第2話 探索


「つまり、私があの石を触ったことによって【市長権限の加護】なるものが与えられたわけなんですね。そしてここは私のいた世界ではないと」


 ――ええ、その通りです。そしてここをもっと大きく豊かにする義務が発生したわけです――


「ふーん。義務を投げ出すのはだめなの? 私ここ知らない土地だしここを開拓する必要性も感じられないし」


 ――義務を投げ出すと【市長権限の加護】によって死にます――


「ひっどい!!」


 ――しかし【市長権限の加護】は加護が大きいですよ。今私と普通に喋れているの、不思議だと思いませんか?――


「あ!! 確かに!!」


 ――権限の加護によって、チートできるような能力は持ち合わせておりませんが、ほとんどのことが少々できるようになっております。【以前住んでいた世界におけるそれなりの知識】に【この世界の浅い知識】そして【領地経営技術】は基本として、【狩猟技術】、【農作技術】、【サバイバル技術】、【魔法技術】……等々。【言語技術】もまたしかり、です――


「なるほど……。あ、魔法あるのですね……」


 ――あります。あなたはこの世界へ転移してきました。加護も大きなものとなるでしょう。見たところ、技術を使う際の成長率がとても高くなっていますね。――


「え、判るんですか? ……というか繰り返し聞くけど、やっぱり異世界なの?」


 ――はい、あなたの時空が歪んでおりますから。あなたにとっては異世界です。さあ、話はこれくらいにして、本題をやりましょう――



「うん、名前付けだよね。開拓地の」



 ――いかがいたしますか――


「開拓地はパールライト、パールライトにする。おとぎ話の主人公の名前なんだよ!」


 ――わかりました。この周辺には一通りの資源が眠っております。有効活用してください。それでは私はこの辺で、また必要になったときは自動的に起きますので――


「わかったまたお眠りよ。わたしがきつね亜人ってことを教えてくれてありがとうね」


 エメラルドの石はただの石に戻っていきました。

 私はきつね亜人なんだそうです、オッドアイというのはユニークらしい。



 なんか、市長になっちゃった。市長! 市長! しーちょーお!


 まずは【市長権限の加護】によって唱えられるようになった【時計魔法】と【方位磁石魔法】を発動。脳内に常時月日と日時そして東西南北が分かる時計が現れたよ。わーお。

 【この世界の浅い知識】とこの【時計魔法】とでわかったんだけど……。


 この星は一日は四〇時間、一週間は一〇日、一か月は五週間、一年は八か月みたい。八ケ月で短いと見せて一日が長いから、地球一年より一年の時間があるのかな。現在は二月三日。なんか小春日和って感じの陽気だなあ。




 魔法を唱えてみたはいいものの……えっと、どこから手を付ければ良いのかな?

 道具、かな?道具がないと何もできないよね。魔法でいろいろ代用できそうだけど、まずは道具だ。


 何処か探索して、街か村を見つけて、そこでどうにかならないかな。あ、見つけた居住地で一時的に働くという手段もあるよね。市長放棄には……ならない、よね?


 よし、手に持てる分の果実をもってどこかに行ってみよう。方位磁石は頭の中にあるから戻ってはこれる。


 広大な草原を歩いてみること30分。端にたどり着かない。そこまで大きくはないけど、それでも想像以上に草原は大きいみたい。

 歩いて分かったんだけど、喜怒哀楽にしっぽは反応する。現状、心がくたばってきていると共に、しっぽがだんだんとくたばってきている。

 

 もうちょっと歩いていたら急に起伏が出始めました。今まできれーーーに平坦だったのよね。

 そして起伏を登って発見したるはちょっとした川。ここは小屋から見て南西の所だね。

 人って水の近くに住んでいるから、これをたどれば集落に出会うんじゃないかな?

 なんとなく下ってみることに。歩け歩け大会開催だ!


 どんどん下っていくと森の中に入ってしまいまして。ちょっと森は嫌ですね、肉食動物が出る。でも進むしかない、と思う。いやー、もし出会ったらこっち素手ですよ……。出ませんように、出ませんように―。



 で ま し た 。

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