第3話

 


ぐっすりと眠って目を覚ますと、そこには見知らぬ人間が4人しゃがんでこちらを見ていた。


知らない人間ということと、眠っていた姿を見られたというショックで思わず飛び起きる。


「ど、どうしようなのー。」


遅れを取らないようにじっと人間たちを見つめる。


それから、ボーニャとクーニャはどうしたんだろうと思って、二匹の方をチラリと見た。


すると、ボーニャもクーニャもまだまだ夢の中のようでぐっすりと眠っていた。


「早く起きるのーっ!!」


ボーニャもクーニャも起きていないので慌てて二匹の元にかけよると、二匹を背中にかばう。そうして、尻尾でぺしぺしとクーニャとボーニャの頭やお腹を叩く。


むぅ。と、人間を見つめるあたし。


じっと人間を観察するように見つめれば、人間たちに敵意が感じられないことに気づいた。


もしかしたら、この人間は安全かもしれない。


そう思っていると、


「みゃあぁ~う。」


「・・・んみゃぁ。」


というクーニャとボーニャが寝ぼけたような声を上げた。


思わずクーニャとボーニャを睨みつけてしまった。


あたしがこんな思いをしているのに寝こけているだなんて呑気にゃんだから。


のびぃーと手足を伸ばすクーニャとボーニャ。


そうなんだよね。


丸まって寝ていたりすると、身体が固まっちゃうから起きたら手足を伸ばすところから始めるんだよね。


「えっ!?」


「あれっ!?マユ以外の人間だぁ~。」


クーニャは人間の姿を見つけてサッと警戒する体制をとる。


それとは反対にボーニャは人間を興味津々と見つめていた。


人間たちはあたしたちに話しかけてくる。


その内容からするとあたしたちにダンジョンに一緒に行かないかと言っているようだ。


ただ、その人間の中にいるグラマーなお姉さんが必死な形相で止めに入る。


なんでも、ダンジョンの中は危ないからあたしたちを連れていけないとかなんとか。


「ダンジョンって面白いところじゃないのかなぁー?」


「お宝あるんでしょー?」


「危ないってほんとうなのかなー?」


あたしたちは顔を見合わせながら相談し合う。


この人間たちはダンジョンが危険なところだっていうけれども、あたしたちはダンジョンを見たこともないのだからダンジョンが危険かどうかなんてわからない。


でも、あたしたちの目的はダンジョンに遊びに行くことだし。


「行ってみて危なかったら帰ってこようよー。」


「そうだねー。」


「あたしたち無敵だもんねー。」


そうそう。あたしたち無敵だし。


決めた。


あたしたちはこの人たちと一緒にダンジョンに行くのだ。


歩いて行くのも時間かかるし疲れるし。


この人たちが抱っこしていってくれないかなぁ。


期待した目で目の前の4人を見つめる。


理解してくれるといいけれど。


「じゃあ、またね。」


「お外は危険が・・・いや、猫様に危険があるなんてことはないだろうけど。保護者が心配するだろうから早く帰りなよ。」


あ、理解してくれなかった。


人間たちはあたしたちに一瞥するとあたしたちに背を向けて山を登っていこうとする。


「ちょ、ちょっと待つのにゃっ!!」


「あたしたちも連れてってー。」


「抱っこして連れてってなのー。」


口々に待ってと告げるが人間は待ってくれなかった。


それならば、実力行使あるのみ。


あたしたちは視線を合わせて頷いた。


そうして、助走をつけて一気に駆け出すと人間の足に向かってぴょんと飛びつく。


もちろん、女の人の方が柔らかくて暖かいので女の人に飛びつく。


そうなると4人の人間のうちの1人だけが女の人だから片足ずつに飛びつくことになった。


これまた遅れてきたボーニャは女の人に飛びつくことができず、一緒に来るかと言っていた男の人に飛びついていた。


「うをっ!!」


「きゃっ!!」


「どうしたっ!?」


「こんなところで敵襲か!?」


人間たちは慌てて声をあげた。


でも、振り返ってあたしたちを見た瞬間、その顔がいっきににやけた。


・・・気持ち悪い。


「ああ・・・。猫様だ。猫様だ・・・。可愛いなぁ。もう。でも、驚かせないでおくれ。」


「あら、可愛いわね。抱き着いてきてくれるだなんて。ダンジョン行くのやめて、この子たちと遊ぼうかしら。いいよね?リーダー?」


「ぐっ。可愛すぎるっ。ああ、猫様が許してくれるのであれば存分にもふりたい。」


「猫様。可愛い。とっても可愛い。愛らしい。追ってきてくれるだなんて、もうどうしたらいいのか。」


人間たちはなにやら興奮している。


でも、ダンジョン行くのやめてあたしたちと遊ぶって!?


それは拒否したい。


だって、あたしたちはダンジョンに遊びに行きたいのだ。


それに、知らない人に触られるのはあまり好きではないし。


「やなのー。ダンジョンに行くの。連れてって?」


「ダンジョン一緒に行くのー。」


「ダンジョンっ!ダンジョンっ!!」


あたしたちはそれぞれダンジョンに連れて行って欲しいと訴える。


その訴えが通じたのか、人間たちはあたしたちをそれぞれだっこした。


ボーニャはリーダーって呼ばれた男の人に抱っこされている。


クーニャは唯一の女の人に抱っこをされている。


対してあたしは男の人に抱っこされていた。


クーニャ許すまじ。


あたしが女の人に抱っこされたかったのにぃー。


むぅ。


まあ、仕方ないこの人で我慢しておこう。


って、勝手に頭なでないでなのー。


・・・。


あ、でもこの人マユより撫で方上手いかも。ちょっと気持ちいい。


うっとりと目を細めて、男の人に身体を預ける。


薄目でクーニャとボーニャを見れば、それぞれ撫でられているようだ。


どちらも気持ちよさそうにしている。


至福にゃ・・・。


って、まどろんでいる場合じゃないにゃ。


ダンジョンに行くんだった。


「あたしたちをダンジョンに連れてって?」


もう一度、あたしを抱っこしている人間にお願いをする。


ダンジョン早く行きたいのー。


 


 


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