黒の薔薇



お久しぶりです。

毎日過ごすときに己が感じた喜怒哀楽その他色々を綴ることとします、不定期でいいんだよそんなもん。


さて今回は、毎朝私が電車に揺られてうらうらとまだ眠りこけた脳みそを上下左右に頭骨の脳漿の中で浮かばせるときに見た黒い薔薇の話だ。


諸君、薔薇に、様々な色があるのは知っているだろうか。例えば赤、白、黄色。これは決してチューリップの歌ではなくて薔薇の話である。世には青や虹色、桃色に、黒なんという色までも存在する。

薔薇の花言葉など、毎日の生活で見る花が精々脇道で懸命に生きる雑草達である花も贈ったことのない私が知ったことではないが、しかし薔薇という物にはやはり高貴できらびやかで即ち豪華というイメージを私であっても持つ。十人十色でバラバラといえど、十いる中の八か九の人間達はきっと同意してくれるはずであろう。異議あれば教えていただきたい。


私は、そんな薔薇を毎朝見かけるのである。

しかしそれはきっと群れて美しく見えるようにと育てられた赤や白の決まりきった固い花壇のごとき美しさではなくて、例えるならば水色の透き通ったガラスのなかに注がれた水を懸命に吸い上げただ一人で、独りだけで凛と咲き誇る、怪しく美しい妖艶な黒き薔薇であるのだ。

その薔薇は、私が重たく温い朝の精神を刺すような風に吹かれて乗り込む電車に、決まった動きと姿で乗り込むのだ。刺すような風を、その薔薇はまるでそよ風ともみれるように真っ直ぐ捉え、ひらりひらりと深淵の花弁で出来たドレスを揺らす。風は、かの薔薇のためにあると言っても過言ではない。それほどまでに美しいのだ。


その薔薇を一目見た瞬間に私は、形容しがたい感情に脳をかき回され、ねるねるねるねの二番の粉を混ぜ始めた、あの食欲をそそるとはお世辞にも言い難いカラーに変色していくような感覚になった。わからん?ならばよい、ねるねるねるねを作ってみるのだ諸君、スーパーで買えるぞ。


私は今日も電車のてすりにしがみついた。

雨が降っていた。

縁のあるメガネをした、細くて凛とした黒い薔薇は今日は居なかった。定期券が入った、バッグから取り出したカードケースの色がピンク色で、そういえば私が見惚れ恍惚としていた存在が薔薇ではなくて、一人の女性であること思い出した。イヤホンは雨が嫌いだそうだ。

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