第24話

 男を買える店がある。そんな噂は同じ店で働く女から聞いたことがあった。

 化粧台の前で女は笑いながら言った。

「ねえ、麗子ちゃんも行かない? 若い男のあそこって最高よ」

 そういって女は持っている化粧ポーチを立ててみせ、くいっくいっと動かした。

 幸子は苦笑いでその誘いを流したが、まさか一人で利用しようとは。

 薄暗い階段を降りていく。湿った臭いが鼻をついた。

 階段は急で細く、一歩下がるごとにどんどん暗くなる。闇に通じているようだった。

 幸子は自分が際限なく堕ちている最中のような気がして怖くなる。

 何をいまさら。

 幸子は階段の先の古びた店のドアをゆっくりと押した。

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