#4 石ころの結末Ⅰ

 旅半ば、わたしは歩みを止めて立ち止まってしまった。

 路傍に二人ぶんの遺体が打ち捨てられていた。二人ぶん、としたのは、文字通り頭の数が――頭蓋骨が二つ転がっていたから。

 どれほど雨風に曝されてきたのか、肉は既に朽ち白い骨だけが残っている。

「――見た感じ、全体の骨の大きさ、かたちといい――どちらも10代の人間の子どもでしょうか」

 と、旅の同行者であり、自分探し中のキカイ『イド』は言う。

「10代の、子ども――」

 わたしと同じくらいの年令だ。

 イドの「診断結果」がどれほどアテになるかは分からないが、言われてみれば、何処となくわたしと同じくらいの大きさの人間の骨に見えた。

「でも、どうしてこんなトコで? 近くにコロニーはないし、獣が徘徊していそうな場所でもないのに」

 考えても仕方ないが。――死ぬ理由なんて、この世界には何処にもある。

「ムムム、どうでしょう? 骨の様子から推理するしかありませんが、どちらも外傷が死因というわけではなさそうです。とすると、餓死や病気――それらから来る衰弱による死というのも候補でしょう。他にも――ムムム」

 と、イドは言葉を区切る。らしくない、はっきりしない物言いだ。

 イドが「らしくない」時は、わたしを気遣っていることが多い――大方、遺体がわたしと同年代の人物のモノだからといったところか。

 そう、区切られた先の言葉は、わたしにも推理出来た。

「他には、自死や尊厳死――なんてのもあるわね」

 だから代わりに言った。別に気遣うことなんて、ない。

「その――アイビィ、貴女が気にするコトはありませんよ?」

 と、胸元から聞こえてくる控えめな声。やはりわたしを気遣っているようだ。

 でも、わたしは遺体を見てショックを受けているわけではない。

「違うよ、イド。別にこれを見て傷ついたわけじゃないの。ただ――ただ考えていただけ」

 そう、目の前のモノを見つけた時から、わたしは考えていただけなのだ。

「――考えて。では、何を考えていたのですか?」

 と、イドが尋ねてくる。先ほどまで気遣っていたのに今度は追求してくる。

 やっぱりヘンなキカイだ――とはいえ、イドはその機能シミュレーション&コントロールの為にわたしの情報を収集しているというから、これはその一環なのだ。

 別に考えを知られたからといって困ることもない。

 だから、考えていたことをそのまま伝える。

「――この二人は、選択を誤ったんだな――って」

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