3 指輪をひそませて

「どうぞ、お帽子を」


 つるべ落としに日が暮れた夕餉後。


 ロレーヌさんの見送りに出た玄関先で、わたしは昼には止んでいた雪が再び降り出していたことに気がついた。


 吐く息は白く、瞬く合間に宙へ溶ける。帽子を差し出す手の甲に落ちてきた六花もまた、すっと溶けて水の珠となって肌の上を転がり落ちていった。


「今夜はかなり冷えますね……。ロレーヌさん、本当にお俥をお呼びしなくてよろしいんですか?」

「うん。グランドホテルまではそうかからないからね。雪に降られて歩くってのも、オツなものだろ?」


 たしかに冬にしか経験できないけれど、ここからグランドホテルまでは下り坂がいくつも立ちはだかっている。


「滑らないようにお気をつけて。今日はクリスマスのプレゼント、本当にありがとうございました」

「僕からも後日返礼してやろう。許嫁殿が随分と世話になったからね」


 なぜか上から目線の台詞を繰り出した水哉さんに、ロレーヌさんは「おおいに期待しているぜ」と笑った。


 颯爽と去っていった彼の後姿を見送り、わたしは水哉さんと一緒に温かなダイニングに戻る。

 腕についた雪の結晶をはらってから、彼は悠々とソファに腰かけた。そうして手にした煙草に火をつけて口にくわえる。ため息をもらすように細く紫煙を吐き出した水哉さんを横目に見ながら、わたしは窓の前に立った。


