リアルに描かれる、3.11という悲劇……。

僕も3.11に関するノンフィクションを書いているので、この作品を初めて見たときは同じようなものかなと思っていた。
しかし、蓋を開けてみるとフィクションであることが判明。

一体どういうストーリーだろう……と思ってみていたら、いつのまにかすべて読了していた。
それほどの魅力と力強さがある作品だと思う。

まず、フィクションでありながらも生き生きとした主人公の感情や描写。
作者様が学生のガチ鉄オタであることは前々から存じ上げていたので、鉄道関係の知識や描写に関しては言わずもがな脱帽。
そして、まるで本当に起こったことなのではないのだろうか、もしくは似たような体験をしていた人がいたんだと思わせられる程の、リアルな感情の揺れ動きを捉えている。

最後に、3.11という悲劇をフィクションであっても確かに伝えられるのだ、ということを僕に気付かせてくれたことに最大の感謝。
僕は3.11という一種の重いテーマを書こうとしたときに、自分が現地で見て聞いたことをそのまま書き、それから自分の主張を書いた方が説得力が増すだろうと思っていた。
しかし、この小説では作者自身の主張というものが一切露骨には入っていないのである。
それなのに、とても作者が伝えたいことというのがすんなりと入ってきてしまう。
儚くて、悲しくて、どこか前向きなこの作品がもっと多くの人に知られることを願う。