愛の遠回り

 突然強風が吹き、少女の帽子を飛ばしてしまった。

 

 帽子は偶然にも、ランニング中の青年の視界を奪った。

 

 青年は前方を確認できず、散歩中のジョンの前足を踏んでしまった。

 

 ジョンはあまりにも痛かったので、大きな声でキャンと鳴いた。

 

 その声を聞きつけた親友のペロが、心配のあまり長く遠吠えをした。

 

 遠吠えはどんどん伝染して行き、終いには街中の犬が鳴き出した。

 

 観光に来ていたジミーさんは、その光景をビデオカメラに収めた。

 

 故郷に帰ったジミーさんは、映像をメディアに売った。

 

 メディアは奇怪な光景を、『謎の伝染病が犬の間で流行』と報道した。

 

 その報道が逆輸入され、映像は日本でも流された。

 

 あの出会いから付き合い始めた少女と青年は、同じ部屋でそのニュースを見ていた。

 

 二人は出会いの瞬間を思い返し、見つめ合ってキスをした。

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