幼馴染の恋人が寝取られたけど美しい剣術に恋をしたので大丈夫です

サボテンの花

第1話 美しい剣術に恋をして

「「お疲れ様!」」


ボクは名前はノア。十六歳だ。訳あって顔をヘルムで隠している。冒険者で剣士をしている。

そして、ボクの隣にいるのが幼馴染で彼女のライカだ。彼女は白い肌で空色の髪で可愛らしい顔をしている。胸は普通?ぐらいだ。同い年で昔からよく一緒に遊んでいた。そのまま一緒に冒険者になり、今日まで一緒に生活している。彼女は魔法使いで、赤魔法・・・、火や炎系を使う。顔を隠しているボクの理解者でもある。

ボクと彼女はDランク冒険者だ。

冒険者はFランクから始まり最高がSランクだ。自分のランク以上の依頼はパーティーでしか受けられない。

そしてこの世界にはスキルや祝福の儀のようなものはない。自分達で、剣術を極めたり、魔法を放ったり、戦い方を工夫して強くなるしかない。勇者や賢者と呼ばれる人達は、努力で強くなった人達の称号だ。ボクもいつかそうなりたい。

魔法の属性は色で決まる。無色、これは身体強化だ。赤色、これは火又は炎と呼ばれている。青色は水や氷。黄色は雷。緑色は風。茶色は土。白色は光。紫色は闇。基本はこのぐらいだが、例外もある。


「おう、ノア、ライカちゃんもうクエスト終わったのかい?」


今、話しかけてきたのはBランク冒険者のオッズさんだ。ボクはこの人が嫌いだ。ライカとの距離が近い。


「はい!今回のクエストは簡単でしたので!」


ライカは元気に言う。今の時刻は午後三時だ。ギルドを出る前に確認した。


「ボクとライカはこれから家に帰るところです」


「そうか、お疲れさん」


ボク達の家はノイシュバン王国王都コーラスにある小さな家だ。冒険者ギルドから歩いて二十分とちょうど良い。少しボロいが二人で住むには家賃は安いし、意外と住み心地が良い。


「「ただいま」」


ボクとライカは自宅に帰ってきた。


「ノア、今日のクエストあれでDランクなんてラッキーだったね!」


「うん!ゴブリンの数が多かったけど報酬は良かった!」


この世界の通貨は、銅貨一枚十円、大銅貨一枚百円、銀貨一枚千円、大銀貨、金貨、大金貨、白金貨があり、格が上がるごとにゼロが一つずつ増えていく。


「あっ!そうだった!ボクこの後ギルドの練習場で三時間ぐらい指導してもらうんだった!」


「誰にしてもらうの?」


「Bランクのロライドさん!じゃあ行ってくるね!」


「いってらっしゃい!」


ボクはライカにそう告げ、ギルドに走って向かった。





数分後・・・、ギルドにて。


「ロライドさん!指導してください!」


「やっと来たね。それじゃあ練習場に行こうか!」


練習場のにやってきたボクとロライドさん。


「まずは好きな風にやってみな」


「はい!」


ロライドさんは、来いよ。と、手で合図する。ボクはロライドさんに向かって距離を詰める。木剣を横、縦、横、突きと繰り出すが・・・、簡単に受け流される。


「力を入れすぎだ!隙ができてるぞ!」


そう言い、ボクの腹にロライドさんの木剣が当たった。


「い、痛い!」


それから一時間ぶっ通しで模擬戦をした。

するとロライドさんが。


「ノア、お前最近頑張りすぎだ。たまには体を休めろ。いいな?今日は一時間で終わりだ」


「え?でも・・・」


「お前の彼女にプレゼントでも買ってやれ」


そう言い、大銀貨一枚を投げてきた。


「うわっ!ちょっ!ロライドさんお金を投げないでください!」


「まぁ、そう言う事だ。帰れよ〜」


この人、ボクの話聞いない。でもロライドさんイケメン!ありがとうございます!


ボクは急いで帰る準備をし、プレゼントを買いに向かった。





ボクは赤色綺麗な薔薇を九本と綺麗な青い石の耳飾りを買った。


「喜んでくれるかな?」


ウキウキしながら家の扉を開けた時。


「あ・・・あぁん・・・オッズさ、ん」


え?


「ライカ・・・好きだ」


嘘だろ?

ボクは持っていた九本の薔薇と青い石の耳飾りを落として走り去った。

嘘だ!嘘だ!嘘だ!ライカが、なんで!

