第16話‐B面 毒島玲子は面食らう。

 オヤジへの電話を終えたアキラはベッドに倒れ込んだ。

 深い溜息と共に、

「一週間かあ……。長いなあ」

 とぼやいている。


 それはさておき、だ。


「おいアキラぁ!」

「……なんですか、レーコさん」

 ベッドの上をごろりと転がって、アキラは宙にいるアタシと視線を合わせた。

「オマエ、さっきのありゃなんだ? どーゆーつもりだ? もちっとエミの気持ちを酌んでやれよ!」

「そうは言いますけど、エミちゃんが好きなのはエミちゃんの想像している僕であって、本当の僕じゃないんですよ?」

 アキラは超絶仏頂面だ。

 何がそんなに気に入らねーのか。

「だからってあんな突き放し方はねーだろーが!」

 アタシの怒声にアキラは一切ひるまず噛み付いてくる。

「じゃあ、どうすればよかったんですか? まさか付き合えとでも?」

 そこまで言ってねーよ!

「断るにしたって他にやり方があるだろうが!」

「どっちにしても無理ですよ」

 目に涙を溜めてアキラは吐き捨てた。

「なんでだ?」

「僕が好きなのは、レーコさんだからですよ」


「は?」


「何言ってんだオマエ。アタシは、アタシは厄病神だぞ……」

「勿論知ってますよ」









「それに!!」


 アタシが叫ぶとアキラはきょとんとした表情を浮かべたあと、苦笑した。

「あはは。レーコさん、それはないですよぅ。エミちゃん女の子の告白でもちゃんと応えてやれ、って言ったのはレーコさん自身じゃないですか」

「ぐっ」


 こンの揚げ足取りが!


「はじめてレーコさんに会った時から思ってました。レーコさんは僕の理想の人なんです。外見も性格も。駄目なところをビシビシ指摘してくれるところも。今までこんな人、いませんでした」


 知るかそんなもん!


「ぶっきらぼうだけど優しくて、本当に困った時は助けにきてくれて、だから」

「だから、僕の今の一番の幸せはレーコさんと一緒にいることなんです」

「不幸体質の一番の幸せが厄病神と一緒にいること、ってどうかしてんぞオマエ」


「でも本気です! 好きですレーコさん! 僕とお付き合いしてください!」


 アタシはバカの告白にぐっと息を呑んだ。

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