第15話 クリ○リスないのシワ




 【水希ver】



 

 小野さんと中庭に来たけどさ、ここってぐるり建物だからどこからでも見下ろせるんだよね。実際、さっきからなんかチラチラ視線を感じるんだけど。

 たぶん、小野さんと一緒だから注目度高いんだろうなぁ。

 

「小野さん、ここでいい?結構丸見えだけど」

 って一応小野さんに聞いたら

 

「いいよ、気にしないし」

 って言われた。小野さんって流石に注目され慣れてんだね。


 空いてるベンチに座って、チャッチャとお弁当やらお茶やら用意し始めてる。


「あれ、昨日よりだいぶ大きいね?」

 昨日のお弁当は女の子っぽい、小ぢんまりしたお弁当箱だったけど、今日のは一回り大きくて、二段になってる。


「調子乗って作り過ぎたみたい。食べれるだけ食べて?」

 これ一人じゃ絶対無理な量だよね?僕が声掛けるの想定してたって事かな?

 料理作るの好きって言ってたから、都合よかったのかもね。

 ちょっと図々しいかなって思ってたけど、遠慮なく貰おうかな。


「じゃ、頂きます」

 

 一口大のおにぎりも、唐揚げも、どれも最高に美味しい。バクバク食べてると、小野さんがお茶をコップに入れてくれた。


「あ、水筒大きいヤツにしたの?」

 昨日はもっとコンパクトな直のみの水筒だったよね。


「直の方が良かった?」

 小野さんがまた妖しく笑いながら、意味深な事言ってくる。まあ、直だと間接キスになるもんね。


「なんかさ、結構からかってくるよね?小野さんって」


「そうかな。嫌?」

 上目遣いでそう言う小野さん。


「全然嫌じゃないよ。クラスの皆、小野さんのそーゆートコ知らないからびっくりすると思うよ?」


「ああ、でも私人見知りするから……他の人だとこんな風に話せないよ」


 皆、小野さんの事、孤高の人って思ってる感じだけど単に人見知りだったのか。じゃあいきなりグループとか難しいかな?少しづつ皆と仲良くなるよーに持って行った方がいいかもね。



「あ、あのゴメン、食事中に」


 突然、僕らの目の前に女の子が来てそう言った。って、隣の席の平山さんじゃん?


「どーしたの、平山さん?あ、良かったら一緒に食べる?」

 僕は横の小野さんの顔を見て、問題無さそうなのを確認してから平山さんに言った。

 平山さんが目を大きく見開いて、ソワソワし出した。


「えっ、いいの⁉すごっ、嬉しいって、あっ!ダメだ」


 なんか一人で興奮してる平山さん。


「ゴメン、じゃなくて、えっと、そう、あの人。金髪の」


 なんか、しどろもどろになって良くわかんないけど、金髪って言ったらあの人の事だよね?


「キタローくんがどうかしたの?」


「ほら、最近体操着荒らしってあったよね?あの人が体操着荒らしの犯人だったみたいで。上城くん、よく付き纏われてたから、報告しとこうかなーって」


「えっキタローくんが?」


 そー言えばそんなの問題になってたっけ。つか、すっごくびっくりだよ。


「それで今、生徒会に呼び出されるらしいよ?」


 キタローくんがかあ。これはちょっとほっとけないなあ。だってあの人、そんな事する訳ないもん。でもあの風体じゃ、誰も信じないだろうなぁ。


「ゴメン、小野さん、僕ちょっと見てくるよ」


「うん、いいよ。昨日のあのモヒカンの人でしょ?」

 小野さんはにっこり笑ってそう言ってくれた。


「うん、あ、平山さん、良かったら僕の代わりにお弁当どうぞ」

 僕は何故か固まってる平山さんにそう声掛ける。お弁当余っても困るからいいよね?小野さんも頷いてるし。

 あれ、平山さんが余計に固まった気がするけど?