ボクは悲しかった。信じたくなかった。


ズキッ


薔薇の棘が刺さったように痛んだ。





気がつくと草原にいた。ここは王都近くの草原だった。夕日が蒼い草をオレンジに染める。美しかった。それでも悲しい。

ボクはなにかに導かれるように草原を歩いた。


「ふっ!はァ!」


どこからか声が聞こえる。

その方角へ歩いて行くと。

そこには燃えるようにな美しい赤い髪をした美女がいた。肌は白く、目はキリッとしている。瞳も強い赤色で胸は大きい、豊満だ。いや、ボクが見惚れたのはそこじゃない。見惚れたのはその剣術。まるで踊るかのように美しい剣の舞。ボクはこの人の剣を知りたくなった。それは心の傷を、あの光景を忘れたくてなのかもしれない。


「あの!」


「誰?」


「あの!ボクはノアと言います!あなたに惚れました!」


「そういうのはお断りしているの、ごめんなさいね」


ん?ボクは今、あなたに惚れましたって言ったのか?思い出して顔が熱くなった。違う!確かに美女だ。でも、ボクが惚れたのは・・・。


「ちっ、違うんです!間違えたんです!」


「はぁ・・・、とりあえず落ち着きなさい」


スゥ〜ハァ〜スゥ〜、よし。


「あなたの剣術に惚れました。ボクに教えてください!」


ボクは腰から直角九十度に折ってお願いした。


「剣術に、ほ、惚れたって・・・、断る!まず、教えるなんて面倒くさいじゃない!そ・れ・に!そのヘルム外しなさい!失礼でしょ!?」


断られた。いや、めげるな!ヘルム?はっ!しまった!


「お願いします!こんなこと言うのは情けないですが・・・、失恋したボクにはあなたの美しい剣が必要なんです!それとこのヘルムは昔トラウマのせいで外したくないんです・・・」


「失恋して私の剣に惚れるって変わってるのね。一応、私は女でそこそこ美人よ?・・・でも、そういうことならしょうがないわね」


自分で言っちゃうの?美人だけど。・・・でも、許してくれた!


「あなたも美人ですが剣も美人です!それとこのヘルムのことありがとうございます!」


なんかよくわからなくなってきた。


「下心なしで真っ直ぐに言うなんてね。・・・でも、なんか気に入ったわ!一ヶ月!一ヶ月だけ指導してあげる!そのあとのことは実力次第ね。場所は・・・、ここでいいわね」


「わかりました!・・・でも、ボクは冒険者で依頼もしなくちゃいけなくて」


「大丈夫大丈夫!依頼はゴブリンとかでいいでしょ?その程度の魔物はちゃちゃっと終わらせなさい!こっちの方が大事よ!」


「そう・・・、ですね!わかりました!昼までに終わらせるようにゴブリンを退治してきます!」


「真っ直ぐで素直ね・・・、可愛い・・・」


あれ?なんか急に様子が・・・。


「あの〜・・・」


「ハッ!いけないいけない。私の名前がまだだったわね。私はアンジェリカ、アンでいいわよ!あとまだ十八だからね!」


「はい!アン師匠!ボクは十六歳です!」


「師匠は可愛くないからダメ!アンにしなさい!・・・そう、十六ね・・・」


最後なにかボソボソ言っていたような。とりあえず、アンって言わなくちゃ!


「アン・・・、さん」


「さんかぁ・・・、まぁ今はそれでいいわ。明日は依頼受けるの?」


「いえ、今日受けたので明日は休日です。二日に一回受けるので」


「そう・・・、それなら休みの日は朝六時スタートね。良いわね?」


「はい!わかりました!」


「言い忘れてたけど、最後の日にヘルムも卒業ね!」


「・・・えっ?」


ボクはこの草原で運命の出会いをした。あの剣術を教えてもらえる。美しい舞を。ボクは嬉しかった。

アンジェリカ、彼女の正体は、剣姫と呼ばれるSランク冒険者であり、勇者や賢者、聖女などと並ぶ世界屈指の冒険者だ。ノアがそのことを知るのはまだまだ、まだまだまだ先である。





ボクは鼻歌を歌いながら家に、ライカがいる家に向かった。


「〜〜♪」


扉を開け帰った。


「ただいま!」


「お、おかえり」


ライカは笑顔を作っていた。


「ボクね、新しい師匠ができた!凄く美しい剣の舞だったんだよ!それを教えてもらえるんだ!」


ライカはホッとしていた。いつもより上機嫌なノアだったからだ。


「教えてもらうって依頼は受けるの?」


「うん、今まで通り二日に一回受けるよ!休みの日はほとんど修行!楽しみだ!」


ライカから見たノアは新しい恋をした女の子のようだった。ライカはまだ知らない。ノアがライカとオッズの関係を知っていて、もうノアの心にはライカという少女がいなくなり始めていて、かわりに剣術のことで一杯になっていることを。

そして、薔薇と耳飾りはオッズが持って帰り捨てた。





「ノア君ねぇ。ヘルムで顔を隠してるけど、ふふふ、可愛い。十六歳なら恋人でもアリよね」


アンジェリカは素直なノアの事を気に入っていた。

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