5.RAY825.08/夏年、発掘場で~突破口~奇襲に成功せり

 その年の流刑惑星ライは、「夏年」だった。


 この惑星ライは、恒星からの距離がアルクより遠いだけでなく、速度も遅い。もっとも、アルクにしたところで、公転速度は基準時間とは違うのだから、星間共通歴の一年の中で移り変わる季節など、年毎に変わるのだが。

 何はともあれ、共通歴825年の8月は、ライにおいて何年ぶりかの「夏」の訪れだった。


「運がいいさ、俺達は」


 ヘッドは帽子を外し、その短く刈り込んだ頭を遠い恒星光にさらした。


「どのくらいこの時期は続くんだ?」


 車のハンドルを握りながら、BPは訊ねた。窓を開けて走っても、凍えることの無い季節というのは何て素敵なものなのだろう。

 気温は氷点を前後する程度だった。普段が普段だけに、アルクの温帯地方では皆背中を丸めて家路につくこの気温も、この惑星では「夏」である。いつもの耐寒服では汗をかきかねない。これが夏と言わずして何と言おう。

 彼らは車の固いクッションの下の感触がいつもと違い、尻にごつごつとしたものが当たるのを感じる。雪が解けているところもあるのだ。そんな場所には、白茶けた大地が広がり、ほんのわずかだか、緑色のコケや、もっと運がいい時には、ほっそりとした若芽が見られることもある。


「けどさすがにこういう時にはお前の運転がいいな」

「それで俺に手を挙げさせたんだろ? ヘッド」

「ああ。やっぱり俺は軍用自動車はどうしても手になじまん」


 ヘッドはにっと笑って、組んだ足の上に肘を置く。何度目かの番が巡ってきて、彼らはまたパンコンガン鉱石の採取にと出ていた。


「俺が軍人だったって証拠は無いぞ」

「だけどお前以外にこの車が身体に馴染んでいる奴はいないぜ? しかも、最初から痩せてるくせにひどく腕が立つし。何よりまず、お前姿勢がいいからな」

「馬鹿言え」

「確かに普段は結構ふにゃふにゃしているがさ。いざという時だよ。いざという時」


 そんなものだろうか、と彼は思う。自分でそんなこと考えたこともない。

 こうなってしまうと、BPは次の話題を無くす。軍人だったということは、つまりはあの看守達と似た様なものだったのか。それに、軍人が政治犯になることは滅多にない。軍人は政治に手を出さないから軍人なのだ。少なくとも「知識」における彼の故郷は、文民統治の原則があったはずだ。


 ……いや、一つだけ政治犯になる方法があった。


「お前の相棒、拗ねてなかったか?」

「拗ねてた拗ねてた。こうやって唇突き出してさ」


 そしてしばし笑い合う。だがやがてそれは止まる。馬鹿話をするために彼らはこの時間を確保している訳ではなかった。


「……で?」


 BPは車を止めた。移動する反応は、今回もまた、そう遠い場所ではなかった。前に見たことのあるパンコンガン鉱石は、黄白色の、決して大きくはないかたまりだった。

 手に乗せた時、彼はそれがひどく重い、と感じた。何故だか判らない。ただ、手の上で、それはひどくずっしりと重たかったのだ。


「……あそこだな」


 雪に埋もれた小高い丘を、車の中の探知機は示していた。その丘は横から見ると、まるで何かに切り取られたかの用に、雪も解け、まっすぐな岩肌を見せている。


「あれか」


 ヘッドは車から降りると、後部座席から採石の道具を取り出す。


「それでやるのか?」


 BPは訊ねた。いつも手にするドリルだった。


「仕方ないじゃないか。これしかない」

「だけど、雪が心配だ」


 彼は忠告する。丘の上に溜まった雪が、その音と振動で雪崩おちてくる可能性は高い。


「急いでやるしかなかろうな。そうそう次の地点を探す余裕は俺達には無い」


 それはそうだ、と彼は思う。そして、そこが決して斜面でないことを確認し、自分の道具をも取り出す。雪が落ちて来たらどの方向に逃げるのが安全なのか。無意識に彼は確かめていた。

 そんな彼の動作を見ながら、ヘッドはバッテリにつないだドリルのスイッチを入れる。びぃ…… と回転する音が、彼の耳に響く。


「俺達はラッキーだ。ちゃんと今回はお姫様は顔をさらしているしな」


 そうだな、と言いながら彼もまた、バッテリに自分の道具をつないだ。そしてふちの欠けたゴーグルをつける。誰のものというものではないそれは、何度かこの様に岸壁面にある鉱石を取る際に使用され、採石をする彼らの目を守ってきた。

