ確定的な物語という結果しか立ち現れない。つまりネタバレされた物語は、物語の展開でなく情報の再読に終わります。

 東大教授の言語遊戯のように高度過ぎてまるで意味不明だった。分かるようで全く分からない。そんな私の戸惑いを察するように、否、全てを事前に承知していたように、百合神様が語る。

 私の言うことの全てを理解する必要はありません。物事は非常にシンプルです。貴女は転生した世界で思うままに生きればよいのです。未知の世界に唐突に放り込まれる不安を今の貴女は感じていますが、大丈夫です、生きながらにして眼球を抜かれるような世界ではありませんし、今日の食料に困るような苛烈な世界でもありません。何も心配はいりません。

 こほん、と会話の流れを変える咳払いを一つ。

 貴女の世界に対する向き合い方を歪めたくないので、世界観説明等、予備情報は敢えて語りません。ネタバレは一切しません。ですが、安心してください、貴女は私の統べる世界の理を自然と身に着けることでしょう。貴女が心掛けるべきことは、まっさらな気持ちで第二の生を謳歌することのみです。

 貴女に幸運のあらんことを。と声が告げ、左右が目配せして小さく頷く。

「そろそろ時間だ。百合神様が御力を行使されて貴様は転生する」左が言う。

「最後に、何か質問はあるか?」右が愛想のない、険のある目つきでこちらを見ている。

 質問。何を聞くべきか。話からして転生先に関する情報を与えるつもりはないのだろう、理屈は半分も理解できていないがネタバレはよくない、感じたまま動けとの命令だ。では、最後に何を聞くべきか。

 意地悪な気持ちがなかったわけではない。

「そうですね。私の今後には全く意味のない、しかし、私の本質には大いに意味のある質問を一つ、構いませんか?」

 左右がよく分からんといった様子で目を細め眉間に小皺を寄せる。「何だ、言ってみろ」

「その、白いワンピースをお召しのお二方方は、もしや双子でいらっしゃいますか」

「そうだ」左が答える。「だったら何なのだ」と右が詰問する。

 きつい口調への、ちょっとした反抗心もあった。

「もしかして、ですけど」私は訊いた。「お二人は、双子百合なのですか」

 瞬間、磁石のS極とS極を近づけたように右と左が勢いよく顔を背けた。口元が歪み、目元を僅かに伏せている。要するにデレ顔、つまりはイエスだった。

「さすが百合神殿……ジャスティス……」

 私は呻いた。顔を一度手で覆って、すぐにその手を除けて二人を凝視する。

「見た目一緒の双子、でも二人の間には上下関係があって、そう、左が優位の右が受け、左が軍隊口調でドSっぷりを発揮して、右はやはり軍隊調で怒鳴り返すんだけど実は暗い欲情を感じていて、攻められるのを悦んでるんだわ! でも、いけないわ、双子なのだもの、これじゃ近親相姦だわ! という負い目を右は常に感じているけれど心は素直、正直なもの、左に怒鳴られるたびきゅんきゅん来て、でも表面上は平気なふりして素知らぬ顔で威厳ある口調で喋っているのだけれどでも直接触れられるとトロ顔になってしまって、左『貴様、まさか惰弱なことを考えているのではないだろうな』、右『まさか』と強がるももっと触ってくれないのと目で訴えてしまって、左はそこを察していて敢えてつれない態度を取りでも胸はきゅんきゅんしていて――」

「貴様! 黙らぬか!」

 と左右が恥辱に顔を赤らめて怒声した瞬間暗幕が降りるように私の視界から光が消え世界は暗転し同時に私の意識も糸を切るように途切れた。

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