第7話 親友がいきなり襲ってきた




 俺とくるみはそのまま高校へと到着。


 校門が見えたあたりから息を整え、スイッチが切り替わるようにテンションが180度変わったくるみ。

 教室の中に入ると大きな声で「おっはよーみんな!!」と言いながら俺とは別れて別々の席へと移動する。



「おはよー斗真とうま君」

「おはよーさん」



 幸いと言っても良いのか、クラスのみんなには俺がマスコット的な存在であるくるみの幼馴染だということは周知の事実。


 これまで積み重ねてきた俺の人畜無害的な評価と合わさって、くるみほどではないが良い人認定を受けているので男女問わず挨拶をしてきてくれる奴らがほとんどだ。


 鞄を席の端に下げて一息つく。ちらりとくるみの方へと視線を向けると、ちょうどあっちの方も俺の方を見ていた。


 にこりと向日葵ひまわりのような輝かしい笑顔を浮かべると、視線を話していた女子グループの方へと戻した。



「……ま、席が離れてるしせっかくの交流の場を邪魔しちゃ悪いよな」



 くるみと一緒にいる女子たちの声を耳で拾いながら顔を正面に戻した俺は、スマホで夕食の料理のレシピを検索しながら呟く。


 くるみは高校では陽キャという仮面で自分の心を覆い隠しているが、決して人間関係の繋がりを断ち切りたいわけじゃない。

 小学校の頃のクソガキどものトラウマで、人の顔色や目線を伺ったり引っ込み思案な性格になったけれども、陽キャモードを使って自信を持ちたいと日頃から思っているのだ。


 だからこそ、俺はくるみが頑張っている邪魔だけはしたくはない。くるみが話しかけて来たら別だけど、俺が高校で介入をするとしたら本当にくるみが困っているときだけ。



「それに、高校で頑張っている陽キャモードのくるみの顔はすっげぇ可愛いしな」



 くるみの高校で見せる顔と俺の前でしか見せない顔。これぞ幼馴染特権だろうか。素敵なおっぱいも見れるし、眼福眼福。


 と、俺は目を閉じながら一人でうんうん頷いていると、いきなり教室の扉ががららっ!と音を立てて開いた。

 そこに立っていたのは、俺の親友である幸助。


 何故か激しい息をついている幸助は俺を睨み付けると、つかつかと教室の中に入ってきて俺の机の前に立つ。

 よくよく見ると、少しだけやつれているように見える。


 全クラスメイトの興味・不思議な視線と共に俺は白けた目を向ける。どうせくだらないことだろうと考えていると、幸助は手に持った辞書を俺の頭に振りかぶった。



「この巨悪の元凶め! 死に晒せーー!!」

「お前だクソ野郎。調子に乗るな」

「げはっ!」



 分厚い辞書を片手で受け止めると、俺はすかさず右わき腹にリバーブローをねじ込む。幸助は教室の床に崩れ落ちるも、俺の机を支えにぷるぷると震えながらなんとか立ち上がった。


 ちっ、座りながら打ちこんだから甘かったか……。



「あ、朝から肝臓狙ってくるの止めて……?」

「自業自得だろバカ」

「だ、だって……お前、アイツに昨日のこと告げ口したんだろ……? この裏切り者めぇ……!」

「俺はいつだって恋する女の子の味方だ。覚えておけ」



 最初は様々な視線を向けていたクラスメイトだったが、内容がいつもの騒がしいやりとりだと分かると、みんなの興味は逸れていった。


 因みに幸助の言う"アイツ"とは件の後輩である幸助の清楚系な彼女である。昨日の帰宅する段階で、その子には"幸助がクラスの女の子の大きな胸を食い入るように見つめてはスケベでだらしない顔をしていたぞ"とメールで伝えていた。


 同じ高校なので何度も顔を合わせたことがあるが、そのどれもが幸助関連のこと。幸助の紹介で一番最初に俺と顔を合わせたとき、こっそりと『メール交換して下さい。幸助センパイが他の女と何かしてたりいやらしい視線を向けていたりしたら教えて下さると嬉しいです。そのときはるので』と言われたのを思い出す。


 もちろん深くは訊かない。何を盛るのか興味はあったけど恋人同士、ましてや幸助なので大丈夫だろうと思ったからだ。

 ……いやなんの根拠も無いけどな。


 その後幸助は呻きながらちょうど俺の前の自分の席へとふらふらと戻った。



「……メラ……P……器……っ! あ、頭がぁ……ッ!」



 ……おい幸助、監視カメラとかGPSとか盗聴器とか何物騒な単語ぶつぶつ呟いてんだ?







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