 がりがりとぎりぎりを混ぜた、脳天の中央までかきむしる様な音が広がる。静かに眠る様な雪は、音を吸い取ってしまうのだろうか、と彼は普段の凍った雪とは違うそれに、ふとそんなことを考える。

 だがその一方で、そんな柔らかくなった雪の恐ろしさが、100グラムという微量を取るための穴をまだ凍った岩肌に明けようとドリルを食い込ませるごとに迫ってくる。早く。早くしなくては。だが焦るとドリルの刃が欠ける羽目になる。相棒がいつも隠し持っている、欠けた刃。


「大丈夫だから、落ち着けよ」

「あんたがそう言うと、そういう風に感じるから変だな」


 ふう、とまず外ではかかない汗を、彼は額に感じる。だがそれが凍ってはたまらないから、それはすぐに袖で拭われた。


「別に俺だって怖くない訳じゃないさ」

「だがあんたはいつも落ち着いて見える。そういうとこが、あんたはヘッドなんだよな」

「落ち着いてる訳じゃあないさ。臆病なんだよ」

「そうは見えないが」

「俺はただ、生き残りたいと思っているだけだ。なるべく高い確率で」


 同じことを相棒が言っていたことを、彼は思い出す。ただ、言う人間が違うだけで、印象はずいぶんと変わって見える。

 いや違う。それだけではない。彼の目には、少なくともこの男の目的は、リタリットの生き延びる目的とは違う様に思われた。

 そんな彼の考えとは無関係に、言葉はドリルの音に負けじと大声を張り上げる二人の間を何度か往復する。やがて100グラムを取るだけに充分な程の穴が空き、彼らはその更に奥へとドリルを突き刺した。きゅい、と音が響き、両側から、少し斜めに向かう刃先が、お互いの刃先がぶつかる瞬間を待つ。鉱石からあふれる白い粉が、穴の周りに舞い飛ぶ。

 お、と相手の声が聞こえたので、彼はドリルのスイッチを切った。手応えは彼にもあった。ここで止めないと、またドリルの刃が欠ける。


「そろそろいいかな」


 そう言いながら、ヘッドは手を掘り出した鉱石にと伸ばす。手の中にすっぽりと入ってしまうくらいの、黄白色の、美しい石だった。


「……っ、と」


 く、とヘッドはその握った手をひねった。途端、ほんの僅かな部分で大地とつながっていた鉱石がぽきん、と小さな音を立てた。


「…… え……」


 耳の中が震えた。

 あんなにドリルのやかましい音を立てていたのに、と彼は嫌な予感が背中を一気に走り抜けるのを感じる。ご…… という音が、耳の中に飛び込む。彼は辺りを見回す。あれは。


「ヘッド!」


 彼は手を伸ばした。そしてヘッドの、鉱石を持った方の手を思い切り掴んで、引っ張った。

 次の瞬間、丘の上の雪が、一気に彼らの頭上に落ちてきた。



「遅いな」


 リタリットは房の窓、鉄の格子の向こう側を眺める。既に作業時間は当の昔に終わり、いつもの通りの、足りないと腹がわめく食事も終わり、消灯時間が迫っていた。

 夏期の房は、今までにない程暖かだった。それまでの部屋の気温が、外気であるという時期である。中の気温はそれだけで春が来たかの様に彼らには暖かく感じられる。

 だがだからと言って、目下の心配をそれだけで軽減できるという訳でもない。


「遅すぎるぞ」

「騒ぐなよリタリット」


 房内の一人が、声を掛けた。だがリタリットは口元を嫌そうに歪めただけで、指先をぴらぴらと振ってみせる。話しかけるな、と言わんが如くに。

 またか、と房の男達は肩をすくめる。元気な時にははた迷惑な程に明るいのに、相棒がいないだけでこれだ、と皆が皆、その「相棒」たるBPが来る前に逆戻りした様なリタリットを遠巻きに眺めていた。


「何でだろうな」


 その中の一人が、やはり相棒が戻って来ないビッグアイズに話しかける。

 相変わらずこのヘッドの副官的な役割の男は、何処からか調達したナイフを手入れしたり、そのナイフで、他で入手した刃物を研いでいたりする。それが普段何処に隠されているかは、房内の人間にも疑問だった。

 なまじな場所では、時折抜き打ちで入る所持品検査に引っかかるだろう。だがビッグアイズはそれに一度も引っかかったことは無い。それはリタリットのドリルの刃にしても同じだった。


