第47話 結婚式


 ゴールランド王家が滅亡したことでゴールランド王国跡地をお父様が周辺国と話し合って分断した。

 そうしてお父様が獲得した領地がルーズベルト領とその周辺をいくつか。

 今回の事件は結果的には良いものとなった。


 それから1年の時が経ち、この1年間には様々なことが起きた。

 まず、わたしとお父様の関係についての発表が行われた。

 お父様はついでにわたしとアストが年齢制限を無視して結婚することも発表しただけでなく、王城で盛大に祝うとまで言った。


 次に新しく獲得した領地について。それはルーズベルト家を子爵家から公爵家に上げることで全てをルーズベルト領として統一させた。

 そして、いよいよ今日。結婚式が行われる。


「イシハラ、あなたは妻であるイシツカを生涯愛し、守り続けると誓いますか?」

「誓います」

「イシツカ、あなたは夫であるイシハラを生涯愛し、支え続けることを誓いますか?」

「誓います」

「では誓いのキスを━━━━━━」


 わたしの結婚式は午後。午前中は愛し合う二人が結ばれる所を見て、リアが以前着ていたウェディングドレスを着せられる予定で、午後は結婚式。終わり次第豪華な馬車に乗ってそのままアストの屋敷に向かうことになっている。

 お父様の計らいでお食事会などはまた後日となっている。


「フェノン様、準備が出来ました。こちらです」


 わたしはナタリーに車イスを押されて待機室に移動した。

 ナタリーはお母様の屋敷を離れてわたしに付いてきてくれるらしい。わたしも少し心細かったのでこれはとても有り難かった。


「フェノンも立派になっちゃって……アストくんのこと、ちゃんと支えてあげるのよ」

「うん、わかってます。


 ウェディングドレスを着せて貰ったわたしはお母様と会話をして時間を潰しているとお父様が来た。


「フェノン、行くぞ」

「うん、わかった。お母様、行ってきます」

「行ってらっしゃい……」


 わたしはお母様に見送られ、お父様と歩いて部屋を出る。

 一歩一歩、気をつけながら歩く。この日の為に今まで頑張ってリハビリを続けてきたんだから。

 そしてわたしとお父様は扉の前に立った。


「い、意外と緊張するんだな……」

「お父様が緊張してどうするの?」


 そして扉が開き、中に入るように言われてわたしとお父様は一歩ずつゆっくりと進んでアストの居る壇上へと向かう。

 クルミさんやクラスメイトたちも参加していて笑顔で祝福してくれた。

 いや、若干1名美紀ちゃんはハンカチを口に咥えて悔しそうにしてた。


「きゃっ!?」


 お父様から離れて壇上に上った時にバランスを崩して倒れそうになるがここはアストが格好良く支えてくれた。

 そして、アストから婚約指輪を嵌めて貰い、先ほど石塚石原ペアがやっていた誓いますをやり、アストとキスをした。

 それからお母様のスピーチやタテロールのスピーチが行われ、わたしはアストにしがみつきながら壇上を降りた。


「こちらです」


 わたしとアストはゆっくりと案内された方へと向かう。

 わたしの足が悪いのは既に公表済みなので急かすような人も居なかった。

 そして、外に繋がる扉を開いたら好きなタイミングでウェディングブーケを投げるように言われると、扉が開く。


「アスト……」

「ああ」

「「せーの!」」


 わたしとアストは一緒にブーケを投げた。そのタイミングに合わせてわたしはとても小さな宝石を作り出して空中に散らばせた。

 すると散らばった小さな宝石たちが晴天の空から光を吸収して、七色の光が王城を包みこんだ。


「フェノン、お前……」

「えへへ、いこっか?」


 わたしは笑って誤魔化す。

 わたしとアストはゆっくりと花道を歩き、奥に用意されている豪華な馬車へと乗り込んだ。

 乗り込む際にアストがわたしをお姫さま抱っこして人々がいる方に振り返ってお辞儀をしてから馬車に乗り込む。

 そして、馬車が出発して王城から離れて、わたしの新しい屋敷へと向かったのだった。

 こうしてわたしの結婚式は幕を閉じた。



「ナタリー! わたしのおやつ食べたでしょ!!」

「フェノン様、少しは成長してください」


 実は結婚してから変わったことはほとんど無く、いつも通りの日常を送ってたりする。


「まあ、食べたのは確かに私ですけど」

「……メイド長。ナタリーのおやつは1ヶ月抜きで」

「かしこまりました」

「ええっ!?」


 ナタリーは涙目でわたしに訴えてくるが、こういうのには遠慮なしだ。

 わたしのお菓子を食べた罪は重い。あと初めにリアを疑って謝らされたからナタリー、絶対に許さぬ。


「はい、アスト。あーん」

「あーん」

「フェノン様ぁ……」


 ナタリーのおやつをわたしとアストで食べる。ナタリーには毎回そこそこ良いお菓子が出てるので、なかなか美味しい。

 こうしてわたしとアストはナタリーのおやつを頬張って食べたのであった。


「こんなオチあんまりですよぉ……」


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