「祝福祭」
次の日、合同軍事演習が終わって、ソクラタン高原からドラゴンに乗って急いで自宅へ帰り、シャワーを浴びた。色々な事を考えながら、少し長めに湯につかる。風呂を出る頃には、身体が火照って、少し汗ばむほどだった。自室に戻り、書類整理を始めた。
カイル・アルトリア。軍事国家アルトリアの王位継承権第一位の、正真正銘の王子様。
「お兄様、今、よろしいですか?」
「ああ、構わないよ」
妹のキリエが一通の手紙を手にして、俺が座っている机の前までやってきた。
「アルトリア国王からです。今年の祝福祭への招待状です」
「あー、もうそんな時期か」
祝福祭。感謝祭とも言われる祭で、小麦の収穫時期であるこの時期に神に感謝をする……という
「招待状か……でも、街に出て警備をしないといけないから、今年も断る事になるんだろうな」
「では、お断りの御手紙を出しておきましょうか?」
「そうだな……ん?祝福祭には、アルトリアの
「ええ……カイル王子、ディズ王子、シャナ姫も参加されますよ」
「今年は参加するか」
「え!?どういう風の吹き回しですか?貴族関係のパーティーに出るのを、毎回あんなに嫌そうにしていらしたのに」
「いや、
「いい心がけですね。では、私とお兄様が出席する旨、返信いたしますね」
「うん。よろしく頼む」
「しかし、不便ですよね。思念通話でやり取りすれば早いのに、今時こんなアナログな方法を使うなんて」
「しきたり、というのは大事なものなんだよ、キリエ」
「思念通話が開発されたのは150年前ですよ?私達、貴族はもっと効率的な方法で
「正直に言うと、俺もお前の意見に大賛成なんだがなあ。まあ、あまり表立ってそんな事を口にするなよ。ただでさえ俺達ライオンハート家には敵が多いんだ。これ以上、厄介ごとを増やすのも面倒だし」
「分かりました……」
「祝福祭は何日後だ?」
「二日後です」
「そうか。それまでに獅子王軍の皆に、警備体制のおおまかな
「あまり根を詰めないようにしてくださいよ」
「ああ、いつも心配をかけるな。ありがとう」
「お茶でも淹れてきましょうか?」
「いや、今から警備体制について考えないと。交通整理や誘導も俺達の仕事だから、集中したい」
「分かりました。では、失礼しますね」
キリエはニッコリ笑って、部屋を後にした。階段を降りる音を聞き届けてから、俺は美咲へメッセージを送った。祝福祭の事、カイル王子に
「春日部遥が、ありがとうございますと言って、涙を流しているわ。ハロルド、私からも感謝を言わせて。ありがとう」
「どういたしまして、と
「それもそうね」
「祝福祭は二日後だ。あれから
「昨日、数分だけ通話したわ。あと、今日の晩に少し通話をする事になった」
「内容について、教えてくれるか?恐らくティーファ的にはどんな話題でも構わないと思ってる
「それが、悟さんに自分が異世界に居るってカミングアウトしてきたのよ」
「……どういう事だろう」
「ティーファの考えが読めないわ」
「慎重に事を運ばないとな」
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