「何が? まあ仕方ないでしょ。この夏期なんていう珍しい時だし。少なくともいつもよりは凍え死ぬ確率は少ないし」

「だが雪崩は気になる」

「あんたらしい意見だ、ジオ」


 ぱちん、とビッグアイズはナイフを閉じた。


「そう言えば、あんたの『研究』どうなってる?」

「『研究』? ああ、リタリットがそう言ったか?」


 ジオと呼ばれた男は、細い目を更に細くした。


「まあね。何となく仮定だけは出せる。ただそれが本当かどうか、は今の我々ではどうにもならない、ということだが」


 ふむ、とビッグアイズは目を半分だけ伏せ、窓際の文学者を眺めた。


「あ」


 ビッグアイズは目を大きく開けた。


「どうしたリタ?」

「戻ってきた、奴ら。……あれ、ビッグアイズ、お前の相棒、何かヘンだぞ」

「何?」


 ちょっと見せろ、とビッグアイズもまた窓のガラスと格子越しに、外を見る。


「BP…… とヘッド」

「ほら見てみろや、何か、BP、肩貸してる」

「ケガでもしたのか?」


 どれどれ、と房の者は彼らの声につられて、窓の側へ寄る。


「……何か、止められてる……」


 誰ともなく、そうつぶやく声が上がる。

 彼らの居る階からは、そうその光景は遠くは無い。ただ、その光景との間には格子があるだけだ。

 だがその格子がその時、ひどく、誰にとっても重く、窓の向こう側と自分との間を隔てている様に見えた。


「あ!」


 そしてまた、誰ともつかない声が上がった時、ばん、とリタリットは窓ガラスに手を思い切りぶつけていた。


「何やってんだよ!」


 その声に、皆の視線が集中する。彼らは窓を開ける。普段ならまずしないことだ。寒気が飛び込んできて、それはこの部屋の気温を下げる。自殺行為だ。

 だが夏期なのだ。確かに冷たいが、大気が通り抜けたところで死ぬ程のものではない。そんな共通の感覚が、彼らの手をそれぞれ近くの窓の鍵に伸ばさせた。

 リタリットは窓の縦の格子を掴むと、その中に顔を突っ込みかねない勢いで、相棒の様子を見据える。舌打ちをする。

 足にケガをしたらしいヘッドに肩を貸しながら、BPは何かを看守に言っていた。おそらく手当だろう、と皆想像する。奴ならそういうことを言いそうだ、とつぶやくのはマーチ・ラビットだった。

 だがそんな彼の申し立ては却下されたらしい。はっきりした言葉は聞こえない。いまいち声が届くにはこの窓からの距離は遠すぎた。リタリットは再び舌打ちをする。

 やがて、どうしてもらちが明かないと思ったのだろう、BPはほとんど掴みかかる様な勢いで、看守に向かって怒鳴りつけた。


「生かしておくのがあんた等の仕事だろ!」


 あちゃ、と房の中の一人、ドクトルKは思わず自分の頬を叩く。


「彼の言うことは正論だ、だが……」

「んなこと誰が聞くかよ、ここで」


 ビッグアイズは唇を噛む。


「ここじゃあちゃんとした治療なんて受けられないってことくらい、誰でも知ってる。だからあんたみたいのが重宝されるんだ、ドクトル」

「おい見てみろよ!」


 あ、とリタリットは声を上げた。相棒は、看守の持っていた大きな銃で殴りつけられ、肩をずらしたヘッドもろとも、雪の解けた地面の上に叩きつけられていた。


「……やばいぜおい、この展開」


 マーチ・ラビットは大きなあごに手をやりながら、不安げな声を立てた。


「やばいってどういうことだよ」


 リタリットはその声に弾かれる様にマーチ・ラビットの方を向く。筋肉質の三月兎は、逞しい腕を組みながら、苦々しそうに答えた。


「リタお前も、奴と一年しか違わないからな。俺は知ってる。脱走だけじゃない。ああやって反抗した者も、やっぱり『祈』らされるんだよ」

「……え?」


 細い眉は、露骨に寄せられた。


「……何だよ、それ……」

「だから、このままじゃ、BPとヘッド…… いや、少なくともBPは」

「そう、確かに今は夏期だから、まだ生き残れるかもしれないが……」

「何だよそれ!」


 口々に、他人事の様に言う皆に、リタリットは声を荒げた。そして何を思ったか、窓の格子をぐっと掴んだ。


「おい…… リタ……」

「手ぇ貸せよ! ビッグアイズ!」

「手ぇ貸せって……」

「いいから貸せよ!」


 そう言って、リタリットはビッグアイズの手を掴んで、格子を掴む自分の下を握らせた。そして引っ張れ、と強い声で命じる。

 他の皆は、滅多に聞かないリタリットの大声に呆然としていた。その大きさに、空間を引き裂く様な声音に、皆足を地面に貼り付かせていた。ビッグアイズもそれは同様だった。だがその声は、有無を言わせない。ビッグアイズは言われるがままに、格子を掴み、力を込めて引っ張っていた。

