第6話 思い出ばなし

 玲香「未咲、憶えてる?」

 未咲「? なぁに、玲香ちゃん?」


 休み時間、玲香ちゃんがこれまた突然話しかけてきた。


 玲香「あんたがわたしの誕生日に大きな花束を、それも生花でくれたこと」

 未咲「あー、そういえばあったね、そういうこと」


 まるで大それたプロポーズみたいなことをするな、と思ったのを覚えている。


 玲香「あれ、正直けっこう迷惑だったんだけど」

 未咲「そんなぁ!」


 真実を知って、ショックを隠しきれなかった。


 玲香「育てるの大変だったのよ? 毎日水換えなきゃいけなかったんだから」

 未咲「それは確かにそうだけど……」


 せっかく祝ってあげてたのに……みたいな顔をしている。


 玲香「あの頃に比べれば、いまの未咲はずいぶん落ち着いたように感じるわ」

 未咲「うーん、それっていいのか悪いのか……」


 とても複雑な表情になる未咲。

 もらって悪い気はしなかったけど、後のことも考えてくれるとなおよかった。


 玲香「今後はシンプルなものでいいから。期待もしてないし」

 未咲「そこは期待しといてほしいんだけどなぁ……」


 その表情が崩れることは、決してなかった。

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