第6話 探索に出かけよう!

「周辺の探索はこのくらいでいいかな!」

「そうミュね スケッチがいっぱいミュ」


ココの探索方法は第一にスケッチだ。写真で取ることも忘れないが、スケッチすることで細かい部分の観察が出来たり、頭に残ったりするのでココは必ずスケッチすることにしている。今まで何百枚と描いてきたおかげで絵は相当な腕前となっている。


「少ない情報でも検索が出来たらもっと良い探索になるのにミュ…」

「そうだけど仕方ないねっ」


ココもハミュもそこはとても残念がっている。もしかしたら既に広く知られているものを丹念に観察しているかもしれないのだ。

仕方のないことだが、"出来たらなぁ"という思わずにいられない。


「それでこの後はどうするミュ? そろそろ帰るミュ?」

「帰らない!!!」


軽く牽制してみたが、思いもよらぬ強気に返ってきたのでハミュは少し驚いた。

だが、ハミュも帰ることにするとは思っておらず冗談である。


「冗談ミュ もう観念してるミュ」

「えへへ~」


困ったように笑っているが、そのやり取りがココはとても楽しく思った。

この星に降りてやっと冗談を言えるくらいに落ち着いたのだ。


「次は向こうの林っぽくなってるところに行ってみようよ!」

「ミュッミュッ〜」


わかりにくいが"オッケー"の返事だ。

林の方向に歩こうと思ったとき、ハミュの後ろをついてまわる風船犬を見て思った。


「なんかハミュ懐かれてるよね」

「おいらもそう思うミュ たぶん、意志の疎通が出来るからミュ」

「えっ?」

「テラの動物たちと同じミュ ちょっとした会話が出来るミュ」


確かにハミュは動物と話すことが出来る。何でも人間以外の動物というくくりで会話は可能らしいのだ。(ハミュは紛れもなく珍獣だが)これはこの謎な星でも一緒らしい。

ココはふと1つの予想が浮かび上がり淡い期待を乗せて言ってみる。


「テラではよく話してるもんね もしかして前はテラに住んでたりして…?」

「謎な星だから可能性はあるミュね でも残念ながらそんな感じはしないミュ」

「そっかぁ…」


残念。でもそれはそうだとわかってもいる。

次に出てきた疑問も投げかけてみる。


「そういえば、会話出来るってことは名前も聞ける? まだ名前がないな〜と思って」

「ミュ!」


ハミュは振り返って風船犬に訪ねてみた。


「$ git pull name」

「$ git commit wanpopo」


ココは思わず心の中で呟いた"変な声…"。全く理解できないのは当然だが、とにかく変な声だった。そしてそれは、どこかで聞いたことがあるような、ないような不思議な話し方だった。

そんなことお構いなしにハミュが振り返って教えてくれた。


「ワンポポっていうみたいミュ!」

「ワンポポって言うんだ! あらためてよろしくね!」


ココはワンポポを見ながら言った。この言葉は理解しているのだろうか?

ワンポポは名前を言うために口を開きさえしたが、それ以外は相変わらず何気ない顔でふわふわしている。

伝わったのかわからないが、とりあえず伝わったことにした。ハミュに感謝だ。


「それではそろそろ、向こうの林にしゅっぱ〜つ!!!」

「ミュ〜〜〜!!!」


ココは元気に歩き出し、なんだかんだで乗り気なハミュもそれに続いていった。


・・・草陰に潜む影には終始気付かなかった

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