 やっていることが無駄であることは、皆が皆、感じていた。いくら何でも、人間の力だけで、この格子は切れない。曲がらない。それでも一応鋼鉄でできているのだ。

 しかしビッグアイズの目は、奇妙に大きく開いていく。そしてその目のまま、やはり真剣になって自分の上で力を込めるリタリットを見た。


「……見てねえでてめえらそっちのソレ、掴め!」


 はっとしてマーチ・ラビットは手を伸ばした。馬鹿馬鹿しいことだ、と皆認識していながらも、その時のリタリットの声には、奇妙な程に彼らの身体を動かす何かがあった。我も我も、とばかりに格子に手に手を伸ばす。そして彼らはその直後に、その手に当たる感覚に驚く。


「何だこりゃ?」


 最初につぶれた声で叫んだのは、闘鶏ゲームコックだった。何度目かの力を揃って内側に込めた時、彼らの目の前では、信じられないことが起きたのだ。


「……切れた……!」


 掴んでいた格子の一本の付け根が。


「リタお前!」


 知っていたのか、という言葉をビッグアイズは省略する。


「黙れ!」


 リタリットはそれには答えず、もう一度、と力を込める。額に汗が浮かぶ。

 片側が切れた一本は、皆の手で、ぐいぐい、と上に向かって、回される。誰かが、付け根のコンクリートを崩してしまえ、とわめく。窓の桟に足をかけ、一人が付け根のコンクリートの様子を見る。


「ほら!」


 リタリットはポケットから何かを取り出して投げた。窓に乗った一人はそれを見て何だこりゃ、と目を丸くする。それは折れたドリルの刃だった。

 作業で、固い凍った大地を削ることができる刃なら、年季の入ったコンクリートを、ちょっとしたすき間から亀裂から、それを広げることはできるかもしれない。さりさり、と引っ掻く音が聞こえる。その間にも、格子を掴んだ下側では、ぐりぐりと少しづつそれを動かしつつあった。


「……お前、何やったんだよリタ……」


 リタリットはビッグアイズのそんな問いには答えない。罵倒する以外は、黙々と力を入れていた。リタリットのそんな姿を見るのは、三年同じ房に居ながら、ビッグアイズも初めてだった。

 入ってきた時のこの男はひどかった。記憶を消された当初は皆ぼうっとしているものだが、この男は、異様にハイだった。まるで躁病の様だ、とその時ドクトルKは判断した。そのよく響く声で、誰が嫌がろうと、世界への怨嗟を込めて長々と言葉を並べた。だがその時期が過ぎると、今度は、ひどく閉じこもった。ドクトルKはやっぱり躁鬱病の様だ、と言葉を継ぎ足した。

 躁だろうが鬱だろうが、同じ房の中に居る人間である。ビッグアイズは房の副官的な役割から、それでもことあるごとにリタリットを構ってもきた。

 そしてようやく落ち着いた頃に来たのが、BPだった。ヘッドもそうなのだが、房の男達は、この恐ろしく気紛れな文学者にひどく甘かった。そうしたくなる何かがあるんだよ、と普段人にあまりいい顔を見せないトパーズも言った。

 だからBPがやってきて、それを「欲しい」と言った時、誰も止める者は無かった。彼と対戦したマーチ・ラビットは舌打ちをしたが、舌打ちをしただけだった。

 ぐう、と誰かの喉から締め付ける様な音がした。


「……!」


 リタリットの瞳が凶暴にひらめく。少しばかりだが、格子が両側に広げられた。細身の人間が通れる程に。リタリットは窓の外に身体を躍らせた。ビッグアイズはそれに続く。走りながら、ポケットの中をまさぐる。どうやら後戻りはできないらしい。

 彼らの房は、一階にあった。それが運であるというなら、運なのだ。降ってきた運なら、使わなければ損だ。次々と房の仲間が…… 格子の間をくぐれる程度の身体のサイズの者は、まだ残っていた雪の上に静かに飛び降りた。

 それはもう、勢いとしか言い様が無かった。無論皆、いつかここから逃げることは考えていた。だが、「どう」逃げるか、どう抵抗するのかは、頭の片隅で、ほこりをかぶっていたのだ。



「……の野郎!」


 その声が届いた時、彼は自分の耳を疑った。地面の上に転がされ、何度も、何度も固いブーツで蹴られ、銃身で殴られ…… 手で防ぐにも限度がある。BPは自分の忍耐が尽き掛けているのを感じていた。

 しかしそれでも、目の前でやはり倒れ、顔色の悪いヘッドのことを思うと、下手なことはできなかった。なけなしの理性が、彼を押さえ留めていた…… はずだった。


 なのに、だ。


「リタ!」


 見覚えのある白に近い金髪が、常夜灯に光る。何でこいつがここに居るんだ、と彼は口の端の血をぬぐいながら思う。リタリットはそんな彼の考えなど、お構いなしに、相棒を殴りつけていた看守の兵士に殴りかかっていった。


