第10話 待ち伏せ

 昼飯の後はとくに何事もなく放課後になった。

 沢渡が九重の事を引っ張ってどこかに連れて行ったり、もしくわその逆の光景があったくらいか?

 そして放課後になると、五條はサッカー部だから校庭へ。九重もマネージャーやってるから一緒に行った。

 沢渡は弓道部だから弓道場に向かうのかと思ったけどまだ教室にいる。

 更にさっきから何回か目が合う。俺の後ろに何かあるのかと思って振り向くと、連絡用の小さい黒板に変更になった時間割りが書かれていた。

 なるほどね。これ見てたのか。もしかして俺が邪魔だったかな? 背がデカいって理由で一番後ろの席にされたからなぁ。

 そういうことならと、俺はそれをスマホで撮る。そしてすぐに沢渡に送ってやった。

 ……なんでため息?


 あ、弓道で思い出した。そう言えば以前、五條が「あぁ、沢渡なら引っかからないか」ってボソッと言ったら、沢渡は涙目になって固まり、言った五條は九重に叩かれながら正座で説教されていた。なんか嬉しそうだった姿にちょっと引いたからよく覚えている。


 で、俺は書道部。知ってる先輩に、一番行かなくていい部活がなんなのかを聞いた所、文化祭の前日に行って何文字か書けばそれで終わりだって教えられたからだ。ダーツの練習に行きたい俺には最高の部活である。


 まぁ、来月に文化祭があるからその時は少し出てみるか。なんて書こうかな?【追放】【もう遅い】【幼馴染】【無双】うーん。悩むね。


 まぁいっか。とりあえず今日は帰ろう。一宮のお袋さんがまだいるかもしれないしな。ちゃんと挨拶くらいはしとかないと。


 だけど、俺が鞄を持って席を立ち、教室を出ようとしたところで沢渡から声がかかった。


「や、八代君。今から帰るの?」

「んだね。沢渡は部活は? 休み?」

「うん、今週は弓道場に整備が入るみたいで休みなんだって。そ、それで……ね? えっと……」

「なのか。じゃあ……帰るか」

「へ? え?」


 なんでそんなにびっくりしてんだ?


「ん? 帰るんだろ? 方向一緒なんだしどうせなら一緒に帰ろうぜ。あれ? それとも約束とかしてた? それならそっちが優先だけど 」

「ないっ! 約束なんてないっ! あっても行かない!」

「いや、そこは行けよ」


 それから歩きながら話をする。

 話の内容は昼の話の延長みたいな話題が多かったな。

 というか、注意事項みたいな事を言われた。女の子の部屋に行く時は絶対ノックしないとダメって事や、特に風呂の事は凄い熱く語ってた。

 絶対に鍵は付けた方が良いとか、ちゃんと中に人が居ないかを確認してから入らないと危ないとか、裸や薄着で歩いちゃダメとか。

 何が危ないのかはよく分からなかったけど、とりあえず頷いておいた。むしろそれは一宮に言わないといけない事の様な気がする。


 そしてそんな話は電車に乗ったらパタリと止まった。お互いに朝の事を思い出して気まずい空気になり、沢渡は顔を赤くしたままで俯いてしまったからだ。

 そんな姿を横目に、俺が適当にスマホのゲームをやってると、しばらくして俺達が降りる駅に着いた。


「沢渡、着いたぞ」

「えっ? も、もう? うぅ……早いよぉ……」

「早いか? 俺、このゲームのイベント結構周回できたぞ?」

「そういう早いじゃないもん……」


 なにやらブツブツ言う沢渡と一緒に改札を出る。そして駅からも出たところで俺は沢渡に声をかけた。


「じゃあ俺はこっちだから」


 沢渡はここから右方向だからここからは別になる。だから俺はそう言って左を向いて自分の家に向かおうとする。


「ねぇ八代君。もうちょっとだけ──」

「千秋君おかえり!」

「一緒に──って……え?」


 沢渡の声に重なるように、最近聞くようになった声が聞こえた。



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