6枚目 200円のチョコレート

 サトちゃんが買ったチョコレートは200円くらいするちょっといいやつで、私たちは遠慮しがちに食べたり、譲り合ったりしました。


「さっきテンコが言ってたやつだけどさ、それってどんな感じの音なん?」


「あ、私も気になるわ。大好きっていうくらいだから気になっちゃうわね。」


「あ、Neutral Milk Hotel?今スマホに入ってるよ~。聴いてみる?」


「何なら今流そう。」


 ということで私はスマホを操作して音楽を再生する。


「おー、アコギ。音デカ!音割れてる!デイヴ・フリッドマンか!?波形が海苔みたいになってるんじゃないのか?」


「んーん、ロバート・シュナイダーって人だよ。The Apples in StereoとかThe Olivia Tremor Controlとか、Elephant 6関連のバンドに参加したりプロデュースをしてる人。」


「うわ、二曲目の"King Of Carrot Flowers Part 2 & 3"ヤベえ。感情めちゃくちゃ籠もってるヴォーカルにこのがむしゃらな疾走感!音割れも相俟ってすごいパワーを感じるぜ!これは名盤ですわ~!」


「なんていうアルバムなの?」


「2ndアルバムで、"In The Aeroplane Over The Sea"っていうタイトルだよ。ジャケはこれ。」


 そう言って私は、海の上で手を上げてる子供と顔のない婦人がいて後ろでは人が溺れているジャケットを見せる。


「シュールだな……。」


「かわいいよね~!」


「かわいいかしら……。」


 公園には夕日が差してきて、犬を散歩させている人たちがお互いに挨拶を交わしている。こういう何でもない風景が音楽ひとつで素敵なものに見えるのだから不思議だ。私は音楽を聴いているときの、こういう現実がフィクションになる瞬間がたまらなく好きだ。


☆ ☆ ☆


Neutral Milk Hotel - In The Aeroplane Over The Sea - 1998

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