爬虫類喰らう酒豪JKと幼馴染の黒魔術

ぷいゔぃとん

第一章 タピオカの黒魔術

001 出会いは曲がり角が定番、俺は貧乳を愛する

「いっけねぇ! 遅刻、遅刻ゥ〜! フゥ〜!」


 俺の名前は、有江ありえ 凛悟りんご


 世間は、俺をと呼ぶ。


 新学期を迎え、この春から俺は高校3年生。色んな先生に賄賂わいろを送り、なんとか進級することが出来た。心機一転、世間に迷惑をかけないよう生きると誓ったのだが、初日早々遅刻しそうだ。


 我が住まいレオパレス21を飛び出し、全力で通学路を駆ける。


 いける……!


 俺のスピードなら……!


 俺は調子に乗って、交差点の角を左右確認せず思い切り突き進んだ。だが、視界に人影が映る。周りがスローモーションになった。所謂、走馬灯と呼ばれるヤツだろう。


 口に、フトアゴヒゲトカゲと思われる爬虫類を咥えた美少女……。


 あれ? 俺と同じ学校の制服だ……。


 認識と同時に、頭に強烈な衝撃が走る。やはりお互い止まれず、互いの体は激突した。


「きゃっ!?」


 美少女は尻餅をつき、咥えていたフトアゴヒゲトカゲは何処どこか茂みへと逃げて行く。


「おいテメェ、何してくれとんじゃあボケェ! あたしの朝メシ返せよ!? フトアゴヒゲトカゲ、高級なんだぞオラァ!」


 謎の美少女は、俺の胸倉を制服が破れそうな勢いで掴んできた。随分と、豪華な朝食じゃないか。


「てか……こんな男にキレてる暇ないわねぇ! 遅刻、遅刻ゥ〜!」


 突然、我に返った様子の美少女は、何事もなかったかのように再び走り始めた。気のせいかあの娘、酒臭かったぞ……。


 酔っ払っていたのか? それに、巨乳だった。間違いなくGはある。さっき衝突した際、確かに、柔らかみの強い感触を感じた。だがしかし俺は、何を隠そう控えめなおっぱいが好きなのだ。顔は可愛いかったが、貧乳じゃないので恋愛対象外だ。


「あれ、これは……?」


 地面に生徒手帳が落ちてあった。多分、あの娘のだろう。名前は……真木まき 咲萌さくも。俺と同じ学年のようだが、でも初めて見た顔だ。


 仕方ない、届けてやるか……。


 俺は、フトアゴヒゲトカゲの美少女、真木 咲萌の生徒手帳をカバンに入れた。


 新学期早々、大忙しだ。俺は完全に遅刻を悟り、ポケットに入れてあるたばこを咥え、火を付けた。


 たばこの税率って高いよな。煙となって消えていくだけなのに……。


 だけどその代わり、たばこには心を落ち着かせる効果がある。


 たばこは、良い。


 ピークを過ぎた桜並木の下を歩く。遠くで学校のチャイムが鳴っている。どんな1年が待っているのか、楽しみじゃないか。俺は、春の空に禁煙を誓い、新たなスタートに胸弾ませた。



 ◆◇◆



「おい、有江……。お前、新学期早々遅刻とは良い度胸じゃないか?」


「あん? 道に迷っているカルガモの親子を助けてたんだよ! 文句あんのか!?」


「ふざけるな! えなりかずきみたいな声しやがって! 舐めてるのかっ!? カルガモの親子を助けた話は信じよう……。だがな、えなりかずきみたいな声だけは許さん!」


「えなりかずきに失礼だろ!」


 今年の担任は、去年に引き続き億鳥おくとり先生だ。生徒からは、おじさんと呼ばれている。


 教室に入るや否や、クラスメイトが注目する黒板の前で説教を食らった。


「まあいい……。新学期だから許してやろう。お前の席は一番後ろだ」


「はいはい……」


 俺は、大人しく席に向かう。やれやれ、本当に今日は忙しい一日だぜ。クラス替えも行われたことだし、先ずは女子全員のバストサイズのチェックだ。


 席に座り、先ずは隣の女子の胸に目をやる……。


 ほ?


 口から心臓が飛び出そうになった。俺の視線に気付いた様子の彼女も、俺の顔を見る。


「あ、アンタ! あたしのフトアゴヒゲトカゲを逃した男……!」


 嘘でしょ。同じクラスになっちゃった!


「あとで弁償してもらうからね!」


「ほ? なんで!? 俺、悪くないもん! フトアゴヒゲトカゲ咥えてる方がおかしいだろ!」


 ヒートアップした俺の声は、億鳥おじさんに届いてしまった。


「おい、有江! いい加減にしろ! クラスに、えなりかずきがいるみたいじゃないか!」


「そんなこと言ったってしょうがないじゃないか……! てか、おじさん! この女、酒臭ぇぞ!」


 コイツは間違いなく飲酒している。未成年だぞ。大人ぶりやがって。


「未成年飲酒と、えなりかずきみたいな声……どちらが不快か考えろ!」


 確かに……。この女は、酒に酔って迷惑をかけている訳じゃないんだし、俺の声の方がよっぽど周りに迷惑だろう。俺は反省した。


「よし、じゃあ色々面倒くさいクラスだが、この一年は全力で楽しめ! 最後の高校生活だからな! 法に触れないギリギリの青春をするんだ! はい、ホームルームは以上ッ!」


 隣、明らかに飲酒しているんですけどね。法のライン超えちゃってますけどね。チャイムが鳴り、休み時間に突入した。俺は教室のベランダでたばこに火を付ける。


 本日、未だ2本目 ——

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