第17話 チ○コだそう
【水希ver】
『この中に、ワタシの仲間がいます』
ポコさん(仮)が確かにそう言った。いや、言った、はおかしいかな?頭ん中に語りかけてきた訳だから。
ってそれは置いといて、仲間って事はポコさん(仮)みたいなヤツがいるって事だよね?
(ねえそれって、喋るチ○コの人がいるって事?)
一応、ポコさん(仮)に呼び掛けるように明確に言葉をイメージしてみた。
普段考える事とポコさん(仮)に伝える事は分けとかないとね。
今、この部屋にいる男は僕以外には、副会長の湯河さん、まだ一言も喋ってない体育会系の大きな人、それとキタローくんだけだ。
『いえ、チ○コとは限らないです。いろんな部分に寄生してると思うんで。勿論女性もありです。ただ今の所、まだ潜んでるだけか、覚醒してるかはわかんないんですね』
ええ、じゃあこの部屋全員候補じゃん?
女性は植原会長に、取り巻きの三人に、小野さん、平山さんの6人だし。
(誰か?ってのはわかんないんの?)
『気配はビンビン感じるんですけど、特定は無理ですね』
そっか、この部屋入った時に感じた違和感、それだったのかも。
(でも、キタローくんや小野さん、平山さんは今まで普通に話たりしてたから違うよね?)
『いやわかんないですよ?水希くんの刺激受けて、突然覚醒するのもあり得ますね。実際、ワタシも突然覚醒しましたし』
(え?僕が何か出してんの?ポコさん(仮)じゃなくて?)
『はっきりはしませんけど、水希くんが特殊な人間なのは事実ですね。恐らくワタシもその何かに惹かれて水希くんに寄生したんじゃないかと思います』
(あのさあ、僕って結局女の子なの?)
『そうですね。ワタシが寄生しなかったら女の子として生まれてましたよ』
(ええっそれってかあさんの胎内で寄生されたって事?)
『おそらくそうでしょう。その時はワタシも微生物みたいなもんだったんでしょうね』
うわ〜、衝撃事実発覚なんだけど。僕ってホントは女の子だったんだ?
ねえちゃんが聞いたら喜びそーだなぁ。って今この場で言われてもなぁ。
うーん、まあ今はコレは置いといて、今は寄生されてるのが誰かを探す方が先だよね。
「……ねぇ、水希くん、どうかした?」
あ、気がついたら小野さんに顔覗き込まれてたよ。って、相変わらず小野さん顔近くまで寄せて来るなぁ。顔と顔、当たりそうなんだけど。その向こうで平山さんがコッチガン見してるし。
「あ、ゴメン。ちょっと考え事してたw」取り敢えず誤魔化しとこ。
寄生されてる人探しながら、盗難犯人も探さないとだねぇ。何かえらい事になってきたなぁ。
「どこまで話、進んでたっけ?」
小野さんに小声で尋ねた。
「入口からは鍵がないと無理ってトコまで」
と、小野さんが耳打ちしてくれた。教えてくれるのはいいんだけどさ、この人わざと息が耳に掛かるようにしてきてない?なんか背中の辺りがゾクゾクってするんだけど。
「ちょっとそこ、何イチャイチャしてるんです(怒)?」
ほら、会長に怒られちゃったよ。
その時、今まで借りてきた猫みたいに大人しかった平山さんが、おずおずと手を上げた。
「あの〜、あたし思ったんですけど……」
「ん、何かな?」副会長が優しく聞く。なんかこの人の方が人間できてる気がするんだけど。会長は睨むように見てくるし。
「廊下側じゃなくて、外側の上の方に天窓ありましたよね?ロッカーのすぐ上だから見えにくいですけど。あの天窓確か、換気の為に昼間はたいてい開けてたと思うんです。あそこスリムな人ならギリ通れますよね?」
へえ、そーなのか。平山さんナイスじゃない?
