第23話「そ……そうだよね。は、早く……」

「そんで……結局どうするんだ」


 ちょっとした氷河期ひょうがきを乗り越えた俺たちは、再び案内板をながめていた。


紫陽花あじさいさんが言っていた、平良たいらくんと順番に買い物をするのでいいと思うわ」


「私もそれでいいよ」


「皆さんがいいなら私もいいですよ。尋斗ひろとさんは大丈夫ですか?」


「うん、大丈夫だよ」


 ということで、咲良さくら友李ゆり結愛ゆあによるリレー形式のデートが始まることになった。


「日も落ちてきたし、今日は一人50分でどお? 練習だと思えばちょうどいい気がするけど」


「おい咲良、ちょっと待て。2回目もあるような言い方してるのは気のせいか?」


「え、なになに、ヒロくんは2回目のデートもしたいの? 仕方ないなぁ、じゃあ今日のは練習デートね!」


 おい、なにお前ら連携攻撃れんけいこうげき仕掛けてきてんだよ? 


「もう何でもいいから早く始めようぜ。積みテキストが家で待ってる」


 呆れた俺は早く始めるよううながした。……それにしても、やっていない宿題のことを、積みゲー風に言うとちょっとカッコよくなるんだな。


「それじゃあ、私から行くね」


 そう名乗り出たのは友李だった。そして、彼女は俺の近くに寄って手を繋いできた。


「留学中にみがいた私の女子力、存分に思い知りながら最後を迎えればいいわ!」


「なんで最終的に俺が死んじゃうの? デートと書いてデスゲームと読むの?」


「ごちゃごちゃうるさい! 早く行こ!」


 友李は残った二人に手を振って走り出した。さて、俺はこのドS女の試練に耐えることができるのだろうか。


***


「まずはここから」


「ルームオブデッド……このモールにこんなとこあったか?」


 友李に連れられてきたのは、モールの特設会場にある、かなり大きめなお化け屋敷だった。


「期間限定で開いてるんだって。ネットでも怖いって評判なの」


 なんか見た目が怖いと言うよりグロいんだけど……。血塗ちまみれの女が吊るしてあるし、眼球が何個も串刺しにされてるし……これ大丈夫だよな?


「とっとと終わらせようぜ。ほら」


 俺はそう言いながら友李の方を見た。


「そ……そうだよね。は、早く……」


「お前、怖いの苦手?」


「そ、そんなわけないじゃん! ヒロくん馬鹿なんじゃないの?! 死んだら?!」


 なるほど。怖いのはお化け屋敷じゃなくて、圧倒的に現役JKの方だったと。


 そんなことはどうでもいいんだった。こいつ怖いの大丈夫なのか?


「無理しなくてもいいんだぞ?」


「は、はぁ? こんなの怖くもなんともないし! はい、行くよ」


 威勢いせいよくそう言った友李は、おぼつかない足取りで入り口に向かった。


「ヒロくん怖がりだから、手繋いでてあげるよ。離したらだめだよ、絶対……絶対ね!」


「わかったわかった」


 俺が手を差し出すと、友李はすぐにその手を取った。そしてさっきとは違い、指と指を絡ませてきた。


 これは……我がクラスの男子に伝わる都市伝説の一つ……恋人繋ぎ!!


 実在したんだな……そりゃ物理的に可能だから実在して当然か。


 というか、それじゃあ都市伝説じゃなくて、クラス単位での言い伝えなんだから、教室伝説にならないか? なんかショボい。


「あの、この手は?」


「別にいいでしょ……手を繋いでることには変わりないんだし」


 友李は真っ赤な顔で答えた。さてはお主、照れ屋さんだな?


「そんじゃ入るぞ」


「うん」


 ということで、ドS(照れ状態)との、お化け屋敷デート……スタート!

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