「雪、あまりひどくならないといいですね」


 暖炉の火はいまだ煌々と燃え続けていたものの、彼のかたわらに置かれたままだった紅茶はすっかり冷めているようだ。


「すぐ温かいものを淹れなおします」

「これでいい」


 さっそく先ほどいただいた生姜茶ジンジャーティーをお淹れしようと思ったわたしを制して、彼はシュガーポッドを引き寄せた。

 そして、片手に折りたたんだ新聞を持ち、空いた手で角砂糖をティーカップに投下し始める。


 その間、二秒。


 私は即座に、水哉さんの手からシュガーポッドを回収した。


「角砂糖は一日みっつまでってお約束しましてよ! 先ほどもたっぷりお入れになっていたじゃないですか」


 本日二度目の進言にも、水哉さんは表情ひとつ変えずに澄ましたものだ。


「琴子くん、君は知らないかもしれないが……」

「……これ以上、胃に入ればひとつなどとおっしゃるなら、一日九グラムまでとお約束をしなおさせてもらいますよ」


 過ぎたるは猶及ばざるが如し。

 どう考えたって砂糖の食べすぎは健康に悪いのだから、なるたけ控えてほしいというものだ。そう訴えたわたしに、水哉さんはふっと笑う。


「Q? 悪くないな。アルファベットの十七番目、すなわち僕は十七個の角砂糖を入手する許可を得たわけだ」

「日本語の九です、それから単位は個数ではなくてグラムですからね」


 私は念には念を入れて念押しをした。

 水哉さん相手の取引は少しの油断も禁物だ。いつだってこちらの言葉のあらを探しては、ご都合のよろしいほうへ持って行ってしまうのだから(しかも割合、雑で強引だ)。


「善処しよう」


 水哉さんは薄笑いを浮かべて答え、新聞を眺めだした。本当に善処してくれるのかは、不明である。わたしとしては、かなり怪しいと思う。


「ところで水哉さん。その新聞、朝も読んでいらっしゃらなかった?」


 目の前に広がっているのは今朝、わたしが女学校へ行く前に見たのと同じ光景だ。

 窓の外は暗い。まるでこの部屋の時計の針だけが巻き戻ったようで、わたしは小首をかしげた。


「掲載されている身の上相談を見るのが好きなんだ。何度だって読めるとも。君もどうだい。砂糖菓子も及ばないほどの甘ちゃんを眺めるのは実に愉快だよ」

「…………」

「……冗談はさておき」


 本当に冗談だったのかしら。とても気になるところだ。


「琴子くんの言っていたラッキー・リングとやらの広告が、紙面に載っていたのを思い出しただけだ。そら、これじゃないのか」


 水哉さんは掲載された広告をたしかめるようにわたしに見せてくれた。


 紙面には『この指輪で幸福になれます! 後から後から不思議に幸運を招く』『ラツキー・リング』の文字が踊る。

 ちなみに金環巻ひとつ二圓五十銭。たい焼きが一尾一銭だ。なんとたい焼きなら二百五十尾も変えてしまう計算! やはり女学生には高嶺の花である。


「でも、ね、高貴でしょう? 黒地に金の巻き帯なんて、ちょっとハイカラだもの」

「欲しいなら用意させるが」


 すぐさま返ってきた言葉に、ほんの少し困ってしまう。


「そういうわけじゃ……。……水哉さんは、やっぱりわたしに指輪をしてほしくって?」

「無論、それは君の自由だろうさ。許嫁としては、なぜそうも着用を拒むのかはいささか疑問だが。先ほども言っていただろう。なんだったかな、食い扶持換金用リングだったかい」


 遠回しな言い分だけれども、随分と不満がたまっていらっしゃるらしい。

 なにせ彼はいつでもきっちり婚約指輪をしている。水哉さんから見たら、わたしは許嫁の義務を果たしていないようにも見えるのかもしれない。


「君の立場を周知するにもちょうどいいだろうに」


 けれど、この言葉からもわかるように、その理由は女除けであることをわたしはもう知っている(つまり、もう相手がいるので構わないでください、というわけだ)。


「指輪がなくても、わたしの立場は変わらないでしょう?」


 だから、わたしは意地を張って答える。


「それに、あの指輪はちゃんと……」

「ちゃんと?」

「……なんでもありません」


 余計なことを言いかけて、わたしは慌てて唇を引き結ぶ。

 水哉さんは、溶けきらなかった角砂糖が底にじゃりじゃりと溜まっている紅茶を、苦虫をかみつぶしたような顔をして飲み干した。


「と、とにかくですね、指輪ってなんだかとっても特別なものの気がしてしまうのだもの。だから、あの指輪もお返ししないとって思ったんです。きっと、大切なものでしょうから。靴箱を間違えてしまったなら、なおさらわたしが持っているわけにもいかないかと思って……」


 ずるいと知りつつ話を変える。

 水哉さんは肩をすくめて新聞を畳んだ。


「……。君の靴箱には、よく贈り物が入っているのかい」

「? ええ、クラスの方とお手紙の交換や贈り物をする時は靴箱にお入れしますから」


 そう答えると、水哉さまは顎に指をあてて、伏し目がちになった。

 それは、考え事をする時の彼の癖だ。


「水哉さんも一緒に指輪の持ち主の方について、考えてくださるの?」

「僕としても馬の骨は気になるんだ」


 ご自分のものに手を出されるのがお嫌いな性分。


「まあ、もっともありがちな推測としては先方の間違えだろうがね」

「あっ」


 そうつけ足された言葉には、思い当たる節がないでもない。


「もしかしたら頼子さんかもしれません! 今日、下駄箱の前でお会いしたのだけれども、なんだかがっかりしてらっしゃったの。あの時、指輪をお探しだったのかもしれないわ」