「よせリタ!」

「今更止せるかよ!」


 そうだ。何でこいつはここに居る? 身体を起こす彼の背中を、ヘッドが脂汗を流しながらもにやりと笑ってつつく。振り向くと、指が背後を差していた。BPは目を丸くした。


 次々に、自分の房の者が、走ってくるではないか。


 そうか、とBPはそれを見た瞬間、理解した。

 「その時」というのは、本当に、不意にやってくるのだ。彼は身体のバネを利かせて立ち上がると、目の前の事態にやはり呆然としている兵士に向かって掴みかかった。

 彼の動きは、その名の通り敏捷だった。あっと言う間に、兵士の銃は、彼の手の中にあった。BPはそれを掴んだ瞬間、手が自然に動くのに気付いた。


 俺は知っている!


 安全装置を外し、手にした大きな銃を兵士達に向ける。普段管理にしか回っていない兵士達は、反射的に銃を向けた。だがそれは彼の思うつぼだった。

 そして彼は迷わず引き金を引いた。

 わ、と声が飛び、肩を撃たれた兵士の手から銃がまた一つ、落ちた。

 いただき、とトパーズがそれを拾う。一瞬そのつくりを眺めていたが、何処か慣れた手つきで、BPと同じ様に兵士の肩を狙って撃つ。いい腕だ、と彼は思った。トパーズが飛ばした銃は、ゲームコックが拾った。

 そこへサイレンの音が響いた。


「連絡したらしいな」


 ヘッドはつぶやく。そしてやってきたビッグアイズに肩を借りて立ち上がると、額の汗を拭き、BPの方を向く。


「このままでは、房全員が『祈』らさせる。やるしかない」

「何を今更」


 けっ、とリタリットは笑った。それは彼がまだ見たことの無い、凶暴な笑みだった。しかし、その目は今までになく、ひどく生き生きとしていた。


「二手に別れよう」


 ヘッドは次々にやってくる118号房の男達に向かって言った。


「銃を持ってる三人は、一人は鍵を開けてくれ」

「それは俺が行く。ったく、オートコントロールにすれば、そこの部屋一個破壊すりゃ済むものをよ」


 トパーズはそう言って、金色の目をひらめかせた。どうやらこの慣れた手つきと銃の扱いは、都市型ゲリラの出らしい。こうなって初めて判るその人間の属性というものがあるものだ。


「BPは」

「判った。俺は管理棟へ攻め込む。とにかく武器を手に入れることが先決だな」


 よし、とうなづき、トバーズとドクトルK、それにエンジニーヤと呼ばれる男が、鍵の奪取に走った。


「ヘッド、大丈夫か?」

「大丈夫。骨は突き出たりしてないから、単純骨折だとは思う」


 そしてヘッドは先程自分達が乗ってきた車を指さすと、BPに向かって、あれに乗っていけ、と言った。


「それから、ビッグアイズ、お前も」

「オーケー」


 そして、何故かリタリットが車のエンジンを掛けていた。


「お前、吐き気がするんじゃないかよ!」

「吐き気がするよ! だから吐いてやるさ、連中のアタマの上にさ」


 判った、とうなづいてBPは助手席に乗り込む。機材で狭い後部座席にビッグアイズは乗り込み、言った。


「時間稼ぎ、だ」


 判ってる、とBPは答え、銃の中の弾丸の残数を調べる。銃が自分の手にしっくりくるのを覚える。ぐん、とリタリットはアクセルを踏んだ。


「いったれーっ」


 何故だかこれまでに無く生き生きと声を張り上げる相棒をちら、と見てから、BPは窓を大きく開け、前方を見据える。

 ひどく乱暴な運転に、よく考えたらこいつは軍用自動車には慣れていない筈じゃなかったのか、という疑問も湧くことは湧くのだが、どうもそんなことはどうでも良かったらしい。とにかくリタリットはアクセルを思い切り踏み、ライトを点けると、管理棟めがけてスピードを上げた。


「どう思う?! BP」


 背後でビッグアイズが訊ねる。BPはその問いかけの意味を問うことは止めた。予想はついている。


「奴らは、実戦慣れしてない。とにかく先制攻撃をかける!」


 開けた窓のせいで、声を張り上げないことには、相手に伝わらない。BPはだが、その動作のせいで、自分自身にも何やらわき上がる不可解な、だがひどくわくわくする様な感じを覚えていた。

