第26話まぼろしの夢
すべてが夢のようであってほしかった、たとえこの病が引き起こすまやかしに過ぎないのだとしても、あなたの愛をその手で終わらせてしまわないでほしかった、遠ざかってゆく汽笛の向こうに消えてゆく儚い靄であったとしても、あるいはあなたの孤独に経てきた十年がまぼろしであったとしても、あなたの愛を感じていたかった。引き剥がされてゆく毛布を剥製にして、鹿の頭に象って、あなたと名づけたかった、離れ離れになって散り散りに消えてゆく横雲にあなたの面影を重ねていたかった、夏の夕焼けは残酷にも美しく私を圧して覆い尽くしてゆく。
『ココア共和国』2022年9月落選作
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます