第13話事情聴取

多少変な流れはあったが、無事事情聴取に入った。


「んで?アンタたちはあのアリエスを知ってんだ?」


その値踏みは多少気になったが、私は頷いた。


身を乗り出したお姉さんの胸に潰されたフラちゃんも。

_頷いたんだよね?

じたばたしただけかもしれない。

「具体的なことって聞けるかな?」


魔法や街の雰囲気からすると元の世界とは違うこともわかる。


それにこちらはファーリアの研究専門のチームだ。

推定にすれば時代は原初または中世くらいであるはず。


それにしては街の雰囲気が文化的すぎる。

ということはファーリアの中でもかなり未来の方に着いたらしい。


アナログな文房具を指で回し、メモを取ろうとする彼女。


_ペン回し懐かしいな。

恐らくペンではないだろうが、文具は存在するらしい。

「そんなこといいから早く」

おっと聞こえてた。


アリエス様についてだった。

その、私に彼女を語れと言われると色んなとこにデートに行ったことくらいしか覚えてないぞ?


「それで十分。薄々わかってると思うけど彼女もういないから少しでも情報が欲しいんだ」


ぽろぽろ


「あぁごめん!でもさ記録では原初祭壇都市の時代の人間だよ?生きてるワケ、、」


「うわぁん!」


「ちょっと!ホントに情報収集する気あるの!?」

私が本格的に泣いて這い出たクマが庇いに入った。

「うぅごめんなさい」

そして自分よりちっこいクマに頭を下げる王国騎士。


しゃーない。

こっからは元研究機関職員の私から話してあげよう。

アヤ、泣き止んだら服を着な?


ぐす


アリエス・ルゥ。

本名フェリオ・フェブラーシェ。

失踪時26歳。


失踪扱いになってるのはそれしか登録のしようがなかったから便宜上ね?

ホントは元素分解してファーリアに来た一研究員。

私らからすればついさっきの話なんだよね?


私はその下にいた研究員なんだけど、お互いに覚えてはいない。


名前くらいしか知らない同士だった。

アタシは所内で噂の凄腕がいるって話だけを聞いて憧れてたクチ。

所属は同じでも見たことも会ったこともなかった。


口調に合わせて態度も横柄になっていく白モコのぬいぐるみ。机に乗せた足はギリギリ。



その凄腕が組織を抜けようと企んでると知って真っ先に協力したわ。


彼女は本当に世界を征服してでも平和にしたかったみたいだから、組織の考えには合わなかったのよね。


当時は私も若かったから、その勢いに感化されて人員集めて決起したわ。


私はこの娘とアリエスを逃がして自害した。


人生ここで終わったはずだった。


ところが!


ガタッ


力が入って落ちかけた勢いのまま身を乗り出して、



私の中に残っていたらしい紅子結晶リットミールが完全に止まった心臓を動かしたの!


「落ち着いて近いから」


ぐぃ


とにかくそのおかげで息を吹き返したアタシはそのショックで一時的に記憶を失い、アンシャル化したわ。


そこにアリエスが現れ再会したのよ。


直接会った仲じゃないから再会は正確じゃないけどね。


うっとりする白モコをじっとりした目で見つめるアヤ。


アヤは服のボタンを止めてから、

「私はその間もずっとアリエス様のそばにいましたよ?」

自分の方がずっと一緒にいたという謎のアピール。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る