 正直言って、命が掛かっているのだ。

 こうなるとは思っていなかったが、起きてしまったことには勝たなくてはいけない。


「そうでなくちゃ、もう後は地獄ヘルだ」


 BPはつぶやく。それだけは御免だった。この隣の相棒ではないが、自分にもまだ、知りたいことがあるのだ。

 相棒は慣れていないと言う割には、この地面と雪が半々の様な大地に車を器用に走らせる。クラクションを押し続け、ひどく耳障りな音が、周囲に響く。少しだけ開けた口元をきゅっと上げて、ひどく楽しそうな表情で、リタリットはそのまま突進させていた。

 一度棟内に入った看守の兵士達は、手に手に銃を持つと、入り口の前に並んで立って銃を構えていた。


「伏せろ!」 


 BPは叫びながらリタリットの頭を押さえた。途端、ガラスが一気に割れる音が響く。BPは目に破片が入らない様に注意しながらも、入り口の扉に向かってスピードを緩めず突っ込む車から、銃の口を出すと、引き金を引いた。頭の裏側が、ひどく刺激されている気分だった。


「突っ込むぜ!」


 短い言葉がリタリットの口から飛ぶ。BPは相棒の身体に手を伸ばした。この車にはシートベルトなんて気の利いたものは無い。衝突の衝撃と、慣性の法則は、そのままでは、自分と相棒を割れた窓から飛び出させかねなかった。薄い相棒の腹を、シートごと、その筋肉質の腕でぐっと抱え込む。そして、次の瞬間、ひどい音と衝撃が、車内に響いた。身体が前後に大きく揺れる。内臓が揺さぶられ、一瞬、吐き気が起こる。きゅー、と音が響き、車はそこで止まった。


「大丈夫かリタ」

「気持ちわりい。うー…… ったく誰のせいだ!」

「決まってるだろ」


 後部座席の機材と共に体勢を完全に崩していたビッグアイズは起きあがりながらうめく。


「ここに居る連中だ!」


 そしてやや変形した扉を両側から開けると、三人は棟内に足を踏み入れた。途端、背後から銃弾の気配がかすめる。ひっ、と息を吸い込むと、リタリットは車の前方に身体を引っ込める。数発BPが撃ち込んで、同じ様に駆け込んで来るのを待った。


「どうする」


 三人は顔を近づける。無論話しているうちにも、銃弾は彼らの頭の上を飛んでいく。時間は無い。そして銃弾にも限りはある。


「人質を取る」


 ビッグアイズは短く答える。BPはうなづく。それが一番単純で、しかも効果的な方法だと彼も考えたのだ。

 ちら、と辺りを見る。入り口から向かって右側に階段がある。車が入り口を塞いでいるうちに、素早く動かなくてはならない。


「収容所長室は何処だと思う?」

「こういう所のセオリイとしては、最上階だよな」


 リタリットは答える。


「何で」

「馬鹿ほど高いトコ、上りたがる」


 なるほど、とBPは思った。

 向こう側の攻撃が一瞬止んだ、と思われた。だが出ようとするリタリットの肩をBPは掴んだ。そして服のボタンを一つちぎると、大きく放る。雨の音の様に、銃弾が一斉に飛んできた。そのすきが出来たと思った時に、彼らは転がる様にして、階段の手摺りにしがみついた。

 確か、この建物は、五階建てだったよな、とBPは思い出す。彼らが入れられている棟は、最高でも四階だった。このあたりに管理する側の意図が感じられて、彼はひどく嫌な気分になる。

 カンカン、と靴の音が階段に響く。その間ににも、彼はこの建物の外観から、中の構造を予測していた。


「ちっ!」


 ビッグアイズは不意に上を向くと、その大きな目を開き、右手を鋭くひらめかせた。ぐぁ、という喉に詰まった様なうめき声がして、人間が彼らの頭の上から降ってきた。喉には、ひどく磨き込んだ金属片が深々と刺さっていた。

 正面から銃を構えた兵士が飛び出す。BPは迷う間も無く、身体が動くのを感じる。どさ、と前のめりになって兵士は階段を転げ落ちていく。

 横から飛び出す兵士に、リタリットはポケットのドリル片で切り付ける。首の頸動脈を正確に裂かれた兵士は、ぷつん、と自分の最後の音を聞いたはずだ。


「……くそぉ」


 ひどく正確な、慣れた手つきなのに、リタリットは口を押さえる。吐き気がするのか、とBPは思う。だが不本意もへったくれも無い。ここで止まることはできない。止まったら、死ぬのだ。本当に、死ぬのだ。


「も少しこらえろよリタ、どーせなら所長の顔にかけてやれ」

「う~」


 うめきながらも、リタリットは足を止めない。口を押さえながら、額に脂汗を流しながら、目に涙を浮かべながら、それでも走り続けていた。

 階段に点々と死体と死体候補が作られていく。だが彼らは五階にたどり着いた時、最後の難関が待っていたことを知った。


「……!」


 廊下に、数名の兵士が銃を構えていた。壁際に慌てて彼らは隠れた。そしてBPはやばい、と思った。心底思った。銃弾が足りない。いや、はっきり言えば、もう無い。あと一発二発というところだった


