第14話

 それが自分の運命と比例しているようで、幸子は当時より悲しく暗い気持ちになる。

 あの頃はまだ若さがあったし。

 若さは未来だ。それがこの男に、どれだけ無駄に消費されたことだろう。

 幸子は恨みをこめて、須藤の上にのる。

 二三度大きく揺れると、須藤はあっさりうめき声をあげ、果てた。

 勝ったと思った。なんともあっけない。

 幸子はにやりと須藤に笑ってやる。須藤も同じような笑いを返してきた。共犯の笑み。

 馬鹿な男だ。そういう意味ではない。 

 幸子は跳ねるように須藤から身を放し、力をなくしさらに粗末になった須藤のモノを抜いた。

 シャワーも浴びずに服を着て外へ出る。

 その間、幸子は一度も須藤を振り返らなかった。

 幸子が部屋のドアを閉めるとき、須藤がライターをカチっと閉じる音が、かすかに聞こえた。

 家に帰り、須藤の事務所を辞めたことを母に報告した。

 母の由紀子は何も言わなかった。幸子の目さえ、見なかった。

 由紀子もいつまでも成功しない幸子にすっかり関心をなくしていた。

 家を出て、安いアパートを借りた。

 須藤と出会って七年ほどが経ち、幸子は十九歳になっていた。

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