第一章 2話 なんか、親が人間じゃない

ターダノとして生を受け、約1ヶ月が経った頃、ほとんど見えなかった目が、急に見えるようになった。

その急さは本当にびっくりするほどで、まるでほとんど目が見えない状態の人に急に度があった眼鏡をかけたかのごとく、視点が定まった。


(あれ?なんか、抱きかかえてくれてる人お母さんだよな??人間じゃなくね!?)


そんなことを思いながら、ターダノはいつも通りお母さんを呼ぶためにオギャーと喋ろうとしたところ、


「お母さん・・・」


と口から声が出たことに僕は驚きを隠せなかった。


「あなた!!この子お母さんと呼んでくれたわ!!」


「そうか、もうターダノも産まれてから1ヶ月経ったのか・・・

子供は大きくなるのが本当に早いなぁ・・・」


「そうね!もう1ヶ月も経ったのよ〜もう話せるようになったってことは、もうそろそろ立って歩けるようになる頃ね〜

あと1ヶ月くらいかしら?」


そんな前世が人間だったタダノにとって訳の分からない話をされているため頭が混乱し、整理がつかない状態であったため、話せるのを良いことに、母親に質問をしてみることにした。


「お母さん・・・あの・・・」


「どうしたの?ターダノ」


とても素敵な笑顔を見せながら母親は返事をした。


「なんか、驚きすぎて何から話して良いのかわからないんだけど、1ヶ月になると話せるようになるのが当たり前なの?」


「そうよ、ターダノ。

私たち魔族、特に鬼人の父とサキュバスの母を持つあなたは本当に素敵な特性をもっているでしょうから、鬼人として瞬時に言語を理解し、相手に発言で影響を与える特性は受け継いでいます。

だから相手の言語を理解する力があるのよ。だからすぐに話せたでしょう?他の魔族の言葉も聞くだけでなんとなくわかってくると思うわよ〜」


(母親と父親が魔族!?人間じゃないのかよ!

というか、あまり気にしてなかったけど、赤ちゃんの頃から親が何を言っているのか理解できるってのは、やっぱり異常だよな。

親がたまたま言葉を理解できる魔族だったことに本当に感謝だわ。

てか、お母さん人間じゃないけど人間でも通用するくらい美人すぎ!お父さんもかっこよすぎ!)


「そうだったんだね!僕、お母さんとお父さんが話す言葉がすぐ理解できて、本当に嬉しいよ!」


「そんなこと言ってくれるなんてお母さん本当に嬉しいわ!ターダノ!」


「ターダノ!お父さんも嬉しいぞ!!」


母親から抱きしめられる。そのあと、さらに父親から抱きしめられて、少し苦しかった。


「お母さん、お父さん、苦しいよ〜」


「ご、ごめんなさい。はしゃいじゃったわ。」


「俺もだ!ははっ!やっぱり子供と話ができるのは嬉しいなぁ」


そんなことを言いながら、父親は部屋から出ていき、母親だけが部屋に残った。


「ターダノ、あなたはこれから大変で辛いことがたくさん待っているかも知れません。でも、あなたなら大丈夫。お母さんとお父さんの子供なんだから。」


そんな言葉を聞きながら、私ははじめて話したことによるものや、自分の現状を頑張って理解しようとしたことに疲れたのか、目を閉じて、眠ってしまった。


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