ヒューメイリアンは嫌な予感を感じる

オロボ46

第1話「異星人って信じる?」

「ねえ"ギンホ"ちゃん、異星人って信じる?」

歩道を歩く高校からの帰り道、親友の"リン"の話題に、私は寒気を感じた。


「どうしたんだ、いきなり」

「あたし、最近都市伝説にハマってるの。この都市にもあるんでしょ?」

「異星人がこの都市にやって来た話か?」

「そうそう! この"K市"がまだ田舎だったころ、山の中でUFOが目撃されてね......何回かのコンタクトが続いた後にUFOが去っていたの」

「知っているよ......一番有力な説が貿易を結ぼうとしていたってやつだろ?」

「もう......ギンホちゃんっていつも先回りするんだから......そんなところからエスパーとか言われるんだよ?」

「......」

「ほらほら、そんな仏頂面だと綺麗な銀髪が台無しですよー?」

そう言ってリンは私の頬を突っついた。




 話題が戻って来たのは、駅前に近づいたころだった。

「あたしね、夢、見つけちゃったかも」

「夢? 異星人と友......一体なんなんだ?」

「無理して惚けなくてもいいよ......異星人が去る間際に、自分の遺伝子を地球人に渡したんだって。政府は宇宙人の存在含めて隠蔽したけど、実は異星人と地球人のハーフを作る実験をしていたんだって......あたし、その人と友達に......」

そこまで言って、リンは突然腹を抱えた。

「くくくくく......!」

「......そこまでおかしいか?」

「いえ、なんだかわからないけど、おかしいのよ! なんていうか、一瞬だけギンホちゃんがそうじゃないかって......そんな気がしたの」

「......」

リホもある意味エスパーなのでは? と思ったが、口に出さなかった。

「それじゃあギンホちゃん、明日学校でね。5日後の誕生日会、楽しみにね!」

「わかった。リンも気をつけて」

手を振りながらホームへと入っていく里穂を見送った後、私は帰路に就いた。




NEXT TO ??? -始まりはパーティーのトイレの個室-




 うう......まだ全部出せてないよ......


 トイレの個室の中でうめき声を出しながら、扉を開ける。せっかく先輩に誘ってもらったパーティーなのにお腹を壊したせいで台無しだな......

 洗面所で手を入念に洗っていると、またハンカチを忘れていることに気づく。ぶっちゃけ言って、俺はハンカチを持ち歩く習慣が身に付いていない。今のご時世ハンドドライヤーが普及しているからそいつに頼っている。問題だった衛生面もクリアしているしな。


"使用禁止"


 そのハンドドライヤーが故障中だなんてついてないぜ......張り紙が嘲笑っているように無性に腹が立つ。ああ、さすがに手を濡らしたままでは不味いよなあ......それ、手をピッピッと。

「......」

......いけね、つい癖で水しぶきを飛ばしちまった。しかも、トイレに入ってきた太めのおっさんのスーツにかかってしまったし。

「すみませんっす」

俺はおっさんに怒鳴らないうちに颯爽とトイレを抜け出した。




「よお"シロト"! 腹は治ったか?」

トイレの前でパーティーに誘ってくれた"ハノスケ"先輩が声をかけてきた。

「いえ......先輩すみません、腹壊しちまって......もう帰っていいっすか?」

「おいおい大丈夫か? そんな調子じゃあ大学生活は大変だろ?」

「そうっすよね......以後気を付けるっす」

ハノスケ先輩は俺が今度入学する大学の四年生。故郷の田舎にある、中高一貫校の時からの付き合いだ。いつからついたのか解らないが、右耳から右の頬にかけて傷がついているのが特徴だな。

「それじゃあ、風邪引くなよ。俺はもう少し残るよ」

「すみませんっす、失礼します」

俺は愛する白い帽子を被り直し、帰路に就いた。




NEXT TO ギンホ [銀髪の少女] -友人と別れた後の帰路-




 ......?


 帰り道、私は横にある高層ビルを見上げた。

 このK市の新たなシンボルになるという"Kタワー"......ニュースによると、今日はここで完成記念パーティーをしているらしい。

 周りのたくさんの人々に思わず注目してしまう。もうすぐ......何かがおきるのだろうか? ここを横切った瞬間に、嫌な予感が頭の中を過った。


ドンッ!!


「......だ......大丈夫っすか!?」

白い帽子を被った男が手を差しのべていた。どうやら、ビルから出てきた男とぶつかったらしい。

「すみません」

男の手を掴み、立ち上がる。

「......」

男はなぜか私の後ろを見ていた。さっきまで感じていた嫌な予感というのは......

「どうかしましたか?」

「いや......ガードレールに思いっきり頭ぶつけていたもんだから......」

やっぱり......後ろにはガードレールがあった。

「大丈夫です。よく石頭って言われますんで」

「そうなんすか? うっ......」

白帽子の男が急に腹を押さえた。

「下痢ですか?」

「仕方ねえ、隣のコンビニでトイレ借りるか......」

そう言って男はビル隣のコンビニに駆け込んで行った。白い帽子を落として......


 ......


 帽子を拾った後、ティッシュを取りだし、ガードレールに付着したを拭き取る......これは私の血液。




 私は"ホシミ ギンホ"。異星人の遺伝子から生まれた、地球人と異星人のハーフ......"ヒューメイリアン"だ。




ざわざわ......


 周りが急に騒がしくなった。それも、私のことではない。周りの人々が空を見上げている。


 嫌な予感はこのことだったのか。空を何かが横切り、そして発光した。




TO BE CONTINUED

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