第16話 ルームメイトと入学式


 目を覚ますとリアと先ほどの事件の犯人だと茶髪思われる茶髪でツインテールの女の子がわたしを覗いていた。


「さ、先ほどはすいますんでした!! だ、大丈夫ですたか!?」


 茶髪でツインテールの女の子が凄い過剰な反応でわたしを心配してくる。第一印象はそそっかしい子。


「うん、だいじょうぶ……とりあえず自己紹か━━━━」

「「イタッ!?」」


 起き上がろうとした瞬間に女の子が顔を出してきたので、お互いの頭がぶつかって二人で頭を抱えてうずくまった。


「お前ら仲良いな。さっさと自己紹介しろよ。俺は先にしといたからさ」

「う、うん……わたしはフェノンフェリナス。よろしくね」


 軽く自己紹介するとリアが変な顔をしていた。


「フェノンってそんな名前だったのか。ずいぶん長いな」


 本名言えばもっと長いけどね。それにリアだって本名どうせ長いでしょ?

 すると女の子はようやく回復したのか自己紹介を始めた。


「えっと、わ、私はエリーといいます! よ、よろしくお願いするどすえ!!」


 めっちゃ忙しそうな自己紹介だけど、わたしの思ったことは1つだけだった。


「それはボケ?」

「え? フェリナスちゃん何を言ってるんですか?」


 わたしのことをそう呼ぶとは……しかもこの娘自分の「どすえ!!」に対して疑問を抱いてないし。


「フェリナス、コイツ天然だな」

「リアまでそっちで呼ばないでよ!? とりあえず荷物整理するから荷物出して!」

「ほらよ」


 リアはわたしの服とかが入った箱を全て取り出して床にドサドサと落とした。


「怒っていい?」

「却下」

「じゃあゴブリン行き?」

「悪かった。謝るから許してくれ……」


 その場で正座をしたリアは手を前に出して頭を床に擦りつけた。その様子をベッドに座って見ていたわたしが、上から目線でリアの頭に足を乗せた。


「……うんちぶりぶり」

「◎$♪×□△¥●&#$△!!!?」


 リアが発したそのセリフに羞恥のあまり意味のわからない言葉を発し、リアの頭を踏みつけて反対側の二段ベッドの布団にズボーと入った。


「リ、リアちゃん? これは……?」

「フェノンの悲しい過去だ。あまり触れないでやってくれ」

「う、うん、わかったよ!」


 布団の上から優しく撫でてくるエリー。その優しさが逆にツラい。

 わたしは恐らく布団の中で顔を赤くしながら、酷い顔で泣いているだろう。もしナタリーが今のわたしを見たら屋敷中に響くぐらい大騒ぎするだろう。


「フェノンの復活はしばらく無理そうだな。悪いのは俺だし、フェノンの荷物整理してやるか」


 それからリアはわたしのために二段ベッドの片方を空間魔法に入れて、そのスペースに屋敷から持ってきた和室セットを置いて、わたしのはかまやパジャマのワンピース、授業で使う体操着などをクローゼットにしまっていった。


 クローゼットは部屋に4つあってそれぞれ部屋の奥にある。


「リアちゃん! ワンピースはハンガーにかけるの!」

「そ、そうなのか……ところで袴はタンスにしまっていいのか? フェノン、袴はどうする?」

「ぐすん……知らないからハンガーにかけておいて。ぐすん……」


 リアは袴を綺麗にハンガーにかけていく。さっきから見えてないけど、この辺は音で判断してる。

 それから時間が経つこと2時間後。わたしは遂に復活して布団から出た。


「やっと出てきたか……」

「誰が原因だと思って……」

「……俺だな。ごめんな」


 少し時間を置いてからリアが謝った。少しばかりリアの気遣いを感じた。


「じゃあ夕飯食べに行こうぜ」

「そ、そうだね……エリーも行くでしょ?」

「はい!」


 エリーが自分を誘ってくれないかとソワソワしていたので誘って見ると笑顔でついて行くと答えた。

 そしてわたしたちは女子寮にある食堂へと向かい、食券の販売機の前に立ったところで止まった。


「おかね……? リア持ってる?」

「ない」


 マジですか……お金ないと買えないなんて聞いてないんだけど?


「一度帰って取ってくるよ」

「お願いします! 持ってきてください!!」


 自分が女子であることを忘れて公衆の面前で土下座するリア。こうなるとわたしが悪いみたいになるからその場でエリーを差し出して逃げた。


 校舎を抜け出して身体強化で屋敷に戻ったわたしはナタリーに頼んで、取り敢えず夏休みまでの分のお金を用意してもらった。

 しかし、貰った額ではあまり贅沢出来ないので、毎日安い食事となるだろう。

 わたしは屋敷を出て学園へと向かったのだった。


 それから一晩が経ち、入学式の日となった。


「フェノン、お前強いな」

「伊達に公衆の面前でうんち漏らしただけあるからね!」


 袴を着た状態で入学式に出ると言ってドヤってると自分の精神がえぐれて涙が出てきた。そしてリアはハンカチで涙を拭いてくれた。エリーはわたしたちより起きるのが少し遅くて今朝食を食べに行ってるので、この部屋にはいない。