 こっそり、どなたかの靴箱に入れようとしたところで、別の方たちが下駄箱に来てしまった。そこで慌ててしまい、入れるべき場所を誤ってしまったのでは。

 わたしはそんな推測をしてみた。


 頼子さんのような人気者が、クラスの誰かを特別に想ってプレゼントを贈る……。


 そんなことをしたらあっという間に噂になるはずだ。誰だって、噂されるのは快くない。それを避けようとして、焦ってしまったという可能性もゼロではないだろうけれど……。


「……ううーん、でも頼子さん、そんなおっちょこちょいには見えないわ……」


 なにしろ聡明な美人ということでクラスの憧れになったような人だ。


「それなら、どこぞのおっちょこちょいが、なぜ早まって君の靴箱に入れたかを考えてみるべきだな」


 水哉さんは退屈そうに頬肘などついて、ランプのあかりをぼんやり眺めやる。

 ぱちりと、また小さく火がはぜた。


「本人以外がどれほど懊悩しようと、誤った理由など推測の域を出ない。特に、この件に限ってはどこのどんな性格の誰が間違えたのかも知れないのだからね。それなら、どうすれば君の靴箱を間違えるかを考えてみるべきだ。これも一番の可能性は理由なし、勢い任せの早合点というものだろうが」


 そう言われてみたものの、どうしたら私の靴箱を間違えるかなんて見当もつかない。

 なにしろ下駄箱にはなんの変哲もない靴箱が、理路整然と積み立てられ並べられているのだ。人と違うものといったら……。


「あっ、プレートはどうでしょう? 靴箱のプレートにはアルファベットがふってあるんです。わたしはIなのだけれど、慌てていて1と見間違えてしまったとか」


 先ほど、水哉さんが数字の9にQをかけて言葉遊びをしていたのを思い出す。


「それなら、1と間違えたことになるわけだが。アルファベットのうち、1番はじめ……Aは誰だい」

「……甘利、甘利頼子さんです」


 彼女はもしかして、誤って入れたのではなく、自分の靴箱に入っているはずだったこの指輪を待っていたのだろうか。


(そういえば、頼子さん、指輪なさってなかった……)


 ゆりえさんが頼子さんのご結婚のお話をされていたけれど、放課後に下駄箱でお会いした時は白魚の指を飾るものはなにもなかった。

 彼女は婚約指輪をもらわなかったのだろうか。それとも、あえてつけなかったのだろうか。


「では、彼女の指のサイズを知っているのは誰だろうね」

「んんー……、わかりません……。頼子さん、お優しくってみんな大好きなんですもの。だけど、特別なお友達ってクラスにいたのか覚えがないです」


 頼子さんはいつも静かにひとりで過ごす方だった。いつだって日陰でそっとほころぶ花のような、人には頼らない高潔さを兼ね備えていた。だからこそ、その堂々とした態度にみんなは憧れたのだ。


 そんな彼女の指輪のサイズを確認する方法を、わたしは想像してみる。

 直接尋ねるのは恥ずかしい。そんなことをすれば、指輪を贈ろうとしていることに気づかれてしまうから。


 それなら自分の指輪をお貸しして、大きいか小さいか調べる? ううん、それだって何度か繰り返さないとぴったりのサイズはなかなか見つけられなさそう。では、指をキュッと握って……。もっと難しそうだ。そんな探偵みたいなこと、ただの女学生にはできっこない。


 あれこれ考えては、わたしはうんうんと唸り続けた。


 水哉さんが「まるで『唸る獣』の鳴き声だ」などと揶揄してきたけれど、聞かなかったフリをする。


「……あっ! 寄宿舎の同室の方! 同室の方なら、頼子さんがお眠りになった時に糸や紐で指回りの寸法を確認できます! 頼子さんには同室に妹がいらっしゃったんじゃないでしょうか。ご婚約なさったのに指輪をしていなかったのは、彼女のためだったのかも……」


 わたしはつい先ほど、ロレーヌさんが披露した妄想を思い返す。

 今度こそ、符合するような気がした。頼子さんは妹に心を捧げていたのかもしれない。


 彼女は自分のために贈られる指輪に気づいており、それを待っていたのだ。けれど、その指輪は手違いでわたしのもとに届き、彼女の靴箱には入っていなかった。だから頼子さんは、あんなにさみしそうな目で下駄箱を離れるのを惜しんでいた。