「どうする」

「扉は、この奥だ。突き当たり…… だな」


 予想はしていたが、最後の最後で、そういうものがあるというのはひどくBPにとっても口惜しいものだった。

 これが一人二人だったら、銃を相手が持っていようが、何とかなるという自信が彼にはあった。どうやら自分は確かに実戦の経験がある。手にしっくりくる銃の重みが、それを証明していた。だがそれだけに、無謀なことをする危険もよく知っていた。

 そしてこの仲間も、おそらくは、何らかの戦闘経験があるのだろう。


「……」


 ふと服を引っ張られる感触に、彼は相棒の方を向いた。相棒は黙って壁に取り付けられている、ひどく見覚えのあるものを指さした。


「……照明のスイッチ?」


 そうか、と彼は思った。もう溜まりそうで口を利けない状態らしい。


「ビッグアイズ、夜目がきくか?」

「馬鹿やろ、幾ら俺だってただの人間だ。そうそう利くかよ」

「じゃ、連中はもっときかないな」


 廊下に窓は無い。光の入る側に部屋が連なっているため、廊下は昼間でもただ暗かったし、夜となれば、もっと暗かった。照明だけが、その廊下の自由を約束していたのだ。


「リタ、俺が合図したら、こいつを全部切れ」


 ふふん、とビッグアイズは彼の意図を理解して笑った。リタリットは黙ってうなづく。ビッグアイズはじゃら、とポケットの中を探る。まだ幾つかのものが入っていたが、その手には、いつものナイフが握られていた。念入りに研がれたそれは、天井の灯りにぎらり、と光った。

 BPはさっ、と廊下の真ん中に立つと、その瞬間銃の引き金を引き、同時に叫んだ。


「切れ! リタ!」


 照明が一斉に消えた。わぁ、という声が、廊下中に響いた。


「騒ぐな! 銃は撃つな! 味方に当たる!」


 その場の指揮官だろうか、誰かしらの声が聞こえる。

 合間を彼らは駈けだした。BPは銃身を掴むと、くっとかがみ、前方の兵士の足をすくった。うわあ、という声と共に、幾名かの兵士が転ぶ音が聞こえる。そしてその手から滑り落ちた銃を拾い、思い切りジャンプする。

 暗さに目が慣れてくると、少なくとも、兵士と自分の仲間くらいの見分けはついてしまうものだ。それより早く、とにかく彼は前へ前へと、身体を進めた。

 ばん、と身体に衝撃を感じる。左の肩と、頭と、腕を一度に扉にぶつけたことを彼は感じた。そして扉だ、と改めて理解すると、押してみる。開かない。鍵が掛かっている。彼は最後の一発を手探りで当てたノブにぶちこんだ。空気が震える。

 右肩から体当たりすると、そう重くもない扉は、簡単に開いた。そしてBPはその中に居た人物に向かってそのまま走り寄り、目の前の人物の、驚きに開けた口の中に、つい今兵士から奪い取った銃の口を突っ込んだ。


「てめぇら見ろよ!」


 ひどく通る声が、部屋と廊下に響きわたった。彼が相棒の声だと気付くにはそう時間はかからなかった。


「殺っちゃうよ。あんたらの。いいの?」


 ひどくのんびりした、だがひどく乾いた声が、辺り一帯に響き渡った。そして口をぬぐいながら、リタリットはゆっくりと、口に銃を突っ込まれ、あふれ出す唾液を止めることも出来ずに恐怖に震えている男に近づいて行った。


「ったくあんたがこんなことしてくれるから、死体が増えたじゃんかよ」


 そういう問題だろうか、とBPは思いながら、既に戦意喪失して廊下のすみに固まっている兵士達を冷ややかな視線で見下ろしているビッグアイズを見た。その手に握られたナイフからは血が滴り、またその持ち主自身も、結構な量の返り血に染まっていた。血に混じって、吐瀉物もあちらこちらに飛び散ってはいたが、いずれにせよ、いつかひどい臭いを放つだろうことは、BPには予想ができた。