 まあいいや、今は生徒会室に行かないと。







 【キタローver】



  全く、なんなんだよ?突然こんな生徒会室だかに連れてこられてよ?ゴーインにだぞ?ゴーインに。そんで俺だけ真ん中に立たせやがって、コイツ等エラソーに座ってるしよ?なんかこんな風景TVで見た事あんぞ?裁判のシーンとか、こんな感じだったよな?


「3年2組久里亀太郎くり かめたろう。何で呼ばれたかわかってるわね?」

 

 一番奥に座って、一番エラソーな女が俺にそう言ってきた。つか、フルネームで呼ぶんじゃねーよ。俺はキタローで通ってんだよ。葉月さん命名の由緒正しいヤツなんだよ。ガキん時に「お前は今日から亀頭きとうのキタローな?」って無理やりつけられたんだよ。ガキの葉月さんがなんで亀頭とか知ってたのかは謎なんだよ。何年か後に聞いたらぶん殴られたからよ。

 つかコイツ、確か生徒会長だったか?名前覚えてねーけど、黒縁メガネのいかにもアタマ固そーな女だわ。


「ああん?わかんねーよ?」

 生徒かいちょーを睨みつけながら言ってやったけど、コイツ全然動じてねーや。


「三時限目、どこにいたか言ってみなさい」


 三時限目だぁ?うーん、どこだっけ?


「あんまし覚えてねぇけど、屋上で寝て起きたのがそれくらいだったかな?その後教室に行った」


「つまり、三時限目の授業中に屋上から1階の教室まで行った訳ね?」


「そーだよ、何か悪いかよ?」

 まぁ、授業サボってんのは悪いけど、それいつもの事だしな。


「当然、2階の女子更衣室の前も通ったわよね?」


「女子更衣室?どこだか知らんけどその間にあるんなら通ったんじゃねーの?」

 

 ん?なんかかいちょーがニンマリしてやがるな?まわりの奴らも、やっぱり、とか訳わからん事言ってるし、なんなんだよ?


「あなたが通った時、更衣室の扉は開いていたんでしょ?いえ正確に言えば、ちゃんと閉まってなかった。あの扉は閉まったら自動で鍵が掛かるもの」


「はぁ?何が言いてえんだ?全然わかんねぇ」


「じゃあはっきり言ってあげるわ。あなた体操着盗んだでしょ?それも今日だけじゃなくて、過去にも数回ね」

 かいちょーが俺を指差して訳わかんねー事言ってやんの。つか人を指差すんじゃねぇよ。かいちょーなんだから黙って空を行けよ。


「バカか?、んなもん盗んでどーすんだよ?」


「あら馬鹿に馬鹿とは言われたくないわね?盗んだ体操着をどう使うかなんて、けがらわしくて考えたくもないわ」

 このクソかいちょー、ロコツにしかめっ面しやがる。


「どうせ、被ったり匂い嗅いだりしたんじゃないの?」

「うわっ、最低ー!」

「マジ、○んで欲しい」

 取り巻きの書記だかなんだかの女達までそう言って騒ぎ出した。


「まあまあ、みんな落ち着こうよ。彼の言い分も聞かないと」


 かいちょーの横に座ってる優男みたいなのが、立ち上がって女共をなだめた。なんだ?このうっぜーイケメン野郎は?ああ、コイツが副かいちょーか。

ヤローのくせに女のかいちょーの尻に敷かれてる情けねえヤツだな。


「久里君、僕等は処罰とか望まない。体操着を返してくれて、もう二度とやらないと約束してくれたら今回だけは不問にしよう。どうだい?」


 なんだ、それ?周りの連中は甘いだなんだって喚いてやがるし。


「返すも何も、ハナから取ってねぇっつーの」


「ちょっとあなたね、せっかく湯河ゆかわ君が救済案を出してくれてるのに、まだシラを切る気なの?後で後悔するわよ?」


 コイツ等、マジで俺の言う事なんか聞く気ないな?ちっきしょー、どう言やわかるんだよ?


 そん時、コンコンとノックの音がして、いきなり誰か入って来た。

 おっ?あれ弟じゃん?何しに来たんだ?


