真っ赤なスカーフ

 お母さんがモグの為に首に巻く赤いスカーフのような布を買ってきてくれた。他の猫と見分けがつくようにと云うことだそうだ。


 ついでに僕にもお揃いのスカーフ。


 それを見て兄弟みたいだとお母さんは爆笑した。モグもそのスカーフが気に入ったようであった。


「それじゃあ、また病院に行ってあっちゃんの見舞いに行ってくるよ」僕はお母さんに告げる。


「気を付けて行くのよ」言い残し台所へ移動していった。


「えっ?」足元に何か引っ張られる感じがしたので目を落とす。モグが僕のジーンズの裾に噛みついて、まるで行くなというような素振りをしている。


「どうしたんたい?」モグの行動の意味が解らないので一応聞いてみる。


みゃー!みゃー!みゃー!


 やはり行くなと言っている……、ような気がする。


「大丈夫だよ!寂しいだろうけど我慢してね。すぐに帰ってくるから!」すがるモグを階段に座らせてから僕は玄関を後にした。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る