第七話

 翌朝。

 学校に行く準備をしながらタブレットに入れたメッセージアプリを開くと須藤さんからメッセージが来ていた。

 時刻は朝六時過ぎ。

 どうやら空が明るくなってすぐ昨晩準備した所に向かい、入り江に置いて帰ったボートに乗って石の引き上げに行ったらしい。

 時間を置かず送られてきていた写真にはこんなの持ってたのかこの人と思うダイバースーツを着た須藤さんと……なんだこれワイヤー?

 恐らく引き上げに使ったであろう網と機械、白黒写真で見たのをそのままカラーにしたようなしめ縄付きの石が写っていた。

 遠路はるばる流れてきたわりには、随分綺麗なように見えた。


 >ボートの引き上げとヒモの回収手伝いもよろしく


 不意に湧いた疑問は次の一文ですぐに消え。

 働き者だな、なんて呑気に呟いて。

 添えられた最後のメッセージにスタンプだけ送ってタブレットを閉じる。

 これで一件落着。

 幽霊騒ぎはこれにておしまい。

 人の噂も七十五日で時間が経てばそんなのがあったことすら忘れ去られるだろう。

 ……このまま何も起こらなければ、だけど。

 私としては当たってほしくない想像をして家を出る。

 さて今回はいくら貰えるかなとバイト代のことを考えながらバスに乗って、学校へ向かい、日中を過ごし、夕方となり、バスに乗って、帰宅のち、街灯が点き出す頃。



 >ごめん乙木野また出た



 ――その日も橋に『着物姿の女性』は現れた。

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