 気がつくと、外で地鳴りの様な音が響いていた。リタリットはそのまま五階の窓から下を眺める。


「おいBP…… ビッグアイズ!」


 声が弾んでいる。BPは黙ってうなづいた。

 銃は持っていたとしても、多勢に無勢だ。彼らが突破しただけ、の看守達を、トパーズ達が解放した棟の収容者達が制圧したのだ。


「そんなワケで、この収容所は、俺達が占拠した。あんたらが今度は、収容される番だ」


 BPは普段より低い声で、ぐい、と銃をねじこみながら宣言した。

 リタリットは部屋の中を見渡すと、備え付けのトイレに掛かっていたタオルを持ち出し二つに裂くと、それで所長を後ろ手にして縛った。


「……ったく、手こずらせてくれるからさぁ」


 指を二本、口の中に突っ込むと、まだ残っていた吐瀉物をべったりと所長の顔に塗りつけた。BPもビッグアイズも、それを見て苦笑いするしかなかった。

 下から応援に来た仲間達と、生き残った兵士を縛り上げると、彼らはゆっくりと階下に降りて行った。

 ドクトルKの手当で、骨折した足に添え木を当てたヘッドはにっと笑うと親指を立てた。やはり親指を立てて返す返り血や擦り傷があちこちに飛んでいる彼らの姿に、解放された政治犯達は、一斉に雄叫びを上げた。


「どのくらいの兵士が生き残っている?」

「半分かな」

「何ってえ腕だ」


 マーチ・ラビットは肩をすくめた。あの格子の間から身体が出なかった男は、出遅れたことに物足りなさを感じている様だったが、根に持っている様子はなかった。実際、扉が開いてから、素手で看守達を何人も殴り倒したのは、この男だった。


「それを言うんなら、何って格好だ、って言って欲しいね。ヘッド、俺ら着替えてもバチ当たらないよな」


 ビッグアイズは、服の裾で愛用のナイフについた血を拭いながら問いかけた。いいんじゃないのか、とヘッドは言いながら辺りを見渡す。とりあえず反対する者は何処にもいなかった。とりあえずこの場で、この三人に敬意を表しないものは居なかった。

 その場で当座の仕事の割り振りが決められ、しばらくの間使われていなかった棟へと、捕らわれた兵士達は収容された。倉庫にあった防寒具が彼らには配られた。そして、これだけでは凍えるではないか、とわめく彼らに対し、もと囚人の一人はこう言った。


「そう言ったのは、もともとあんた等だ」


 新しい囚人達には、返す言葉も無かった。

 倉庫の中から替えの服を久しぶりに取り出すと、BP、ビッグアイズ、リタリットの三人は、顔や手についた血を管理棟の湯でぬぐいながら着替えをした。

 事が起こってみないと判らないことがある、とこの二人の戦い方を改めて思い返してBPは思った。リタリットは勢い良く出る湯で口をすすいで、あーさっぱりした、と肩をすくめた。


「大丈夫かリタ?」

「あーもう平気。でもやぁね。オレあんまり血は見たくないのよ」


 あれだけ正確に人を一撃で殺せる腕を持っているとは思えない言葉だった。


「そう言えばリタ、お前どうやってあの格子が切れると思ったんだ?」

「切ったのか?」


 状況を知らないBPは眉を吊り上げた。


「オレ手癖悪くてさー」


 ドリルの刃が彼の頭をよぎる。だがどうやら手癖が悪かったのはそれだけではなかったらしい。


「前に食堂から塩ちょろまかしてさ。暇な時に塩水かけてドリルの刃でこすってたんだけどさー」

「計画していた?」

「まさか。気休め気休め」


 しゃらっとリタリットは言う。そんなこと、いつやっていたのか、BPもビッグアイズも気付かなかった。


「ま、いーじゃん。終わり良ければ全てよし、全て世はこともなし」


 ビッグアイズはやや複雑に表情を歪めたが、すぐにしょうもないな、という顔に変わった。何はともあれ、あの時必要だったのは、きっかけであったのは事実なのだ。

 皆が皆、心の中では脱走を夢見ながらも、この冬の惑星の冷たい大地と大気の中で、そんな夢すらも凍らせていたらしい。だが夏期は、そんな凍り付いたものを、どうやら少しでも溶かしてくれていたのかもしれない。


「おーいビッグアイズ、ちょっと来いや」


 ヘッドの呼ぶ声に、着替えを済ませたビッグアイズはお先、とその場を立った。ついでに、と出てくる湯でリタリットは顔を洗っている。


「帰ったらさあ、まず風呂に入るんだ」


 ぷるぷると頭を振ると、淡い金髪から水滴がぽたぽたと落ちる。


「そうしたら、この身体に染みついた血の臭いも、取れるかな」

「おいリタ」

「ねえBP、キスしよ」


 不意に言われたあまりにも隔たりのある言葉に、BPはそのつながりが読めなかった。だから一瞬、反応が遅れた。リタリットは髪の先から水滴を落としながら、ぐっ、と彼の頭を抱え込むと、唇を重ねた。

 それは、最初に出会った時の、音ばかりが先行する様なものでもなく、普段たわむれに触れるばかりのものではなかった。間近な目が、あの、兵士を一撃のもとに倒した時の色を浮かべている。


「……帰ったら、風呂に入るんだ」


 リタリットは繰り返した。

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