ちょこばなな味

雨矢健太郎

投薬開始


きみの視界に映る景色を変えてやる

さあこいつを飲み干せ

その疑いを知らない澄んだ瞳で

おれはいつでもここにいるから

きみは偶然を装って訪れればいいし

気まぐれで迷子にもなれる

その気になればひっくり返った世界で逆立ちすることだって可能だ

毎日、楽しそうにしていたって

おれにはわかっている

本当は死ぬほど退屈してるんだろ?

きみがもしも生きながら死んでいるのなら

それにはなんの価値も無いね

この真っ白な錠剤の致死量はいくつだったかな?

忘れた

適当に口に放り込め

お利口さんは電柱の陰で手淫でもしていればいい

そしておれたちだけの共和国を設立する

きみはきみではなくなる

自己紹介の度に躊躇う

成分が溶けて身体中に染み渡れば

まるで猿から人類へ進化したような心地を味わえる筈さ

真っ暗な夜空に

輝く星々に名前を付ける

それは既に用意されたものではなく

完全に新しい名前さ

おれたちはきっと後戻りの仕方を忘れちまうのさ


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る