第26話

 確かに男は若かった。

 女なら誰でもいいのだろう。男は硬くなったそこを自在に動かせるのが得意なようで、何度もくいっくいっと動かしては幸子に見せる。

「もう、いいから」

 幸子は苦笑して、それをぐいっと手加減を加えながら抑える。

「あーっ、たまんねー」

 男は幸子に覆いかぶさる。いつもの幸子ならそのままされるがままだった。

 でも、今夜はそうじゃない。

 幸子は男を押し返し、体を反転させ、男の上に位置した。

 男を見下ろす。男はおもしろそうに笑っていた。

 こいつは私を馬鹿にしている。金で男を買う愚かでスケベな女だと思っている。

 若い男の気持ちがわかる。それは幸子が男たちに抱かれながら考えていたことと同じはずだ。

「なに? どうしたの?」

 幸子が動きを止めたことに男が気付く。

「ううん、かわいいなと思って」

 男が顔を持ちあげ、幸子にキスしようとする。

 幸子はその男の動きをゆっくりと制した。

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