「失礼しまーす。あ、いたいた」

 水希がコッチ見て笑ってやがる。何だこいつ、相変わらずとぼけたヤツだな。つか良くこんな雰囲気悪いトコに普通に入って来れるよな?ヤベェ、俺まで笑っちまうわ。


「何ですか、あなた?部外者は出て行きなさい!」

 かいちょーがヒステリックに叫んでやがる。ああ?なんだコイツ大した事ねぇな?こんな時は興奮して我を忘れたヤツが負けだろーが?


「えーと、僕その人の身内なんで。部外者でもないかと」


 あ、コイツ、しれっと嘘言ってやがる。何気に度胸あるヤツだな?まあ、あの葉月さんの弟だしな。


「身内?家族ではないんでしょ?」


「あ、家族みたいなもんですね。彼が悪さしたら締める側の人間なんです。だからなんかやらかしたんなら聞いておかないと」

  ああん?何言ってんだよ。つか葉月さんにいつも締められてるから、あながち間違いでもねぇけどよ。


「いいじゃないですか、会長。久里君だけだと話が進まないし、彼にも聞いてもらいましょう」

 優男の副かいちょーがそう言ってくれたぜ。尻に敷かれてる割にはなかなかいい事言うじゃねぇか。


「……わかりました。では、あなたにも聞いてもらいましょう」

 渋々そう言うかいちょーに、水希のヤロー、


「あの僕だけだと頼りないんで、あと二人助っ人が来てるんですけど、入ってもいいですか?」


 ってニコニコしながら言いやがった。


 かいちょーがこめかみの辺りピクピクさせながら


「ご勝手にどうぞ!」


 って叫んんだのがちょっと痛快だったぜ。







  【友里奈ver】




 どどど、どーしよ!

 上城くん、行っちゃったから小野さんと二人きりになっちゃったよ。

 そりゃ、いずれは小野さんと二人でいろいろできたらいいなって思ってたけどさ、こんなイキナリはないよね?だって、心の準備が全然出来てないもん。


「あの、平山さん?」

 きゃーっ、固まってたら小野さんに初めて名前呼ばれちゃった!


「は、はいっ」

 うわっ、すっごいテンパって裏声でちゃった。恥ずかしいっ。


「これ、良かったらどれでも食べてね?お茶はここにあるから……」


 そう言いながら小野さん、立ち上がってる。え?どっかいっちゃうの?


「平山さんはゆっくりしてて?また戻って来ると思うから」


「小野さん……上城くんの所に行くの?」


「うん、ちょっと心配だから」

 そう言って小野さんは恥ずかしそうに笑った。ああこの人、こんなに優しく笑うんだ……。


「アタシも行く」

 気がついたらアタシ、宣言しちゃってた。


「えっ?」


「小野さん、ざっと片付けちゃお?早く追い掛けないと」


 あれ?アタシ何言ってんだろ?







  ◇



 ひぇーっ、どーしてこーなっちゃったのっ⁉


 今アタシ、何故か小野さんと上城くんと一緒に生徒会室に来てる。

 さっき大急ぎでお弁当片して、上城くん追っかけて来たら丁度上城くん、中に入るトコで。びっくりしながら中の様子伺ってたら、アタシらも中に入れって言われちゃって←今ココ


 こんなトコ来たって、アタシ何もできないよーっ。

 せめてありのまま今見てる事を話すぜ?


 まず、一番奥のいかにも勉強できそーな眼鏡の女の人、あれが会長だよね?植原うえはら会長、だったっけ?すっごい怖そう、ってか既に怒ってるっぽい。

 その隣のイケメンが湯河ゆかわ副会長かな?落ち着いてて、すごく優しそうな雰囲気で、アレは絶対モテるんだろーなぁ。

 あとは体育会系の大っきい男の人1人と、グチグチ言ってる地味っぼい女の子たちが3人。生徒会側はこれだけ。

 こちらの弁護側?は、相変わらずマイペースな上城くんに、大人しく座ってる小野さん、そして何故かいる場違いなアタシ。

 最後にかなりイライラしてる感じの被告?の久里先輩。





 さて、これからどんな事になっちゃうんだろ?



















 













 

 

 

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