「あの窓は当然私達も検討しました。でも、外から登るのは不可能という結論です。こちらの彼に確認してもらいましたので」
会長はそう言うと、体育会系の大きい人見た。
「はい、確認してきましたが、外から登れる感じはなかったですね。掴んで登れるような突起物は全くなかったので。指が掛かる程度の目地すらなかったです」
と、体育会系の人が初めて喋った。
「そーそー私達も見ましたけど、ホントツルツルでしたよ?」
「あれじゃハシゴでも掛けないと無理ですね」
「ボルダリングの達人でも無理ですよ〜。最凶死刑囚ならともかく」
かしましい三人組も口々に無理を強調してる。
「シコルスキークラスじゃないと無理かぁ……」
って僕が思わず呟いたら、三人組の最凶死刑囚発言した人が反応した。
「なに、君、バキラー?」
なんだよ、バキラーって?初めて聞いたよ。
「それって刃牙ファンの事?」
「そーだよ。あたしが命名したの」って言いながらニマッて笑う彼女。
生徒会ってゆーより、格闘技とかやってそうだなぁこの人。
「ハイハイ、無駄口は止めようね?」
湯河さんがコッソリ会長の方を指差しながら、僕らをたしなめた。
あ、会長めっちゃピリピリしてるよ。
「すいませーん」ってバキラーの人が謝ってる。
「あの、さっきの話だと、外からハシゴ掛けたら登れるんですよね?」
と、平山さんが言う。
「それはそうですが、流石にハシゴ持ってウロウロしてたら怪しいでしょ?あの辺りは校舎の裏手でさぼど目立たないとはいえ、定期的に事務員さんが見回ってますからね。ハシゴなんか掛けてたら一発でバレます」
と、会長が容赦なく言い放ったよ。ホントこの人キツいよね。
「じゃあ、逆に屋上からロープ垂らしたら?」
「うーん、ハシゴよりは目立たないよね。でもそれだとわざわざ屋上に行かないとだし……ん?」
副会長がそこまで言って何か思い当たったみたい。
「そーいえば、そのあたりの時間に屋上にいた人がいるよね?」
みんなの視線がある人に集中した。
「んん?誰だよ?……俺かっ⁉」
他人事みたいに聞いてたキタローくんがびっくりしたように叫んだ。って、今までずっとアンタの話してたんだけどね。
「やっぱり、あなたしかいないじゃないの?」
あらら、会長が鬼の首取ったみたいな顔で詰め寄ってるよ。
「あの〜キタローくん、懸垂1回もできないですよ?」
って僕がフォローしたら
「バカヤローなめんな、1回はできるわっ」
って、それあんまり変わらないんだけど。
「ね?キタローくんにそんなの無理ですって」
って言ったら、何かみんな頭抱えだしたよ。
「オイオイ、結局俺はどーなんだよ?まだ犯人扱いなんか?」
なんか他人事みたいに成り行き見てたキタローくんがそう声を荒げた。
「あなたの疑いが晴れた訳ではありません。やってないという明確な証拠がないですから」と相変わらずキツい会長。
「やった証拠も、ねぇだろーがよ?」
そのキタローくんの言葉に思わず黙る生徒会の面々。最初は状況証拠だけで完全にキタローくんが犯人だと思ってたようだけど、ここにきて確信が持てなくなってきたみたい。
「要は真犯人見つけたらいいんじゃないですかね?」
僕がそう言うとハッとしたように皆に注目されちゃったよ。
「……正直、その発想はなかったな。我々は彼が犯人だと思い込んでたから」
副会長がそう本音をぶちまけた。いやいやどんだけ疑われてたんだよ、キタローくん。まあ、気持ちはわかるけどさ。
「そんな真犯人なんているのかしら?」って植原会長はまだ疑いを解いてない感じ。
「とにかく僕等で見つけてみせます。それでいいですか?」
僕は生徒会の人達をグルッと見渡しながらそう宣言した。
◇
結局、生徒会側と僕等側で改めて調査するって事で話し合いは落ち着いた。
生徒会を出たとたん、キタローくんが僕の首をロックして髪の毛をワシワシしてきた。
「ちょっ、なにすんのさ?キタローくん」
「おめーさっきはよくも散々バカだの何だの言ってくれたな?」
「えっそんな、酷いです!上城くん、すっごく頑張って先輩の事かばってたのに」
平山さんがキタローくんに激しく抗議してくれた。
そんな平山さんの手を引っ張る小野さんがちらりと見えた。
「たぶん先輩もわかってるよ。あれ、照れ隠しにじゃれてるだけだと思う」
小野さんが平山さんにそう言ってる。流石小野さん、良くわかってるよね。
今僕の首をロックしてるのも、髪の毛をワシワシしてるのも、全然力なんて入ってないもの。
「ちっ、何お前?いきなりモテてやがんな?どっちが彼女だ?」
キタローくんが小声で僕に聞いてきた。
「いや、単なる友達だから」
僕がそう言うと、ふーんって顔してる。
「コレやるわ。じゃあな、オツカレ、水希とお友達」
何かポケットから紙を出して僕に握らせると、キタローくんは去っていった。
「おつかれ、小野さん、平山さん、ありがとうね」
「上城くん、小野さん、おつかれ様。あたし何にもできなくて……」
「そんな事ないわ、平山さん。鋭い意見出してたじゃない」
と、小野さんがフォローする。
「そうだね。小野さんも平山さんもいてくれて良かったよ」
「ところで水希くん、先輩から何貰ったの?」
ってまた小野さんが超接近して来る。
「さあ、なんだろ?…………うぇ、ラブホのクーポンじゃん」
全く、何考えてんだあの人?中学生にこんなの渡してどうやって使えってのさ?
「へえ、こんなのあるんだね。ねぇ、使ってみる?」
って小野さんが僕の肩にアゴ乗っけてそう言ってくるし。
「ふ、ふ、二人ってそんな関係だったの⁉」
ああ、そりゃ勘違いするよね。
「いや、これいつもの小野さんジョークだから」
平山さんが信じられないって顔してるけど、ホントなんだよねぇ、困った事に。
「でもさ、さっき先輩、君の事、水希って呼んでたよ?」
って小野さんがニコニコしながら言う。ああ、そうだね。初めてではないけど、今まで大抵『弟』って呼ばれてたもんね。
「やっぱり認めたんだよ、君の事」
そうなのかな?でも早く真犯人捕まえないとね。
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