第4話 現状

夜風は冷たく、僕の肌を乾燥させる。

それでも、なお立ち止まろうとはしなかった。


「なんで…僕を連れて行くんだ?」


「なんでって、河村こうむら氏に頼まれたんだもの。妖天ハルスを一人、連れて来いって」


「僕は…人間ヒトだ! 妖天ハルスなんかじゃない!」


「そうだとしても」


彼女同胞が一度、立ち止まり、僕の顔を覗き込んだ。


「あなたは、もう、戻れないの」


さっきのような、お道化どけた感じではなかった。

その勢いに圧倒され、僕は口を閉じた。


そして、再び疾走していった。




====================================


 


「着いたわ」


彼女が声を出すと同時に、僕は、閉じていた瞼をゆっくりと開いた。

目の前には、研究所のような、質素な建物。


僕は、抱えられていた体勢から、急に投げ落とされてしまった。

腰をさすりながら起き上がると、彼女はもう中へと入ってしまい、慌ててその後を追った。

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