12日目 「ありふれた幸せ」



「獣人なのです!」


(いや、みてわかるよ!)


 みよは思わず声に出してつっこみそうになったが、そういう雰囲気ではないことを察して心の中でつっこんでいた。


「それで、どうしたの?」


 みいは何も気にしていないようなみよの反応をみて驚いていた。


 その様子を見ていたマリーはみよにこっそりと耳打ちをする。


「獣人とは昔ちょっといざこざがあったみたいであんまり関係が良好じゃないって聞いたわ......私はあまり気にしてないけれど」


 みよはハッとした顔でみいの方に向き直り、


「あっ、なんか色々あったらしいけど私達はなんとも思ってないから大丈夫だよ!」


 と、説明を加える。


「そう......ですか。不思議な人達ですね。それでは、私達が盗賊になった経緯をお話ししましょうか......」


 マリーとみよはちょこんと正座をして真剣に話を聞く。


「あれは私が学び舎に通うようになってからでした......」



 彼女の家は貧乏だった。母親ひとり、シングルマザーで育てられたみいに「自由」などない。


(小さい頃から家の手伝いばかりで生きるのってつまんないです......私、何が楽しくて生きてるんでしょうか......)


 みいは、外で洗濯物を干しているとふとそんな考えが頭に浮かんだ。


 そんな時、みいの家の前を楽しそうにお話をしながら子供達が通り過ぎていった。


(あの子達なんだろう......すごく楽しそう。私もあんな風に友達がいればなあ......一緒に遊んだり楽しくおしゃべりしたりできるのに。)


 みいは瞳にじんわりと涙を浮かべるが、こぼれ落ちないように必死にこらえた。


 彼らのように毎日楽しそうに笑って、どこかへの行き帰りで一緒におしゃべりをする。


 そんなあたりまえのことが彼女にはたまらなく羨ましかったのだ......


 そしてある日、そんな彼女のもとにも届いた。


 ーー「幸せの箱」が。

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