第51詩 冷たい雫

 冷たい言葉は 中身が冷たくなくても心を抉る

 冷たい声は 温かかったはずの心を容赦なく傷つける

 わたしが悪いってわかってる だけど そんな声でそんな言葉を言わないで


 涙が溢れそうになって グッと堪える

 大丈夫って言い聞かせる 密かに深呼吸をして冷静に

 丁寧な言葉遣いで 落ち着いて返せたかな


 泣いてはいけない 女だからと蔑まれたくないから

 泣いてはいけない 泣くのはもう武器ではないから

 泣いてはいけない 泣いたら ダメなんだ


 冷たい雫は積もり積もって わたしの心を侵していく

 静かに忍び寄り わたしを冷たく沈めていく

 どうせどうにもならないのだから

 諦めはいつしか おりとなって溜まる


 失くしてしまった何か 大切だったはずのもの

 泣きたくても泣けないわたしは 全てを胸に抱え込む

 誰にも言えない わたしの雫


 口に出すのは怖い 何度やっても心が震えて言葉にならない

 否定されて来た 積み重ねが重い


 自分を認める素直な気持ち 自分を好きになる気持ち

 自分を幸せに出来るのは自分だけなんだよ そう言ったきみはきっと正しい


 でも 泣けないんだ 笑えないんだ

 本当の意味で 笑えないんだ


 いつも貼り付けた笑みは 何処か乾いている

 涙を呑み込んで 深呼吸 自分を殺すための手段


 誰かにすがりついて泣きたくて

 出来なくて 独り ぬいぐるみに顔を埋めた


 せめて 独りで泣かせてください

 心に蓋をして 全部を閉じ込めるから

 あたたかなものを諦めるから


 どうか


 どうか―――愛して下さい

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