第21話

 二十代が幸子の絶頂期だったかもしれない。

 幸子には驚くほどに「太い客」が次々についた。

 これまで須藤やディレクターたちに搾取された分を取り戻すかのように、幸子は金を稼いだ。

 隅田川沿いの広く清潔な高級マンションに住み、タクシーで自宅と店を往復した。

 職場近くの百貨店で服や着物、宝石を買い漁った。

 どんなにお金が入ってきても幸子の手元には何も残らなかった。

 それが銀座の女を演じることだと、どこかで思っていたせいもあった。

 止める者もなかった。

 幸子は狂ったように金を使った。その様子は何かに復讐しているようだった。

 幸子は自分を自由にした男たちに復讐していたのかもしれない。

 あの頃には到底手に入れることのできなかった宝飾品に身を包み、武装することで。

 浪費と饗宴。

 三つの店を渡り歩きながら、幸子の二十代はあっという間に過ぎていく。

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