「泣くぐらいなら言うな」

「うん……ありがと」


 それから入学式に必要なものを準備して髪を結ぶ。今日はサイドテールにしてみた。ちょっと左側が重い。

 わたしたちは部屋を出て校舎へと向かう。


 校舎に着いてから少し時間が経ち、入学式が始まった。


「新入生代表による宣誓。ルーズベルト領、領主の娘、タテロール・ルーズベルト様」

「はい」


 あの時の金髪縦ロールが声を出して立ち上がった。

 あれほど名前が単純な新入生代表は初めて見た。タテロール……素晴らしい名前ですね。尊敬します。


 縦ロールの宣誓が終わり、入学式も終わった。そしてわたしたちは教室へと移動した。新入生は全部で12人。生徒は高齢化が進み過ぎた影響でかなり少ない。さらに女子はわたしとリアとエリー、タテロールのみ。残りは全て男子である。


「まずは手元にあるものを確認してくれ」


 自分の席に着くと、机の上には教科書と生徒手帳、学園案内表、寮の使い方、身分証明書のカードがあった。この身分証明書には魔力が流れる仕様になってるらしく、出席確認はこれで行うらしい。


「問題はないな。それじゃあ手前の男の子から自己紹介してくれ」


 担任の先生はモブを指して、軽い自己紹介を頼んだ。それから1人ずつ名前と趣味、この中で結婚するなら誰がいいかという謎の質問もあった。男子全員が終わった段階ではわたしが3人、エリーが1人、リア4人、縦ロール0人と意外にもリアが一位だった。理由は親しみやすいかららしい。リアはわたしの後ろで「俺はホモじゃない」とかボソボソ言ってた。縦ロールは縦ロールで「ありえませんわ」とかほざいてた。


「じゃあ次、エリー」

「え、エリーでしゅ! よ、よろしくお願いするどすえ!!! しゅ、趣味は◎$♪×□△¥●&#です、この中で好きな人は□●&◎$♪#◎$♪×□でしゅ!!!」


 めっちゃ謎の自己紹介をした王女様。途中から何を言ってるのかすらわからなかった。そして顔を赤くしながら座るとリアが立ち上がって自己紹介をした。


「リアだ。趣味はゲームだな。それで好きな人は……」


 何故かわたしに指をさしてくるリア。どうしても男には指をさしたくないらしい。男子諸君は「やっぱそっちかぁ~」という反応を見せた。縦ロールはそういう世界もあるんだという真実を初めて知ったような顔をしていた。

 そしてリアが座ったので、わたしが席を立ち上がった。


「フェノンフェリナスです。趣味はお団子を食べることです! 好きな人は……お団子です!!」

「「「……えっ?」」」


 何故か不思議そうな顔をしてわたしを見てくるモブ一行とリアとエリー。そんな民衆をほっといてわたしは席に座る。


「えっと……さ、最後どうぞ……」


 何故か先生すら戸惑う。わたしなんか変なこと言った? 別に普通のことしか言ってないような……?

 すると1番最後のタテロールが立ち上がった。


「タテロール・ルーズベルト、ここルーズベルト領の領主の娘ですわ。ここの女は大したことありませんわね。わたくしの趣味はやっぱりお洒落ですわ。好きな人ですか……そこの男ですわ」


 なかなかイケメンそうな顔をした男が選ばれた。

 少年よ、かわいそうに……合掌。


「ちょっとなんで二人揃って手を合わせてるのですか!?」


 縦ロールの指摘に後ろを見るとリアも合掌していた。そしてそれを真似し始めたクラスメイトたち。


「あんたたちさっきから生意気ですわよ! わたくしを誰だと思ってるんですかッ!? 領主の娘ですのよ!

 1番モテて当然ですわ!! 歯向かったらどうなるか教えてあげますわ! そこのアンタ! 勝負なさいっ!!」


 偉そうにわたしの席に指をさして言っているがそこにはすでにわたしの姿はなかった。そしてその後ろのリアの姿もなかった。わたしとリアはみんなが合掌してる間に教卓の下へと避難していたのだ。


「消えましたわッ!? ちょっとあんたどこにやったのよッ!?」

「ふぇっ!? し、知らないよッ!?」


 縦ロールがエリーに絡み始めた。さすがに他人に迷惑をかけるのはよくないので、リアを投げることにしました。


「リア、いってらっしゃい」

「は?」


 わたしはリアを縦ロールめがけて投げた。すると縦ロールはリアを華麗に避けた。

 さすが自称領主の娘。この奇襲攻撃をかわすなんて……

 ちなみに投げられたリアはわたしの席に顔面衝突して机と共に倒れました。


「あなた、いい度胸してますわね。勝負ですわ!!」

「ええっ……」


 リアがわたしの方を見てくるが、わたしは透明化を駆使して姿を隠した。するとリアの舌打ちの音が聞こえた。でもわたしには関係ないので無視した。


「(あの脱糞野郎覚えてろよ……)」


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