デマゴーグの引鉄(ひきがね)

味志ユウジロウ

第1話 中学校三年生の叫び

「は? マジで言ってんの、それ?」


 俺は想わず、スマホの画面に突っ込んだ。いや、俺だけじゃない。きっと、今スマホなり、タブレットなり、家のテレビなりで報道を知った同年代は一斉に声を上げたはずだ。


 新型ウイルスの影響で、全国小中高の一斉休校を報じられた夕方。スマホには、白髪交じりの偉い人が、休校の経緯と決断を述べていた。夕方といっても、ここ東北の冬は日没が早い。


 早速、クラスや引退した部活などのグループLINEがアクティブになる。


 正直俺達も、後一年遅く生まれていれば、喜んでいたかも知れない。


『春休み始まる前に学校休みだってよ』

『1か月も休めるってさ、夏休みよりも長いじゃん』

 ……とか、浮かれてんだろう?


 俺は、何人かのテニス部の後輩達の顔を想い浮かべた。


 くそっ、なんだよ!



 誤解のないように言っておくけど、別に俺は意地悪な先輩ではない。


 だけど、の俺達中学校三年生は、九年前、東日本大震災で


 こいつはあんまりだ。


 しかも、小中と九年間、同じ町内の幼馴染みはもっと長い間、過ごして来たのに、春から進路がバラバラだ。勿論、近所だから、逢おうと想えばいつでも逢えるよ。


 でもさ、小学校で毎日遊んでた奴だって、中学校で部活が別になれば、遊ばなくなるじゃんか。だから、高校行ったら、地元の仲間と遊ぶ機会も少なくなると想うんだよね。


 というか、高校受験すら、まだだし。こんなメンタルで来週受験本番とか。


 卒業まで、皆とくだらない話して一緒に居られると想っていたんだ。それが、もう学校行けないまま、春休みになるかも知れないなんて。


「マジかーー!」


 同じ町内で、誰かが叫んだ気がした。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る