第38話 結界崩壊


「ここは……?」

「フェリナスちゃん!!」


 わたしが目を覚ますと目の前にはわたしの手を握ったエリーがいた。

 自分の身体を確認すると服がぶかぶかだったので、背も小さくなったままだ。


「私のお下がりでよかったら着替えあるけど……」

「ありがとエリー」


 わたしはエリーから服を受けとる。

 エリーの私服はザ・女の子。みたいな可愛らしい服だった。

 ボーイッシュな服ばかり着てたアホと袴ばかり着ていた頭のおかしい人とは大違い。

 やはりエリーだけはそっち側マトモのようだね。


「ねえフェリナスちゃん、この街どうなってるの?」


 わたしはエリーにこの街と周辺の事態を全て教えた。

 するとエリーは数秒間動かなくなった。

 そして復活するとわたしにいろいろ聞いてきた。


「この戦いって終わるの?」

「わからない……空間の亀裂がどうなってるか確認できないし、この街から離れるわけにもいかないから━━━━」

「そうだよね……」


 空間の亀裂が自然に無くならない場合はリアかお母様の空間魔法で封じるか、ディアナの虚魔法で虚ろに変えるしか方法がない。お母様はともかく、リアやディアナじゃ山までたどり着くのは難しい。

 それにお母様やリアたちはわたしとは違う街を護衛しているので連絡を取る手段もない。

 そう考えていると何かが壊れた音が響いた。


「さっきからこの音なんなの……!?」

「結界が1つ壊された……エリー! この音何回鳴った!?」

「えっと、これで5回目だよ……?」

「5回目!?」


 展開した結界は全部で5つ。つまり今ので全ての結界が壊されたっていうことだ。

 状況的にかなり圧されてるということになる。そしてわたしもそこまで戦えないが、動かないわけにもいかない。

 わたしはエリーから借りた服をベッドに置いて急いで外へと飛び出した。


 外に飛び出すと、結界の外に居た魔物たちが街の中にまで入ってきた。

 住民たちは何かを察していたようで、街の中央にある冒険者ギルドに避難していたようだ。


『グルゥア!!』

「きゃっ!?」

「危ないっ!」


 突然と迫ってきた魔物に押し倒されて食べられそうになった瞬間にこの街の冒険者さんがわたしを助けてくれた。


「早く逃げろ!」


 わたしはエリーと冒険者ギルドに向かう。


「こっちだ! 急げ!!」


 男の人がギルドから身体を出して手を振っている。

 わたしとエリーは頑張って走るが、後ろから迫ってくる魔物の方が速く、追いつかれる。

 わたしは魔力強化でエリーを冒険者ギルドの方に投げ飛ばした。


「フェリナスちゃん!!」

「ダメだ! 間に合わねぇー! 嬢ちゃん入れ!」

「フェリナスちゃーん!!!」


 わたしが魔物に押さえつけられるのと同時にエリーが冒険者ギルドの中に入れられるのが見えた。


「エリー、よかった……」


 ごめんね……みんな━━━━━━





「うおおおおおおおおおおおおっ!!! おらぁぁぁぁぁぁ!!!」


 わたしを捕らえたはずの魔物がいきなり真っ二つになった。


「なんで……あなたが……?」

「自分の領民も守れない領主なんているわけがねぇだろっ!!! ここは俺様の領土だ! 誰一人として悲しませることは絶対にさせねぇ!!!」


 わたしの目の前には1本の剣を構えた青年がいた。

 わたしは剣を構えた青年の横に立ち、魔力を放出して宝石の大剣を作る。


「このタイミングで来るのは卑怯ですよ。さん……」

「元生徒会長じゃねーよ。俺様はだ! アスト・ルーズベルト!! 覚えておけ! フェノンフェリナス!!」


 わたしとアストは剣を構えて走り、魔物たちを切り倒していく。

 いくらわたしが剣を使えないとはいえ、振り回したりすることぐらいはできる。

 型とかは一切わからないので、あとはごり押し。


「はあっ!」

「うおりゃあっ!!」

 

 ひたすら魔物たちを駆除して街の外にいるクラスメイトたちと合流するためにアストと街道を走る。


「疲れたならギルドに休んでていいんだぞ?」

「うっさい!! ヒトの気も知らない━━━━でっ!!」


 わたしは大きな1振りで近寄ってきた魔物を倒す。

 さすがに大剣は重くて疲れる。けれど、普通の剣では大剣よりも遠心力が少ないので、火力に欠けてしまう。自分の身体が3歳に戻っているのを考えると力はそんなに出ないだろう。

 それに制服から着替えてないので、服が弛くて動きにくいのにも原因があると思う。


「もうすぐ外だぞ!」

「わかってるよ!」


 わたしとアストは外に出るとクラスメイトたちがかなり圧されていた。

 美紀ちゃんとか欠損部分はないものの、ボロボロだった。

 そしてオークが美紀ちゃんにトドメを刺そうと金棒を大きく振り上げた。


「危ないっ!!」


 わたしは残された体力で一気に加速してオークを切り裂いた。


「はあ、はあ……放て!!」


 体力を使い切って、その場に座り込んでしまったわたしは大剣を魔力光線に変換して近くにいた魔物を処理する。


「フェノンさん!?」

「先生、まだ終わってませんよ━━━━」


 体力が尽きてしまったわたしはその場で倒れてしまった。


「おいっ!? しっかりしろ!! フェノンフェリナス!!」


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