第一章 11話 ターダノは視野の成長の訓練をするそうです。

父と母がターダノに驚かされた次の日、ターダノは父ダノンゾルデと魔王城へと入った。

魔王城内は昨日と同じくピンクに染まっていたが、外へ抜ける扉を出ると、大きな訓練場となっていた。

その訓練場では多くの魔族がさまざまな技や魔法を使いながら、訓練をしており、その中で、一際目立つ魔族の存在を2つ発見した。

その魔族はとても大きな体躯をしているにもかかわらず、その他の魔族を寄せ付けないスピードとパワーを持っていた。

そのスピードはターダノの目で見ると一瞬一瞬は止まっているように感じられるも、瞬きをした次の瞬間には別の場所で他の相手を吹き飛ばしていた。

また、もう一人の魔族ははっきり言って全く凄さを感じなかった。

しかし、その魔族はその場から一歩も歩いておらず、周りの魔族たちが明らかにその存在から避けているかのように、全く意識をされず見向きもされず、なんとなく、寂しそうに感じたほどだった。


「ターダノ、どうだ?この訓練を見て思うことはないか?」


「えっと・・・そもそも初めて訓練を見たので、「凄いなぁ」という感想ですね。

ただ、魔族の方の中で2人ほど異質な方がいると思いました!」


「そうかそうか!ターダノも見る目があるなぁ!

ただ、二人??うーむ、あと一人はどのもののことを指しているのかはわからんが、この中で突出している者の事であろう。

デミ!我の前へ来い!」


そうダノンゾルデが発言した直後、暴風が巻き上がり、先程明らかに突出した能力を持っていると感じた魔族の一人がその場に立っていた。


(この魔族がデミさんというのか、覚えておこう)


「ダノンゾルデ様、デミ参上いたしました!」


「おう、デミ、すまんな、訓練中に呼んでしまって」


「いえいえ、ダノンゾルデ様から呼ばれた瞬間、他の訓練している者たちに呼ばれたことを伝え、他のものと訓練するように伝えたので問題ありません。」


「そうか、それは良かった!

呼んだのは他でもない。次期魔王四天王候補のターダノとの面識を作ろうと思ったのが一点。

また、私と模擬試合をする相手として選んだのが、もう一点だ。」


「はは!まさかダノンゾルデ様と一対一での模擬試合であるのであれば、私の力ははっきり言って全く及ばないでしょう。

むしろ1分持つのかどうかすら怪しいと思うのですが・・・」


「いや、問題ない。

このターダノはまだそもそも初戦を経験しておらず、私とデミの模擬試合を観ることによってその速さを観ることになれることを目的としている。

そもそも、まだ試合どころか戦いの経験も積んでおらんのでな・・・ターダノ自身の経験は今後積んでいくとして、まずは視野の成長をさせようと考えている。」


「ダノンゾルデ様、いやはや、流石です!

ターダノ様は幸せだ!

ただ、一点気になることがございますが、お聞きしてもよろしいでしょうか?」


「良い、申せ」


「ターダノ様は私とダノンゾルデ様の試合をまず、【観る】ことはできるのでしょうか?

そもそも、視野を鍛えるというのはとても良いと考えますが、私達を観ることができないということであれば、そもそも視野の成長には繋がらないと考えますが、いかがでしょうか?」


「デミ、とても良い視点を持っておるな!しかし、それは問題がないのだ。

ターダノは今行われている魔族同士の訓練の中で「明らかに異質な者がいる」と言ったのだ。

という事は、すでに観ることが出来る準備段階にいると私は考えている。

また、全体を見た上で異質という言葉を使っていた!

だからこそ、視座もかなりの成長を期待できると私は思っている。

少し親バカではあるがな」


「いえいえ、親バカなどととんでもない!

そのようであれば、問題ありません。

全力でターダノ様の成長へのお付き合いをいたしたいと思います。」


「デミよ、感謝を」


「いえいえ、私も模擬試合の中で成長させていただこうと思いますので!」


「という事だ、ターダノ、これから私が全力でデミの相手をする。

デミには、もし死に近しい状態になった際には回復できるものを100ほど渡す。

その間にデミまたは私の動きを観続けるのだ。そして、それが観ることが出来た場合。または蘇生薬が100尽きた場合には終了とする。」


「な!まさか、本気のダノンゾルデ様と・・・これは、神器を使用してもよろしいですかな?

いや、神器を使用しても30秒持つかどうかも怪しいものですが・・・」


「良いぞ、デミ。では私も久々に私も神器を使用させてもらおう!以前勇者との戦いの際に使ったきり使用した記憶も定かではないので鈍っているかもしれんがな!ははは!」


「ふふふ、その神器を観させていただいた事はありますが、まさか自身が身をもって味わうことになるとは・・・ははは・・・では足掻かせてもらいます」


(これは、本気で視覚の成長のチャンス!!頑張らないと!)


「お父さん、デミさんよろしくお願いいたします。」


「おう!ちゃんと観とけよ〜」


「はい、ターダノ様」


遂に父ダノンゾルデと魔王第三大隊のデミとの模擬試合が始まるのであった。

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