第7日 カフェオレの蜃気楼



またいつもの如くランニングから帰ってきた私は、長方形のデバイスを片手にキッチンに向かい、昨日亡くなったワニのニュースを見ながら湯を沸かした。

既にスタンバイさせたインスタントコーヒーのかぐわしい香りを嗅ぎながらイヤホンから鳴りやまない曲を流し聴きながら待つ。


私は歳の割にはコーヒーをよく飲む。

コンビニでは微糖やカフェオレを良く買うし、ブラックではいかないけれど家でもよく飲む。


コーヒーというか、カフェオレが好き。

飲んでいると、謎の安心が得られるのは私以外の人も同じだと思う。


私は紅茶が苦手なのでタピオカを真面目に飲んだのはタピオカカフェオレドリンクが初体験であった。紅茶がダメなのだ。

お茶なのに甘いという事実と紅茶の香りがダメだった、リプトンを友人の家で出された時は出来るだけ美味しいように振る舞ったが内心流石に死ぬかと思った。あの時の自分はよく文句も言わず飲みきったなぁと思う、申し訳無かったのだ。


お湯が沸くのを待っていたら暇を感じた。

軽く咳をした。

沸いた。


香りがまたいっそう部屋に広がる。


口をゆっくりとつけ啜る。

あの味だ、

と脳がわかったのか、

自然と口角が少し上がったのが自分でわかった。


少しずつ、湯気と共に体の中に取り込まれていく美味しいコーヒー。いや、コイツはカフェオレだ。牛乳入れたよ。


電気を付けていない部屋でテレビを付け、

イヤホンを外してそのテレビを見た。

今日の星座占い、魚座は2位らしい。

私は3月3日、つまり桃の節句の生まれなので星は魚の人間だ。

小さな幸せが立て続けに起こったお陰で自分に酔ってしまいそうだ、ここでカフェオレを啜ると?


「っあ"あぁ~」


思わず声が漏れ出した。

世界が華やかに見える。

これはきっと、

カフェオレの蜃気楼だ。






























あぁ。

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