第23話 意外な再会
「こんな感じで凛は自殺しました。それから担任は退任になったりしましたが、まあそれはいいでしょう」
「そ、そうか。そんなことがあったのか…」
担任がなぜか若干引いた目でこちらを見ている。松田は松田でなにか考え込んでるようだ。
「それで、次に長谷川美咲のことですが…
「い、いや!もうよくわかった!話してくれてありがとな赤坂!とりあえずお前が無実だってことは必ずクラスのやつに伝えるから、な!」
「は、はあ」
いきなり早口で捲し立てられ驚いた。ただ、先生は悪くない人なんだろうな。
「でも、今さら俺が無実だったと言っても効果はないでしょう。一度ついた火はもう燃え広がって簡単には消せませんよ」
「…」
「犯人の心当たりが全くない現状、見つけるのは困難です。誰かが俺を犯人に仕立て上げたかったのか、ただの見間違いなのか、これもはっきりさせたい。なのでタレ込みをした人を教えてくれませんか?」
「い、いや…だが本人は秘密で…と」
「なんで秘密にする必要があるんです?なんか裏があるからでしょう?」
「うーむ、確かに」
担任は少し悩んだ後、教えてくれた。
「…タレ込みをしたのは、吉崎だよ」
…はい?
職員室を出て、松田と別れて廊下を歩く。
それにしてもなんで吉崎さんが?フラれた当て付け?それともただの見間違い?俺に恨みでもあったのだろうか…?
「とりあえず吉崎さん本人に聞かない事には何もわからない、か」
教室に戻ると吉崎さんの荷物はない。もう帰っているようだ。聞くのは明日にしようと思い荷物を持ち帰ろうとしたその時
「航平!いるか!」
松田が血相変えて走ってきたのだ。
「なんだよいきなり」
「はぁ、はぁ、今吉崎さんをたまたま見かけてな…それで、咄嗟に隠れたら話し声が聞こえてきてな」
「盗み聞きか?相変わらずだな」
「いや!そもそも盗み聞きなんて趣味じゃねえよ!ってそんなこと言ってる場合じゃないんだよ!吉崎さんの話し相手が、神崎だったんだよ!」
…そうか、そういうことか!
「ってことはよ、吉崎さんと神崎は裏で繋がってて…」
「そう、だろうな…」
「どうすんだよ。吉崎さんを問い詰めるか?」
思わず頷きそうになったが、今問い詰めてもはぐらかされ警戒されるだけだろう。そうなると、2人が合流する機会は…
「体育大会。ここで2人が合流したところに突撃するぞ」
「分かった。俺らは吉崎さんを護衛せず、尾ければいいんだな?」
「ああ、お前得意のストーカー行為だ」
「いや、俺はストーカーなんてしたことないからな!?」
冗談を交えつつ久しぶりに松田と下校する。ついでに体育大会の打ち合わせでもしておくか。
「俺は体育大会で茜を探す。松田達は吉崎さんを頼む」
「航平1人だと危なくないか?」
「いや、大丈夫だろう、後を尾けるだけだしな」
「分かった。俺らはできるだけ早く吉崎さんを見つけて航平に連絡。俺が吉崎さんを尾ければいいか?」
「頼む。残りの連中は茜探しに回してくれ」
「分かった。それで行くか」
「おやおやー?それはおすすめ出来ませんねー」
と、いきなり背後から聞いたことがあるような声がしたと思うと、いきなり抱きついてきたのだ。
「うおっ!誰だ!航平に抱きつくな!」
「そんな警戒しないでくださいよー、僕と先輩の仲ですから、これくらい当たり前ですよー。それとも松田さんは男色なんですか?」
「俺はホモじゃねー!」
松田がうるさいが、なぜここにいる?
「その喋り方、千歳か」
「ええ、あなたの後輩、川澄千歳ですよー」
「なぜここに、お前が?」
「酷いなー、せっかくの再会ですよー?もっと喜んでくれていいんじゃないですか?単に、来学期から先輩の学校に入学するので引っ越してきただけですよー」
茜に加えて千歳まで?これから何か起こるのか?
「おいおい川澄までもかよ、一体全体どうなってんだよ」
「僕までも、とはどういうことです?」
「神崎も来てるんだよ、こっちに」
「おやおや?茜さんもですか。って、そんなこともう知ってますよー。やれやれです」
「それで、千歳、なんでオススメできないんだ?」
「だって、茜さんと吉崎さんが体育大会の日に合流するとは限らないじゃないですかー。僕ならケータイで連絡取り合いますね」
確かに。当日合流する保証はどこにもない。ただ、だからといって放課後町中を見て回るのは到底不可能だ。
「確かに千歳の言うことは一理ある。ただ、それならどうするんだ?それに、尾行すれば万が一合流した時は捕まえられるし、何もしないよりマシじゃないのか?」
「そうですねぇ、僕としてはそもそも茜さんと吉崎さんを警戒するだけ無駄と言いたいんですけど…おっと、まあ確かに尾行自体を否定はしません。ですが茜さんを尾行するのは先輩や松田さんでは良くないと思いますよー」
「そうだな。航平1人を尾行させるのは危険か。それなら吉崎さんの尾行を航平と小山田が、他を神崎探しに回した方がいいってことか」
あれ?なんで俺は茜を1人で尾行することが当たり前になっているんだ?よく考えたらおかしいぞ。
「松田さんにしてはお早い理解ですねー。普段は馬鹿なのにこういう時だけ理解早いのなんでですかねー。でも小山田さんとは…どこまでもナンセンスですよねー」
「んだとっ!」
「おやおや、昔みたいにまた僕に投げ飛ばされたいのですかー?」
「っ…チッ!こいつやっぱり嫌いだ!」
千歳は昔突っかかって行った松田を投げ飛ばした事がある。細い腕のどこに年上男子を投げ飛ばす力があるのか、謎だ。
「ん?おや?松田さん…ほー…」
「な、なんだよいきなり顔覗き込んできやがって…」
千歳は松田を揶揄ってると思いきや、何かに気付いたのか、松田の顔を覗き込んだ。
「ふむふむ。そういうことでしたかー。松田さんも…へぇー」
「な、なんなんだよ。近いっての!」
「いえいえ、失礼しました。僕はあなたのことなんて異性としての興味はないので勘違いさせたなら謝りますね。ごめんなさい」
「………」
「おやおや?ショックを与えてしまいましたか?先輩、こういう時どうするべきなんでしょう?」
いや、ここで俺に振って来られても…とりあえず
「松田、千歳のこれはいつも通りだろ。気にすんな。あと、ドンマイ」
「あ、ああ…それじゃ俺はこっちだから、じゃあな」
松田と別れ、左の道を歩く。千歳もついてきている。
「なあ千歳、お前、家どこなんだ?暗くなってくるし、送るぞ?」
「家ですか?お気になさらず。これからしばらく近く先輩の家に厄介になるつもりですので」
…は?
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