第4話グリスグロッサム

 一度研究室に戻り彼、グリスグロッサムのことについての研究を始めてみた。


「アリエス様。何してるんですか?」

 彼のことを少しね。

 気になってるんですか?


_ん。まぁ。

「彼氏みたいですね」

_そうなるのかな?


 私に恋について説かれてもよくはわからない。

 恋などしたことはないからだ。

 アヤはよく勿体ないという。

 アヤ曰く私は美人だそうだ。


「可愛い系より、綺麗系かな」

 とか言っていた。

 しかし研究のことが気になって彼氏がいてもきっと相手はできないだろう。


 話が逸れた。

 私が研究しているのはグリスグロッサムの成分と彼自身の能力についてだ。


 彼はどうやら生きているという見解であっているらしい。

_そんなことがありえるのか?


 ファーリア製の鉱石で恐らく作られた彼には莫大な「魔力」のようなものが込められており、ファンタジー風に言うと「魔剣」だった。


 調べてみたところ、彼は周囲の広義においた「ストレス」を吸収して自らの「魔力」に変換する能力があるらしい。


 ことによってはそれを周囲に放ったりすることもできるという。

 私はすぐに彼に協力を依頼、解析して「聖剣」の製作に取りかかった。


 彼を構成する物質はクウィウル鉱石というらしい。

 幸い彼と同じところで獲れたのでこれを使うことにする。

「博士。これが生きている鉱石なんですか?」

 博士というのはやめてくれ。

 まだ何の功績も上げていない私には過ぎたものだ。


 そう。元素世界では埃からそこらのビル壁などに至るまで全て元素、微粒子にしてしまうことができるらしい。


 まだ確認はとれていないが、それらを任意に養分にできるのではないかと私は考えていた。

 とりあえずファーリアのことはあとにして、私はこの世界の洗い直しを考えていた。


 知った気でいただけかもしれない。

 この世界のことを。

「んふふ、楽しそうですねアリエス様」


 アヤに私がそう見えたということはきっとそうなんだろう。

 もとより直感が鋭い上にアンシャルのアヤには私の感情が視えてしまうらしい。


_気をつけないとな。

 さて、「聖剣」など作ってどうしようというのかといえば、それは来るべき時に勿論備えてのことだ。


 ここ元素世界において、今までその兆候は見られなかった。

 だが、アンシャルのようなものが現れグリスグロッサムのようなものが現れると流石に夢幻とも言い難い。


 この世界は必ず危機に陥る。

 それを見越して私はできる限りのことをしてみたいと思った。


「アリエス様。無理しないで下さいね」

 元より無理無茶は承知の上。

 私はアンシャルの加護が続く限りはやっていくつもりだ。

 既に滅びたこの元素世界のためにも。


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