第3話 魔力暴発


 お花畑に来たわたしとナタリー。


「フェノン様! そんなに遠くに行かないでください!」

「はーい!」


 かなり奥まで進んだけど、途中からお花畑がただの農場へと変化したのでナタリーの元に戻る。


「フェノン様は本当に速いですね……」


 確かに幼児が出せる速さではなかったと思う。これは異世界チート特典だろう。やはり強力な魔法でも使えるのだろう。

 わたしは頑張って魔力を外に出してみようとする。


「うぬぬっ……」

「フェノン様? どうしました? おトイレですか?」


 ちがう。わたしが使いたいのは魔法だ。断じてトイレなどではない。


「これは……魔力? フェノン様は魔法が使いたいのですか?」


 わたしは頷いて、ナタリーの顔を見る。


「大丈夫ですよ。もうすぐ星刻印の精錬がありますので、今は使えなくてもすぐに使えるようになれますよ」


 どうやら魔法を使うにはその星刻印の精錬? というのをやらないといけないらしい。……星刻印の精錬ってなに?


「それなぁに?」

「星刻印の精錬ですか? 星刻印の精錬というのは4歳になる子どもたちが教会に行って宝玉……綺麗なボールに触れるんです。そこで光る色で使える魔法が決まるんですよ」


 ナタリーが星刻印の精錬についての説明をしてくれた。

 ……なるほど、わからん。けど、わたしの場合は虹色に光るってことだよね?


「属性は火、水、風、土の四大属性の他に光や闇、雷に氷などの希少魔法がありますね。属性がわかったらそれぞれに合った星刻印をいただくんです。私のはこんな感じですね」


 ナタリーは自分の手の甲を見せてくる。そこには模様みたいなのがあった。


「これは風の星刻印です。私が使えるのは風魔法だけですので」


 今さらだけど、魔力が外に出るってことは魔法使えるんじゃない?

 よし、魔力を出して……


「ふにゅうぅぅぅ……」

「フェノン様?」


 かなり少ないけど、魔力らしきものが出た。

 なんか白いモヤみたい。ナタリーには見えてないけど、気配は感じてるように見える。

 この魔力、好きなように動かせるようだ。じゃあ試しにナタリーを覆ってみよう。


「ゲホッ! ゲホッ!」


 ナタリーに魔力のモヤを被せてみるとナタリーが急に噎せたので魔力をどかしてみる。


「フェノン様! お辞めください!!」


 とりあえず出した魔力を仕舞おうとするけど、仕舞い方がわからない。……どうする? このまま切り離してしまう?

 それとも━━━━━━


 そうこう考えてるうちに魔力の霧はシャボン玉のように丸い形状になって空高くに浮いていった。

 すると破裂するかのような大きな音が響いた。


「きゃっ!?」


 ナタリーは声をあげ、わたしは肩をビクつかせた。そして、破裂した魔力のモヤがわたしから魔力を吸い取るような感じで魔力が外へと流れていく。全ての魔力を吸い取られたわたしは立つ力も失い、その場に倒れ込んだ。



「フェノン様! しっかりしてください!」

「な……た……りぃ……」



 そして後ろから何かが落ちたような大きな音がした。ナタリーが振り替えるとそこにはとても大きい透明な石みたいなものがあった。



「これは結晶……ですか……? とにかく戻らないと! フェノン様、かなり揺れますけど我慢してください!」



 ナタリーは今までにないぐらいの速さで走っていた。それもわずか2、3秒でかなり遠くにあったはずの屋敷まで戻った。恐らく風魔法を使ったのだろう。

 そこでわたしの意識は途切れた。



「ナタリー!」

「エマ様! フェノン様が!」

「わかってる。報告は私がしておくからフェノンをおねがい!」

「わかりました!」







 それから数日間に渡り、わたしは高熱を出し、前世人生最の最後にし後のて最大記憶の汚点の夢にうなされ続けた。


「なたりー……?」

「フェノン様!」


 起きるなりすぐにナタリーが抱きついてきた。ちょっと苦しい。


「じゃま」

「は、はい……」


 苦しかったのでナタリーに離れてもらった。


「フェノン様、ご夕食はいかがなさいますか?」

「いる」

「かしこまりました。ではこちらへ」


 わたしはナタリーと手を繋いで、食堂へと向かった。

 その後、夕食を食べ終えると、わたしは再び深い眠りへとついた。

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