第9話「鈍感で、性格がクソ」

第9話‐A面 三波笑美は嫉妬する。

 朝、アキラちゃんと家を出ると玄関脇に眼鏡のクラス委員が待ち構えていた。

 瀬戸さんだ……。

「お、おはよう。アキラ」

 彼女はモジモジした態度でアキラちゃんに挨拶をした。

 私のことはスルー。完全に眼中にないらしい。

 でも当のアキラちゃんもハテナ顔で、

「おはようございます?」

 疑問文で挨拶するような状態だった。

「アキラ、昨日はごめん。本当に、ごめんなさい」

「いえ、僕の方こそ支えきれずにすみませんでした」

「アキラが誤ることじゃないよ! だから、さ。せめて腕が良くなるまではアキラの負担を減らしたいと思って」


 そう。

 そういうことなのだ。

 瀬戸さんはアキラちゃんのことを――


「はあ」

「これから良くなるまで毎日迎えに来るから。学校まで鞄、代わりに持っていくから!」

「ええっ」

 せめてもの救いはアキラちゃんが人からの好意そっち方面に物凄く鈍いこと。

 普段は何で伝わらないかなー、って思うけど、今だけは有難いと感じた。


「アキラちゃんのお世話は私がするから大丈夫です!」

 私がふたりの間に割って入ると、瀬戸さんは露骨に嫌そうな顔をした。

「はあ?」

 嫌なのはお互い様だけど。

「ストーカーみたいに待ち伏せしてくれなくて結構です、って言っているんです」

「ストーカー? 誰が?」

「瀬戸さんが」

「はあ? 三波さんどうかしてるんじゃないの? 頭起きてる?」

「起きてますー!」

「じゃあ元々どうかしてるのね、頭。残念ね」

「そっくりそのままお返ししますけど!?」


 不毛なやり取りはアキラちゃんが止めに入るまで延々続いた。

 そのせいで三人揃って遅刻した。

 新学期早々私は何やってるんだろう……。

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