第11話研究再開

前向きに考えれば研究に没頭できるということだ。


それに最近では友達も多い。


ファーリアは思っていた通り元素の豊富な土地で、そこら中に精霊がいた。

時々親しげにそれらが話しかけてくれた。

相変わらず頭に話す形は変わらないが、それももう慣れたのか痛みは走らなくなった。


とにかく精霊達の豊富な知識とグチ、技術なども教えてもらい、ほとんどのことをゼロから学び直していった。


ここで私は元素記号を新たに作り直していた。

_何やってんの?

光の精霊が覗き込んできた。

眩しいから離れて。

_ごめん。


あぁごめんごめん。

悪かったから落ち込まないで。

光がくすんで闇落ちしかけていた。


元素記号は既存のものにプラスするような形にまとめていった。


精霊達の意見も聞きながら、全く新しい記号も作っていく。


そんな日々の中、水の精霊が持ってきてくれたフルーツ100%ジュースをすすって休憩していると、


アリエス様。


アヤの声が聞こえた気がした。

顔を隠して一人、泣いた。


恥ずかしいことじゃないと思っていた。

でも、辛かった。

誰もいないこの世界が。


しかし、ファーリアを救うことができなければアヤも死ぬ。

そう思うとがんばることができた。


一緒に持ってきた聖剣「クウィンルゥ」を片手にもう一度基礎からやることにした。


何年かかってもいい。

時間はそれほど問題ではない。

私はアンシャルなのだから。


問題はなぜ紅子結晶がひび割れたか、

それは防げないのかだ。

まずはそこに着目することからだ。


これだけ密度の高い元素石ならば簡単に壊れるはずはない。

やはり経年劣化なのだろうか。


しかし、アンシャルの結晶になったほどのものだ。

それが壊れるには私の見立てではどう軽く見ても1000年いや10000年は必要だろうか?


この密度が解けていくのに100年、ひびが入るのに200年、無数に砕け散るのに、数百年、やはり1000年以上はいる試算になる。


これ程の硬度を維持することができるのはやはりここの環境があってこそだろう。


そしてやはり、


心は決まったか?


ここに生きここに死ぬことは既に決めている。


やはり神獣達の存在が大きい。

あるいは原生鱗神龍が何かしているのかもしれない。


「すまない!原生鱗神龍様に会うことはできないだろうか!?」


それはできない。


我々にも姿を現されないのだ。


「ではなぜいると?」


わからない。


ただこの祭壇都市を守れと言われている。


「どうやって言われた?」


今私がしているような方法でだ。


「それが善だという保証は?」


それはない。


「そうか」

どうやら操られているなどの類ではないらしい。

それに元素世界でもその名前には覚えがある。


所謂神というものだ。


いや、それより世界樹の方が近いか。


赤竜達神獣はその神龍様によって生まれたらしい。


世界と共に生まれ、まず目的を与えられたそうだ。


_私達にはなかったな。

人間には特に与えられることはなかった。

_自分達で見つけろということか。

それが人間の目的というものだった。





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