 待っていたからだ。大切な人が用意してくれた宝物を。


 わたしが推理を披露すると、水哉さんは片方の眉をくっと上げた。


「中らずと雖も遠からずだろうね」

「当たってないですか?」


 小首をかしげると、水哉さんは足を組みなおした。それからぐっと前のめりになって、わたしを見つめる。


「琴子くん。まず、前提を覆してみたまえ」

「前提……?」

「すべての男が婚約者に指輪を贈るとは限らない。また、すべての女が婚約指輪をはめるわけでもない」


 それはおっしゃるとおりかもしれない。思い当たる節がありすぎて、わたしは目を泳がせた。


「そもそも、婚約話の根拠が噂話というのも些か疑問が残るね」

「婚約はわたしたちの勘違いってことですか?」

「婚約なら、一応はめでたい話だ。本人の心中はともかくね。それを誰にも言わずに学校を去るというのも気にかかる。実際は言いづらいことだったのでは? 直接その事実確認をした者はいないのだろう? それでは、婚約以外に苗字が変わるのはどんな場面か? 明白だ。親の離婚だよ。さして珍しい事例ではない。とはいえ、子が妻とともに苗字を変えて学校もやめるというのなら、父方の事業の失敗、あるいは父の死別に伴い、母方に子ともども引き取られる、などだろうね」


 水哉さんは一息に言い切ると、後はもう興味をなくしたように言葉を切った。


 わたしはひとりで学び舎を去った頼子さんの後姿を思い出す。


 今日の別れ際。あの人はあんなにもさみしそうだったのに、どうして追いかけて声をかけなかったのだろう。非力な一学生のわたしが声をかけたところで、なにができたわけでもないだろう。それでもわたしはなんだかとても薄情なことをしたような気がして、しんみりと肩を落とした。


「とはいえ、これはすべて僕の憶測にすぎない。真相は、本人にしかわからないよ」


 そんな私を見て、水哉さんは忘れていたようにつけ足した。


 それから、おもむろにわたしへと手を伸ばした水哉さんの指が、髪を束ねるリボンに触れる。

 彼がリボンの裾をつまんだ腕をつと引けば、ガバレットははらりとほどけた。ぱらぱらと肩口に零れたわたしの髪を、水哉さんは指先で梳く。


「なにをなさるの?」

「……寝支度を整えてやったんだ。もう遅い。今日は休んで、明日は早いうちに寄宿舎に行ってみなさい。彼女の妹とやらに確認して、指輪を渡してやればいい。クリスマスだぞ、プレゼントを贈るには今日よりずっとふさわしい」

「……! はいっ、そうします!」


 きっと、彼女はこの指輪を探しているはずだ。

 すでに日は暮れ、寄宿舎の門限は過ぎているため、わたしは明日の朝いちばんに指輪を届けに行くことにした。


 ぱたぱたと水哉さんのもとを離れ、部屋を後にする際に一度だけ彼を振り返る。


「おやすみなさい、水哉さん」

「ああ」


 彼は、こちらを見ることなく頷いたのだった。


 * * *


 ——……冬の朝の訪れは遅い。


 目が覚めた時、部屋はまだ薄暗かった。わたしはお気に入りの羽織を肩にかけて、暗い部屋の窓を開け放つ。


 眩しい。そう思ったのは、降り積もった雪のためだった。


 張り詰めた空気の満ちた街角は白く雪化粧を施されている。それが東の空から覗く太陽の光に輝いていたのだ。風が吹く度、粉雪が散り、ぴゅうっと湿っぽい空気が部屋に滑り込んでくる。


 わたしは手早く朝の支度を済ませると、通学用のはかまに着替えてリビングに降りた。

朝食を済ませた水哉さんはソファに腰かけて、新聞を眺めている。


「それじゃ水哉さん、行ってきます! 帰りに寄宿舎のお友達にもクリスマスのご挨拶をして、お昼までには戻りますから」

「急ぐ必要はないとも。僕も午前中は出かけるからね。クリスマスくらいはゆっくりしてきたまえ。特に今朝は路面が凍結している。そそっかしい君のことだ。スケートもどきに興じてひっくり返りたくなければ、走るのは止すことだ」

