第1章

由良 結人の軽めの生い立ち

小さい頃。

男の子なのに、可愛いねぇ、女の子みたいだねぇと言われるのが嫌で仕方がなかった。


成長していくにつれて、僕の意図とは反して、目はクリクリした可愛らしい感じになり、

体は、ガタイがいいなんてかけ離れた、華奢きゃしゃで細い体型。

ますます可愛いと言われたのである。


今思えば、やけに敏感に嫌悪を抱いていたと不思議に思っている。

やはり、男は男らしく、格好いいと言って欲しかったのかもしれない。


さらにさらに、悲惨なことに。

小学生の頃、健全に公園で遊んでいたところを

女の子と間違えられ、誘拐されそうになった。



抗うことのできない力で、軽々と持ち上げられ、どうしようもない恐怖に襲われた。



恐怖で声も出なかった。


…今でも恐ろしい。


親ももちろん心配した。


その後、外見の恐ろしさを知った僕は、中学生に上がると眼鏡(伊達)をするようになり、

顔を隠したくて、前髪はいつも目にかかるくらいの長めだった。


そして、人目を避けるように生き、浮かない程度に程よくコミュニケーションをとってきた。


僕は男なのに、男らしくない顔で、ご飯をいっぱい食べても太りやしない女みたいに細い体。

母は羨ましいわねぇなんて、呑気に言ってるけど、真面目に悩んでるんだ!




__こうして生きてきて現在、


僕は、新高校1年生。


由良 結人ゆら ゆいとは、今までこうして生きてきた。


…彼に翻弄されるまでは。



それは、まだ、少し先のお話。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る