和音も不協和音も、今ここにしかない音を鳴らして、アオハルは駆け抜ける

高校の吹奏楽部のお話です。
楽器の経験度、コンクールへの意気込み、部内の人間関係など、多くの部員で一つのものを作り上げる吹奏楽部ならではのドラマが、豊かな筆致でリアリティたっぷりに綴られています。

中でも、演奏シーンの描写は圧巻。
一人一人の想いと音色。
文字を目で追っているだけなのに、音楽の彩りが脳内で鮮やかに広がります。

中学時代はコンクールで負けても「悔しい」と思えなかった主人公が、高校の吹奏楽部で多くの仲間と出会い、少しずつ変わっていく。
丁寧に描き出される心理や空気感は、彼ら彼女らの息遣いさえ感じられて、本当に素晴らしいです。

1年生を終えて、これからどんな音楽が聴けるのか、とても楽しみです。
吹奏楽経験者はもちろん、縁のなかったという人にもおすすめしたい一作です。

その他のおすすめレビュー

陽澄すずめさんの他のおすすめレビュー2,183