「そうしておきます。せっかく華麗なスケートに成功しても、お見せできないんじゃ残念ですから」


 わたしが絶対に転ぶと信じているらしい水哉さんに反論して、わたしは屋外に躍り出る。

 まっさらの雪に足跡をつけながら進むこと、半刻ほど。


 寄宿舎に向かう道中に立つ学校の閉じた校門の前に、わたしは先客を見つけた。


 不安げに校舎を見つめる幼き子の後姿に、足を止める。きっと彼女だ。あの指輪を贈ったのは。初めて見る子だけれども、そんな予感があった。

 わたしは積もった雪を踏みしめ、真新しい足跡をまたひとつ、ふたつ、刻みながら彼女に歩み寄る。


「あの……、もしかして、指輪をお探し?」


 そっと声をかけると、彼女ははっとしてわたしを振り返る。


「指輪?」

「ええ。昨日、わたしの靴箱に指輪が入っていたのだけれど……。どなたかとお間違いじゃないかと思ってお持ちしたの」

「それって金糸の……?」


 瞳を潤ませる彼女に頷いて、わたしは持ってきた小袋を手渡した。宛名もなにもないつつみを見るなり、彼女はぴょんっと飛び上がった。


「これ! 探していたの。あたし、間違えちゃったから……」


 そのまま彼女が泣き出したので、わたしは慌てた。安堵のためだと思っても、やっぱり涙は心臓によろしくない。


「昨日は上級生の皆様が、ずっと下駄箱にいらっしゃって……。早く、誰にも気づかれないうちにお入れしないとって慌てて……。お姉さまはクラスの一番最初の靴箱だから、一番、一番って思って、目に入った靴箱にお入れしたの。1って書いてあった気がして……」


 やはり、この指輪は頼子さんに宛てたものだったらしい。

 そして、この子が彼女の妹なのだとわたしは知った。


「そしたら、昨夜お部屋にお戻りになったお姉さまが指輪をなさっていなかったから、よくよく思い返してみて、間違ったのだと気づいたわ。だって、靴箱はアルファベット順なのだもの。1なんてプレートがあるはずないのに。あの、ありがとう存じます……。わざわざお持ちくださったのね」

「いいえ。お返しできてよかったわ」


 手にした指輪を、きゅっと胸元で包んだ彼女が表情をほころばす。


「でも、どうしてあたしがここにいるっておわかりになって?」

「実を言うと、どこにいらっしゃるのかまではわからなかったの。だからわたし、寄宿舎まで行くつもりだったわ。とっても大切そうな指輪だったから、きっと心配しているに違いないって思って……」

「ええ……。だって、もう作り直す時間はないの。お姉さま、今日の正午の汽車に乗って里に帰ってしまうから……」


 涙ぐみながらも、彼女は俯かなかった。


「あたし、お姉さまが学校をお辞めになるって聞いた日から、毎晩眠るお姉さまの指をお借りしてこの指輪を編んだの。お姉さまのご多幸をお祈りして……。あたしの代わりにお姉さまをお守りしてくださいますようにって」

「きっと喜んでくださるわ」


 頼子さんは、気づいていたのだろうと思う。


 そして、待っていた。夜半、静かな寄宿舎で自分のために夜更かしをするこの小さな可愛い人の真心が届くのを。昨日の彼女の横顔を思い出し、わたしはひそかに確信した。


「午後には頼子さん、出立なさるのでしょう? それなら、早く寄宿舎にお戻りになって、お渡ししてさしあげて。きっと……、いえ、絶対にお喜びになるわ」

「ええ、ありがとう!」


 雪景色のなか、駆けていく小さな背中を見送る。


 今日はクリスマス。

 聖なる日だ。


 どうかふたりに幸多からんことを願って、わたしも野々村さんたちに会いに行くべく、小さな足跡をたどった……。

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