第14話

私たちの体育祭の表彰式では私たちのクラスが呼ばれることはなかった。みんなが頑張っていたが残念な結果になった。


「いや~、惜しかったな。みんな頑張ってたし、輝いてる姿が見れたからな~。先生からちょっとばかしの贈り物として食堂で食べれるアイスの食券をあげたいと思う。お疲れ様だったな~」


フゥーッ!!と配られていく食券を子供のように喜ぶクラスメイト。まだまだ暑くなる季節だし、嬉しいのは確かだ。


「って、一番安いアイスじゃん、先生」


「こういうのはなんも言わずにもらっとくんだよ、バカが」


「そうだぞ、先生のポケットマネーが寒くなるんだからな-アイスだけに。ガハハハ」


クラスの方が寒くなったわよ。お疲れ~、と先生は生徒の冷ややかな目に晒されながら帰っていった。


体育祭の興奮が冷めやらないのか、騒ぎながら帰っていく生徒も多いなか、私は烏谷に声をかけた。


「ねぇねぇ、一緒に帰らない?」


烏谷は驚きながらも笑顔で応じてくれた。


「今日の体育祭楽しかったね」


「うん、新参者だったけど楽しくやれてよかった。また、みんなとちょっと仲良くなれたかも」


烏谷は出来上がっていたグループに放り込まれたような状態だったからね。


短い沈黙を挟んで、私は呼吸をして、吐き出した。


「揺士と恋仲は順調?うまくやれてる、喧嘩はもうした?それともラブラブの期間だったりしちゃう?」


はは、弱気だなぁ。ホントはもっと問い詰めたいんだけど。これが限界だ。


元を辿れば、早くに問い詰めることだってできた。こんなちっぽけな勇気も出なかったのだってしょうがない。だって、揺士が好きだから。


「ん?」


声がかすれちゃったかしら。二回目言うのは結構きついし、恥ずかしいのだけど。


「揺士との仲は良いの?」


「ちょっと待ってください。恋仲って。さっき」


「うん」


烏谷はさらっと言い切った。返事をするのかのように当たり前に。


「私と揺士くんは付き合ってませんよ」


へ!?マジ!ほんと、ガチのガチ!?


「付き合ってないの?なんだ~、このデマを流したやつボコボコにしてやりたいわ」


「きっとその人も悪気はなかったんですよ。勘違いかもしれませんし」


「冗談よ、冗談」


今の私はスキップでもしたい気分。嬉しさでくるくる舞い踊りたい。


「けど、揺士くんと小鳥遊さんっておしどり夫婦って。付き合ってはないんですか?」


「当然。そしたらあんなこと聞かないわよ」


自然に前に出た足を一回転させ、烏谷と鏡合わせで話をする。烏谷は相変わらずポニーテールを揺らし微笑みながら歩いていた。


太陽は燦燦と輝き、透けているような昼月が雲一つない空に浮かんでいた。

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